ネットワークデバイスの開発/製造を手がける「TP-Link Systems(ティーピーリンクシステムズ:TP-Link)」。現在、同社は米カリフォルニア州に本社を構える米国企業だが、元々は中国の「TP-LINK Technologies(普総技術:TP-LINK)」からスピンオフした経緯がある。
そのこともあってか、2024年12月には米国政府が「TP-Link製のネットワーク機器の利用禁止を検討している」という報道が流れた。それに対し同社は「当社は米国企業である」という旨の声明を発表している。
TP-LinkとTP-LINKは、本当に“無関係”なのか――TP-Linkの日本法人であるティーピーリンクジャパンに聞いてみた。
●TP-LINKとTP-Linkの関係(一部おさらい)
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TP-LINKは1996年に中国の深セン市で生まれた企業だ。「TP-LINK(TP-Link)」は元々同社が商標として保有していたもので、2003年に当時の商号(深セン市普総技術、※1)の英語表記(Shenzhen TP-LINK Technologies)に組み込まれることになった。現在の商号は、2005年に創業地名の「深セン(Shenzhen)」を外して確立したものだ。
(※1)正しくは、「セン」は「つちへんに川」
TP-LINKは2005年からシンガポールや米国を皮切りに海外展開を開始し、日本では2015年10月に現地法人としてティーピーリンクジャパンを設立した。当時のティーピーリンクジャパンはTP-LINKの傘下にあり、大文字ロゴを使っていた(このロゴは、現在もTP-LINKが使い続けている)。
その後、2016年8月にTP-LINKは海外(中国以外)においてブランド名を小文字混じりの「TP-Link」に改めた上で、ロゴマークも一新した。製品の開発/製造スケジュールの都合で、しばらくは一部で旧ロゴをまとった新製品が出てくることになったが、2017年内には中国外の新製品は新ロゴ(とTP-Linkブランド)に統一された。
そして2022年、TP-LINKは海外(中国外)事業の“完全分離”(スピンオフ)を開始する。時系列で記すと以下の通りだ。
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・2022年1月:TP-LINKが中国外事業を「Big Field Global(BFG)」に譲渡開始
・中国外に所在する子会社/研究開発/マーケティング/サポート体制が対象
・製品の生産はベトナムのEMS(受託生産サービス)業者に依頼
2023年1月:BFGが米カリフォルニア州に「TP-Link Global」を設立
・研究開発/技術マーケティング機能や研究開発拠点の運営権はTP-Link Globalに移管
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・これにより、シンガポール(BFG)と米国(TP-Link Global)の2本社体制に
2023年9月:BFGがTP-LINKの中国外事業の買収(譲受)を完了
・この時点で「TP-LINK」と「TP-Link」は資本的に無関係になる
2023年12月:BFGが「TP-Link Corporation」に商号変更
・引き続き、シンガポールと米国の2本社体制を継続
2024年5月:TP-Link Corporationが事業再編の完了を宣言
2024年10月:TP-Link GlobalとTP-Link USA(米国での事業会社)が合併し、商号を「TP-Link Systems」に変更
・TP-Link Corporationのオペレーション機能を統合し、完全な米国本拠企業に
・TP-Link Corporationはシンガポールにおける事業会社として存続
●TP-LinkとTP-LINKは本当に無関係になったのか?
本題に戻ろう。先述した通り、資本的には2023年9月付でTP-LINKとTP-Linkは“無関係”となっている。製品情報を見ても、両社の製品には関係性は見受けられない。
実際のところはどうなのか、ティーピーリンクジャパンの広報担当者に聞いてみた(一部、体裁を整えている)。
―― TP-Link SystemsとTP-LINK Technologiesとの間に現在、資本関係はありますか。
ティーピーリンクジャパン ございません。
―― TP-Link Systemsの資本関係はどのようになっていますか。
ティーピーリンクジャパン 現在のTP-Link Systemsはジェフリー・チャオ(趙佳興)氏(※2)とその妻が100%所有する米国企業です。
―― 2024年12月に発表したステートメントによると、両社は「提携していない」とのことだが、製品の開発や製造も完全に分離しているのでしょうか。
ティーピーリンクジャパン その通りです。
(※2)中国TP-LINKの創業者の1人
現在のTP-Linkは、TP-LINKの創業者の1人であるジェフリー・チャオ氏とその妻が全株式を保有しているという。資本的にはTP-LINKから分離していることは確かなようだが、TP-LINKもTP-Linkも企業情報で経営陣の紹介をしていない上、株主構成を対外的に公表していないため、事業は分離できていても、“本当に”経営まで分離できているのか確かめるための材料に乏しい。
米国での報道にあった「ネットワーク機器の利用を禁止することの検討」は、TP-Linkが米国登記の企業であっても、本当に資本的な意味でTP-LINK(もっというと中国)から分離できているかどうか不明瞭なことが一因だと思われる。米商務省がTP-Linkに企業構造に関する詳細な情報の提出を求めているという報道もあるが、企業情報を明瞭にしておけば、このようなことにはならなかったのではないかとも思う。
ともあれ、TP-Linkは本件に関する情報をもう少し詳しく説明してもいいと考える。そうすれば、ユーザーもより安心して同社製品を使えるようになるはずだ。
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「Temu」日本からも出品可能に(写真:ITmedia NEWS)76
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