地域の活性化や課題解決の知識やヒントが詰まった地域共創メディア「Lumiarch」(ルミアーチ)が2024年12月にWebで新創刊した。爽やかな白と青のデザインで、情報メディアでありながら広告表示がないため非常に読みやすい。このサイトを運営するのは、実はNTT東日本だ。記事はどこを見ても企業色がなく、オウンドメディアとは一線を画した存在になっている。その狙いはどこにあるのか、どのようなサイトを目指しているのか、Lumiarch編集部に聞いてみた!
○■地域共創に関する知見と考察の詰まったサイト
地域の活動やコミュニティに参加したい人、地域をより良くしたい人、地方に移住したい人、あるいは地方で一旗揚げたい人など、地域に根ざした生き方や働き方に憧れる若者が増えている。しかし、「地域共創」と聞いて、具体例が幾つもぱっと思い浮かび、こういうことだよと他人に説明できる人はなかなかいないのではないだろうか。
地域共創メディア「Lumiarch」は、そんな若者が参考にしたい、地域共創についての知見と考察の詰まったサイトだ。編集部はNTT東日本の社内にあり、広報室のメンバーが担っている。
取材に応じてくれたのは、編集長の佐藤美青さん、副編集長の森本真実さん、コンテンツリーダーの大西桃花さんの三人。早速、どうして創刊したのか、どのようなサイトにしていくのか根掘り葉掘り聞いてみた。
○■20代〜40代前半をメインターゲットに地域の魅力を発信することで地域共創に貢献
――まずは「Lumiarch」の創刊に至った背景を教えて下さい。(実際に創刊するまでどのくらいの時間がかかったのかも)
佐藤さん:「NTT東日本グループではパーパスに『地域循環型社会の共創』を掲げています。地域の皆様に寄り添う情報通信事業者として、通信インフラ等の提供などを通じて、持続可能な地域循環型社会の実現を目指そうという内容です。その取り組みの一環として、私達にできることは何かと検討しました。地域には様々な魅力があり、頑張っている方々がたくさんいます。そのことを多くの人に知ってもらうことも私達にできることだと気が付き、メディアを作ることが私達の使命だと考えたのです。
創刊するまでには一年ほど時間がかかりました。私が今の部署に着任したのは2023年7月で、メディアを作るアイデアが出てきたのは10月頃でした。それから全体の骨子やコンセプトをまとめて上司を説得しました。スタートしたときは私と大西の二人だけで、私が編集長となり、大西は毎月どんなコンテンツを取り上げるか決めるコンテンツリーダーを務めています。副編集長の森本は2024年10月に私達に合流しました。企画周りを中心に私のフォローをしてもらっています。このほか、原稿制作のフォローをしてくれている方を含めて現在7人で編集部を構成しています」
――Lumiarchは造語かと存じますが、どのようにして決めたのでしょうか。
大西さん:「Lumiarchの名称はサイトにも記載のとおり、『人と情報、そして人と人をつなぐ架け橋(Arch)と輝かしい(Luminant)ミライの実現を目指す』ことを由来としています。
実はこの名称を考えたのは私です。最初はこれと違う名称で決まりかけていましたが、他社に似た名称を使っているところがあると分かり、急遽変更しました。このときはとにかく時間がなくて苦労しました。何十個も代替案を考えたなかから、社内の20代の社員に急いでリサーチして選びました。名称だけでなくサイトの色味やロゴのデザインなど、何度もリサーチしましたが、サイト名を決めるときが一番大変でした」
――リサーチしたのが20代の社員なのは想定読者を意識したからですか?
佐藤さん:「はい、そうです。Lumiarchの想定読者は、20〜40代前半の地域の活性化に興味がある若者なので、彼らの共感を得やすい名前やデザインにしたいと思いました。私達は地域を盛り上げていくには若者の力が不可欠だと考えています。まだ開設から間もない段階ではありますが、アクセスしてくれている人の8割は40歳未満で、おおむね狙い通りの読者に関心を持ってもらえています」
森本さん:「地域共創に関心がある若者と言っても多種多様で、人と人とのつながりや地域のつながりを盛り上げたい人、あるいは地域でコミュニティを求めている人、地方に移住したい人、地域でイノベーションを起こしていきたい人などがいます。そうした方々に読んでいただけたらと思っています。
Lumiarchではいろいろな粒度の記事を準備しています。一般的に記事になりやすいのは成功している人物や関心を集める人物、参考になる人物で、企業の社長インタビューなどになりがちですが、あまり大上段に構えたものではなく、知る人ぞ知る地域人を発掘したり、等身大で親しみやすい読み物にしていきたいです」
佐藤さん:「記事で取り上げた方やその関係者からは記事の感想が寄せられることもあって、良い意味で当社らしくないサイトになっているとのご評価を嬉しく思っています。Lumiarchは会社の名前をPRすることが目的のサイトではないので、そこは上手くできていると言えそうです」
――Lumiarchでは西日本の話も取り上げるのでしょうか。
佐藤さん:「もちろん取り上げます。先述の通り、Lumiarchは当社サービスの導入事例を紹介するようなPRサイトではありません。全国どこでも取材候補になりますし、日本に限らず海外であっても、地域共創のテーマに沿うものであれば取り上げていきたいです」
――コンテンツにはマンガもありますね。珍しいと感じました。
森本さん:「はい。ボリュームの多い記事ばかりではなく、読みやすさを考えてマンガもあったほうが良いだろうと考えて、漫画家の町田メロメ様に描き下ろしていただきました。こちらの漫画は好評で、記事の中でも閲覧数がかなり多い方です」
――記事を作るうえで気を付けていることはありますか?
佐藤さん:「ネットで『地方創生』『地域活性化』で検索するととても多くのサイトがヒットします。そのなかには、私達と似たコンセプトのサイトや記事も少なくありません。Lumiarchらしさとはなにかを考えながら試行錯誤しています。たとえば当社は東日本エリアの17都道県に支店があり、それらの支店のある地場の有名な人物や魅力ある人物とのつながりも多く持っています。そうした全国では知られていないけれども、地域では名士のような人をもっと紹介したいです」
森本さん:「成功した人に焦点を当てた記事でも、その人の成長ストーリーを描きたいわけではありません。あくまでも地域にフォーカスしていくように注意しています。その人が地域で何かを成し遂げた時、そこに参加した周辺の人も取り上げると、よりLumiarchの特色になるのではないかと考えています」
――カテゴリーを3つ用意していますね。こうした読ませる工夫はほかにどのようなものがありますか?
佐藤さん:「コンテンツは『学ぶ』『知る』『考える』の3つのカテゴリーに分けています。『学ぶ』は地方創生における前提知識を学ぶ記事、『知る』はさまざまなの事例や先人の取り組みなどを知ってもらう記事です。『考える』は答えがないことや、これからどうなっていくのか分からないことについて読者に考察を促す記事です。先程のマンガは『考える』に入ります」
森本さん:「『ドローン特集』など、3つのカテゴリーにまたがる、軸の違うカテゴライズも行っています。しかし、試行錯誤も多く、Lumiarchらしさの追求と同様、工夫についてはこれからチャレンジの部分が多いです。たとえば、Lumiarchをご紹介する短い動画を作ってコンセプトを伝えることで、共感者を増やしてサイトに誘引することも検討しています」
大西さん:「Lumiarchではサイト名の検索やSNS経由で記事にたどり着く人が多いのですが、SEO対策はまだ十分ではなく、これも今後工夫していきたい課題の1つです。地域の名前などで検索して、Lumiarchにたどり着く人が増えてくれると嬉しいです。検索から記事にアクセスした人が別の記事も読むサイト内の回遊性を高める工夫もしたいです」
○■取材して欲しいという問い合わせがほしい
――今後の抱負や目標を教えてください。
森本さん:「社内からは、『地域循環型社会の共創』という当社のパーパスについて、ふんわりとしか掴めていなかったけれど、Lumiarchの記事で具体例を見て『こういうことか』と納得できたという声がありました。地域共創は言葉が大きいので、実際の事例を見るとわかりやすいということだと思います。地域共創について知りたい人が具体例を探してたどり着くサイトを目指したいです」
佐藤さん:「達成目標として数字的なKPIはありますが、それとは別にメディアとして名のある存在になりたいという目標があります。あるメディア関係者から『メディアは取材して欲しいと問い合わせがきてようやく一人前』という言葉を聞いてまさにその通りだと感じました。私達はメディアとしてはまだまだ駆け出しです。取材窓口はサイト下部に記載があります。ぜひ問い合わせてください。お待ちしています」
○■地域共創の具体例を探す人がたどり着くサイト
地方創生や共創、循環型社会といった言葉は、大変多くの要素を内包しており、漠然としたイメージから具体例が思いつかない人も少なくないはずだ。Lumiarchはそうした人達が「こういうことだったのか」と知って、学んで、考えを深められる、そんなサイトと言えそうだ。
特に地方創生に取り組む人は、他の人の事例として参考にするのはもちろん、是非取材してほしいと問い合わせてみてはいかがだろうか。
著者 : 諸山泰三 もろやまたいぞう PC雑誌の編集者としてキャリアをスタートし、家電流通専門誌の編集や家電のフリーペーパーの編集長を経験。現在はPCやIT系から家電の記事まで幅広くカバーするフリーランスのライター兼編集者として東奔西走する。地元である豊島区大塚近辺でローカルメディアの活動にも関わり出した。好きなお酒にドクターストップが掛かり、血圧を下げるべく、体質改善に努める日々を送る。 この著者の記事一覧はこちら(諸山泰三)