東京証券取引所の元社員がインサイダー取引に関与したとされる事件で、親会社の日本取引所グループ(JPX)は30日、責任を明確化するため、山道裕己最高経営責任者(CEO)ら3人の報酬を減額する処分を発表した。山道氏と東証の岩永守幸社長はそれぞれ月額報酬の50%減額(2カ月)、東証の青克美常務執行役員は月額報酬の20%減額(2カ月)。渡辺浩司上場部長は厳重注意とした。
また、JPXは30日、事件の経緯や再発防止策をまとめた報告書を金融庁に提出した。山道氏は定例記者会見で「市場関係者に多大な迷惑をかけ、深くおわびする。信頼回復に全力を尽くす」と改めて陳謝した。
証券取引等監視委員会によると、東証の20代の元社員=懲戒解雇=は、上場部開示業務室にいた2024年1〜3月、未公開のTOB(株式公開買い付け)情報を父親に伝え、父親は約1700万円分の株式を買い付けたとされる。東京地検特捜部は元社員と父親を金融商品取引法違反の罪で12月に在宅起訴した。
JPXは再発防止に向け、企業の未公開情報を共有する社員を限定し、研修や教育体制を充実させるという。社外取締役による調査検証委員会も30日に調査結果を公表し、情報管理体制などに改善の余地があると指摘した。【成澤隼人】