株高・物価高・賃金高が進むなかで、なぜかリストラが増えてる。業績低迷企業はもとより、黒字企業でも“構造改革”の名のもとにクビ切りが行われているのだ。巧妙化するその実態を調査した。
◆リストラされる人の見分け方
クビ切りは今そこにある危機と言っていいだろう。では、どんな人が切られる傾向にあるのか? 中高年のキャリア支援を行う黒田真行氏が話す。
「一言でいえば、生産性が合っていない人。給料に対して、提供できている価値が劣る人はリストラ対象になりやすい。
その点で、年次を重ねて比較的高額な報酬をもらっている中高年はどうしてもターゲットにされやすい。自分が提供している価値や会社に対する貢献度について無頓着で、変化を嫌う人だとなおさらです」
ただし、近年は事業転換に伴う大規模なリストラも少なくないため、対象年齢が下がる傾向に。
「最近では勤続15年以上、つまり35歳ぐらい以上を対象とする早期退職募集が増えている」(人事ジャーナリスト・溝上憲文氏)という。
◆リストラされる20代も
一方で、20代がリストラされるケースも増えている。リストラを行う企業を数多く顧客に持つ社会保険労務士の須藤宏明氏(仮名)が話す。
「ジョブ型を取り入れる企業が増えていることもあって、新卒学生が入社するまでにどんな部署に配属されて、どんな仕事をやらされるかわからないというケースが減ってきている。
すると、スキルが足りていないのに、自ら希望して特定の職務に就く若手が増加。『企画がやりたい』という希望だけで仕事にありつき、なんの成果も上げられないまま仕事を続ける……という人も出てくるわけです。
こうした若手社員はこだわりが強く、中高年に負けず劣らず、プライドが高い傾向にあり、同じ部署に居座ろうとする。かといって、若手なので給料を引き下げられる余地が乏しいため、クビ切りの対象となりやすくなってしまう」
◆3つ目にリストラされやすいのは…
3つ目にリストラされやすいのは協調性に欠ける社員だ。
「早期・希望退職募集をかける際にはあらかじめ『辞めてほしい社員』をリストアップして、彼らが当てはまるような年齢・職能条件を設定するものですが、そのリストは上長を中心とした社内評価や実績を基に作られるため、協調性のない人間はどうしてもリストの上位に掲載される傾向にある。
飲み会や社内行事に出ない一匹狼風の社員は、多少優秀でもクビ切りの対象になりやすい」(溝上氏)
◆リストラ対象になりやすい3パターン
●協調性なし一匹狼風社員
社内行事は欠席、社内連絡は遅れがち……といった協調性のない社員は、目標どおりの成績を上げていても、リストラの対象になりやすい。上司に媚を売れとまでは言わないが要注意!
●こだわり強すぎ若手社員
ジョブ型の浸透で、若手でも希望する仕事に就きやすくなったが、結果、スキル不足でも特定のジョブを希望する若手が増加。若手だと給与引き下げの余地が乏しいためリストラ対象に
●40歳以上の「もらいすぎ」中年
日本の企業では定期昇給があるため、年を取るほど高給取りに。その結果、職務能力ともらっている給料にギャップのある中高年が増加。近年では40歳以上の中年が最大のリストラ対象に
【人事ジャーナリスト・溝上憲文氏】
週刊誌記者などを経て独立し、経営・人事・雇用・賃金問題を中心テーマに執筆を続ける。『非情の常時リストラ』など著書多数
【ルーセントドアーズ社長・黒田真行氏】
リクナビNEXT編集長、HRプラットフォーム事業部部長を経て’14年に起業。35歳以上の転職支援や40歳以上向けキャリア相談を行う
【社会保険労務士・須藤宏明氏(仮名)】
大学卒業後、大手企業人事部に務めた後、社会保険労務士として独立。中堅クラスの企業を中心に多くの企業の人事・労務管理を行う
取材・文/週刊SPA!編集部 イラスト/谷口 崇
※1月21日発売の週刊SPA!特集「[急増するリストラ]最新手口」より
―[[急増するリストラ]最新手口]―