元東証社員によるインサイダー事件で、親会社の日本取引所グループ(JPX)は30日、山道裕己最高経営責任者(CEO)と岩永守幸東証社長の月額報酬を50%、2カ月減額する処分を発表した。事案の重大性を踏まえ、責任の所在を明確化した。
東証の青克美常務は20%を2カ月減額、渡辺浩司上場部長は厳重注意とした。
事件の原因となった開示前の情報について、担当者と管理職の共有に限るなどの再発防止策も公表。山道氏は記者会見し「市場関係者に多大なご迷惑おかけし、改めておわびする」と謝罪。「再発防止の取り組みを先頭に立って進める」と強調した。
同日発表された独立社外取締役による調査検証委員会の調査報告書は、事件を「前代未聞の事案」と批判。「資本市場を運営するJPXの本質的な価値・理念と全く相いれない」と指摘した。記者会見した竹野康造委員長は「インサイダー規制を破ろうとする社員の存在も想定した上で、規範意識の醸成に取り組むことが重要だ」と訴えた。
元社員は上場企業の重要情報の開示を担当する部署に在籍中、TOB(株式公開買い付け)に関する未公開情報を父親に伝えたとして、金融商品取引法違反(情報伝達)の罪で昨年12月、在宅起訴された。
記者会見する日本取引所グループ(JPX)の独立社外取締役による調査検証委員会の竹野康造委員長=30日午後、東京・日本橋兜町