1960〜70年代にかけて、大ヒットしたカバンをご存じでしょうか。答えは、バッグメーカー「エース」(東京都渋谷区)が手がけたマジソン・スクエア・ガーデン・バッグ、通称「マジソン・バッグ」です。
マジソン・バッグが誕生したのは1968年(昭和43)のこと。当時の売価は1500円ほどで、現在の価格に換算すると、6000円前後。「当時の中高生にとっては決して安いものではなく、購入することができない人もいました」(同社)
商品を開発したきっかけは、担当者から「ベーシックなスポーツバッグに横文字をプリントするのはどうか」という声があったそうです。このアイデアを受けて、「ただ意味のない英文字ではなく、 誰もが憧れる場所をデザインに取り入れよう」 と考え、プロレスの殿堂「マジソン・スクエア・ガーデン」(米国ニューヨーク)に着目したそうです。
バッグ前面に「MADISON SQUARE GARDEN」 の文字をプリントし、その下に、ボクシング、レスリング、フットボールと米国の人気スポーツ名をあしらいました。……あれ? マジソン・スクエア・ガーデンは屋内競技場なので、フットボールはできないはず。にもかかわらず、なぜフットボールの文字が並んでいるのでしょうか。
|
|
同社によると「マジソン・スクエア・ガーデンでフットボールができるわけがないのですが、 そこは、大らかな昭和時代ならではのご愛嬌です」とのこと。
マジソン・バッグは中学生や高校生を中心に、通学用のカバンとして人気を集めました。模倣品が出回ったことを受け、商品を手にした学生の間で「本物か、偽物か」が話題になることも。
社会現象を巻き起こしたマジソン・バッグは、どのくらい売れたのでしょうか。「発売から10年の間に、エース社製だけで1000万個、 類似品を含めると2000万個以上(推測)が市場に流通しました」(同社)。当時の人口は1億人ほどだったので、日本国民の5人に1人が持っていた計算になります。
ちなみに、エースが運営する「世界のカバン博物館」(入館料無料)では、 当時の「マジソン・バッグ」のほかに、1970年の大阪万博を記念し製造した「万博バッグ」、日本初の純国産スーツケース「デボネア」を展示。また、都電車掌鞄や国鉄救急用鞄など、 昭和を彩った鞄が並んでいます。
|
|
|
|
|
|
Copyright(C) 2025 ITmedia Inc. All rights reserved. 記事・写真の無断転載を禁じます。
掲載情報の著作権は提供元企業に帰属します。