三省堂が大真面目に作った「辞書LINEスタンプ」好調 「辞書なので、ネタは尽きない」

0

2025年01月29日 07:21  ITmedia ビジネスオンライン

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

ITmedia ビジネスオンライン

SNSで話題を集めた三省堂のLINEスタンプ(プレスリリースより引用、以下同)

 「ウザいけどなんか好き」「控えめに言って良すぎ」とSNSで話題を集めた、三省堂のLINEスタンプ。2023年2月のリリースから、現在は8種類のLINEスタンプを展開している。LINEスタンプ誕生の経緯や今後の展望について、三省堂 営業企画課の保科潤氏に話を聞いた。


【画像】三省堂のLINEスタンプ(全13枚)


 三省堂がLINEスタンプをリリースしたのは、「明解国語辞典」の刊行80周年記念として何か面白い企画ができないかと考えたのがきっかけだった。堅い印象を持たれがちな辞書の面白さを、若者を中心としたSNSをよく利用する人たちにも再認識してもらいたい。そこで、部署にかかわらず集まった若手メンバーが中心となって企画を立ち上げ、同社初のLINEスタンプを作ることになったという。


 最初に発売したのは、「おつかれさま」「りょうかい(了解)」など定番な言葉を40種類そろえた「三省堂辞書スタンプ」だ。LINEスタンプのデザインは、シンプルなメッセージ型の吹き出しを採用。辞書の雰囲気をそのままLINEの画面にもってくるようなイメージで、文字中心で構成している。


 日常的によく使われる表現には、言葉の持つさまざまな側面に触れられるよう豆知識を掲載した。例えば、「さようなら」には豆知識として「人によって『もう会わない感じがする』」という文言を入れている。


 また「凡人」のLINEスタンプの場合、語釈(解説部分)として「自らを高める努力を怠ったり功名心を持ち合わせなかったりして〜」といった文章を加えた。ちなみに、語釈の部分は読まない人がいる可能性を考慮し、見出しになっている言葉だけで会話が成り立つようにしているそうだ。


●言葉を選ぶ作業はかなり苦労


 現在は、「三省堂辞書スタンプ」に加え、「三省堂国語辞典から消えたことば辞典」「三省堂辞書スタンプ【お気遣い編】」「三省堂辞書スタンプ【煽ってごめん編】」「オタク用語辞典 大限界【文字編】」「オタク用語辞典 大限界【イラスト編】」「三省堂辞書スタンプ【つながる言葉編】」「三省堂辞書スタンプ【SNS募集編】」という8種類のLINEスタンプを展開している。


 保科氏によると、三省堂のLINEスタンプは1テーマ40語と決まっているそうだ。LINEスタンプのテーマはある程度ストックしており、一定の語数が集まればリリースに向けた作業を始めるのだという。


 言葉は全て辞書から引用するため、テーマが決まっても関連する言葉は膨大にある。そのため、40語に絞り込む作業は毎回かなり苦労しているという。「チーム内で考えうる使用シーンを具体的に挙げ、『こういう場面でこんな使い方ができるのではないか』『いや、それは飛躍しすぎでは?』『いやいや、この言葉は譲れない』などと大真面目に議論しています」(保科氏)


 また、語釈に特定の人名やネガティブな言葉が入っているものは、LINEへの申請時に弾かれてしまうそうだ。保科氏は「語釈を都合よく改変することはできないため、どんなに魅力的な見出し語でも泣く泣く候補から外すこともあります」と話す。


●社内の別チームからアイデア提案も


 三省堂辞書LINEスタンプシリーズの中で一番人気は、最初にリリースした「三省堂辞書スタンプ」だ。LINEスタンプには定額で対象のスタンプが使い放題という機能があるのだが、その対象に三省堂辞書スタンプが入ったことも、人気をさらに拡大させるきっかけとなったという。ちなみに、1月1日は「めでたい」「おめでとう」というスタンプの送信数が突出して多いそうだ。


 二番人気は、相手の感情を逆なでするような煽り言葉と、謝罪関連の言葉をひとまとめにした「煽ってごめん編」。「お気遣い編」という品行方正タイプのスタンプと同時リリースしたところ、「煽ってごめん編」に人気が集中したという。保科氏は「LINEスタンプはフランクな間柄で冗談めかして使っていただくケースが多いからでは」と分析する。


 また、スタンプ同士を組み合わせられる機能が搭載されたタイミングで、「は」「が」や、「ところで」「いずれにせよ」といった接続語だけを集めた「つながる言葉編」をリリースした。単体ではなかなか使いどころがない言葉だが、LINEの機能拡充のおかげで当初の想像以上にダウンロードされているという。


 明解国語辞典の周年企画としてスタートしたLINEスタンプは現在、社内のプロジェクトにまで成長した。「書籍企画は難しいけれど、LINEスタンプなら」と、編集部以外の部署からも多くのアイデアを寄せられてるそうだ。実際に、SNSでスタンプにしたい言葉を募集した「SNS募集編」は、別チームからの提案で実現した。


 今後のスタンプについては「辞書には膨大な言葉が掲載されていますので、ネタは尽きません」と保科氏。スタンプとして成立するかはこれから検討するそうだが、辞書にとどまらず、教科書のイラストや英単語帳から日常に使えるフレーズ、法律書から身近な条文など、LINEでのやりとりついでにちょっとした学習効果があるような新しいアイデアもあたためているという。



    ランキングIT・インターネット

    前日のランキングへ

    ニュース設定