【栗山求(血統評論家)=コラム『今日から使える簡単血統塾』】
◆血統で振り返るAJCC
【Pick Up】ダノンデサイル:1着
父エピファネイアは、初年度に牝馬三冠馬デアリングタクト、2年目に年度代表馬エフフォーリアを出すなど、能力の上限の高い仔を出す一流種牡馬ですが、種牡馬ランキングは意外なほど低めで、2023年までの最高ランクは8位(2021年)。しかし、昨年は日本ダービー、桜花賞、宝塚記念、ヴィクトリアマイルを含めて自己ベストの重賞9勝を記録し、3位に躍進しました。今年に入ってフェアリーS(エリカエクスプレス)とAJCC(ダノンデサイル)を制し、好調を維持しています。
ダノンデサイルは2025年のエピファネイア軍団の大将格です。昨年の日本ダービー以来の勝利となりました。
母トップデサイルはアメリカ産馬。現役時代に米G1・BCジュベナイルフィリーズで2着となりました。社台ファームが輸入し、ここまで4頭の仔がデビューを果たしていますが、新馬戦しか走っていないブレイントゥルーを除いた3頭はいずれも2勝以上を挙げています。競走馬としても繁殖牝馬としても優秀です。
母の父コングラッツは、ダート王フォーエバーヤングの母の父でもあります。ブルードメアサイアー(母の父)として非凡な才能を示しています。
本馬はロベルト4×5。このクロスを持つエピファネイア産駒は、連対率、1走あたりの賞金額、勝馬率、2勝以上率とも、父の全体成績を上回っています。
◆血統で振り返るプロキオンS
【Pick Up】サンデーファンデー:1着
生産したグランド牧場は、スマートボーイ、プリエミネンス、フェスティバル、ラブミーチャン、サンビスタ、マイネルクロップ、タイニーダンサー、クイーンマンボ、ヒガシウィルウィン、ハヤブサナンデクン、テイエムサウスダン、オマツリオトコをはじめ、多くのダート重賞勝ち馬を生産してきました。
本馬は、父スズカコーズウェイ(京王杯スプリングC)、母の父スマートボーイ(平安S2回、マーチS、アンタレスS2回)ともグランド牧場の生産馬。遠くパツシングクラウドにさかのぼるファミリーもグランド牧場で代々育まれたので、グランド牧場の歴史そのもの、という血統です。
このなかでスマートボーイはとくに印象的です。生涯に挙げた11勝はすべて逃げ切り勝ち。溜めて逃げるというタイプではなく、ハイペースで飛ばしてねじふせるという豪快なレースぶりは多くのファンを魅了しました。京都の軽い砂を得意とし、馬体重が減ったときに好走することが多かった馬でした。
今回のサンデーファンデーの勝利は、軽めの砂で、馬体重が減っていたので、偶然にも母の父スマートボーイの好走パターンと合致していました。
ちなみにスマートボーイの主戦ジョッキーだった伊藤直人騎手によると、逃げ馬にもかかわらずとても馬好きで、稽古でも返し馬でも、馬がいるとそちらに寄っていくところがあったそうです。とくに牝馬が大好きで、2000年のエルムSでは、ゲートインしたあと隣の枠に入ったゴールドティアラをじっと見つめてしまい、スタートで大出遅れ。最後方追走のまましんがり負けを喫しました。ちなみに、ゴールドティアラは牝系子孫からステファノス、ジュンブロッサムなどの重賞勝ち馬を生み出していますが、このファミリーの牝馬とスマートボーイが交配したことはありません。