Makuakeには、新たな発想で生まれた商品が次々と登場しています。その中から特に大きな支持を集めた商品には、独自の戦略や視点が隠されているはずです。本連載では、プロジェクトの成功事例を分析しながら、これからの商品開発のヒントを探っていきます。
【画像】インテリア暖炉 「MYDANRO」(3万9800円)の見た目、使用イメージ、機能(全10枚)
今回は「開発者自身が最も欲しい」と思える商品を作り上げることで、新市場を切り開いた事例をご紹介します。
●諦めていた「暖炉のある暮らし」が現実に
広い家に、炎が揺らぐ暖炉。そんな生活に一度は憧れた人も多いでしょう。しかし実際には、工事費用や、薪を用意して火をつけることの煩雑さ、近隣への配慮など越えるべきハードルは多く、諦める人が大多数ではないでしょうか。ましてや、都会のマンション暮らしとなると夢のまた夢です。
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そんな憧れを実現した商品があります。カセットガスなどを販売している岩谷産業(大阪市)が開発した炎を楽しむインテリア暖炉 「MYDANRO」。この商品は、カセットガスと電池のみで駆動する、導入ハードルの低い家電型の暖炉です。
一体どのような経緯を経てこの商品が誕生したのでしょうか。
●開発責任者自身が「顧客1号」 3年かけて実現
MYDANROは、プロジェクト開始からわずか1日で1000万円の応援購入を集める大ヒットとなりました。この予想を上回る反響は、暖炉への潜在的なニーズの大きさを実感させる結果となっています。
この商品が生まれた背景には、開発責任者であるマーケティング部長の本山氏自身が、最も理想的な顧客像であったことが挙げられます。
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本山氏は幼少期から、キャンプでのたき火や、五右衛門風呂など、炎のある生活が身近な環境で育ちました。しかし、現代の都会生活では、そうした炎に触れる機会が失われています。「炎をもっと身近に感じてほしい」。そんな思いから、カセットガスを使った新たな商品開発のチャンスを得たとき、真っ先に構想したのが暖炉でした。
商品開発は苦難の連続だったといいます。通常、カセットガスの炎は「青色」です。この炎をオレンジ色に変える工夫や、本物の炎のようなゆらぎの表現、さらに、前例のない商品だけに安全性の担保など、課題は山積み。開発に3年もの歳月を要しましたが、本山氏が強い意志を持ち続けられたのは「自分が最も欲しいと思う商品なら、必ず共感する人がいるはずだ」という信念があったからだそうです。
●3万9800円という価格設定に込められた狙い
MYDANROは「インテリア暖炉」という表現にこだわり、あくまでも「暖炉」であることを強調しています。価格は3万9800円と、一般的な家電と比べると決して手頃な値段ではありません。しかし、本格的な暖炉の導入費用と考えたら、はるかに低コストです。憧れの暖炉のある生活を手に入れられると思ったら、むしろ手の届く価格設定といえるでしょう。
こうした狙いは的中し、応援購入の金額は2000万円を超えて伸び続けています(2025年1月)。購入者のコメント欄には「マンション住まいなので楽しみ」「炎を眺めながらお酒を飲みたい」といった声が並び、本山氏の思い描いた価値提案が、多くの共感を呼んでいることが分かります。
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●「自分が欲しい」を突き詰めることで見えてくる新市場
商品開発において、自分自身を最も理想的な顧客として位置付けることはペルソナの精度を高めることになります。
市場調査によって世の中のニーズを把握することは重要ですが、時には「自分が最も欲しい」商品を突き詰めることで、多くの共感を集める新しい市場が見つかるのかもしれません。
「自分だったら何が欲しいか」。この単純な問いかけこそが、次のヒット商品を生み出すための重要な視点になるのではないでしょうか。
●著者プロフィール:高野翔一
株式会社マクアケ PR部コーポレート広報
1984年生まれ。大手食品メーカーの営業やPR会社などを経験。PR会社では大手テーマパークをはじめ、さまざまな領域のPRを担当。2022年に株式会社マクアケへ入社。入社後は、コーポレート・サービス広報として携わりつつ、モノづくりを始めとした事業者の挑戦を後押しする広報を主に担当。
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