とある外国の名だたるホテルに設置された隠しカメラがとらえたハウスキーピングの作業風景映像が話題を呼んだことがあります。トイレを拭いたタオルで、コップや手すりも同じように拭いているシーンです。
その映像リークが元となり、そのホテルは清掃員の教育を徹底し、現在は解消しているとのことでした。他の国での出来事と思いきや、今回取材に応じてくれた男性は、都内某ホテルでそれよりも悲惨な体験をしたそうです。
◆クリスマスイブは毎年高級ホテルだったが……
ここ数年は、毎年彼女と都内のハイスペックホテルでクリスマスイブを過ごしていたという早坂さん(仮名・32歳)。ところが昨年は、新規プロジェクトの立ち上げに加わったため、忙殺される日々を過ごしていたそうです。
「本当は今年の春からスタートするはずの新規プロジェクトだったのですが、急遽前倒しになり、その影響で昨年は彼女と過ごすイブの計画が全くできませんでした」
早坂さんの彼女であるR子さんも、勤務先の広告代理店が例年になく忙しく早坂さんの代役を務めることができず、結局2人はかろうじて予約が取れた渋谷の丸山町にあるイタリアンレストランで食事をし、その後は普通のホテルで聖夜を過ごすことにしたそうです。
◆ほろ酔い気分で到着したホテルは期待以上だった
イタリアンレストランで勧められたシャンパンがとても口に合ったらしく、その後も追加でワインを頼むなどして、かなりほろ酔いな気分で店を後にしたといいます。
「お店を出て20分くらい酔いを醒ましながらホテルまで歩きました。ネットでしか外観を見ていなかったので少し不安でしたが、繁華街のホテル特有のギラギラ感はなく、都会的なおしゃれな佇まいでした」
さすがはクリスマスイブ。早坂さんがフロントへ足を運ぶと、2組のカップルがすでに入室待ちをしていたそうです。
「少し薄暗いエントランスでしばらく待つことになりました。それに、時期的なものなのか、数名のスタッフが私たちの存在に気づかないほど慌ただしく動き回っていたのが印象的でした」
◆「なんかおなかのあたり冷たくない?」
部屋には夜景を見下ろせる窓がついていて、2人並んでベッドから宝石のような夜景を堪能することができました。けれど、しばらくしてR子さんが何か異変に気づきます。
「ねぇねぇ、なんかおなかの辺り冷たくない?」
そう言われた早坂さんも自分のおなかの辺りに手を忍ばせ、そして次の瞬間ー
「ほんとだ!え、何?これ。え?」
早坂さんは寝具を振り払い、ベッドの上に座り濡れている部分を凝視しました。R子さんも部屋の明かりをつけ、2人でベッドに座り、まるで交通事故後の自己処理班のようにシーツに顔を付け、原因を突き止めにかかったそうです。
「わぁー!なんじゃこれ。おしっこ?よだれ?え、何?」
大声でそう叫んだ早坂さん。明らかにシーツの下の方に大きなシミがついていたのです。しかも、表現し難い黄色っぽいシミだったそうです。
◆信じられないことが次々と発覚!
ベッドの上の2人は顔を合わせたまましばらく沈黙し、次に向かったのは浴室でした。
「なんとなく嫌な予感がしたんです。R子さんとおそるおそる浴室に入ってみると、その予感が見事に的中しました。浴槽が泡だらけなんです。しかも、床にはバスタオルが2枚敷いてあって、なんと、シャワーのお湯もちょろちょろ出っぱなしになっていたんです」
ここまでくると、もう2人は驚いたような大声は出さず、続けてトイレも確認したといいます。
「え、これ嫌がらせ?トイレ、使用後に流されていませんでした」
2人はそれ以上部屋をチェックしませんでした。しばらくイスに座って気持ちを落ち着かせてから、フロントに「すみません、この部屋は清掃済みなんですか?お風呂もお湯がそのままだし、ベッドが濡れていますよ」と電話すると、慌てて支配人が飛んできたそうです。
「支配人は、自分より少し年上程度の若い人でしたが、平謝りされました。
そして、『新宿の〇〇ホテルのスイートをご用意しましたので、お手数をおかけしますが、ご用意したタクシーで向かってください。この度は大変失礼いたしました』と言ってきたので、彼女と一緒に高級ホテルへ向かい、クリスマスイブをやり直しました」
ホテルで遭遇した悲惨な出来事に、一時は絶望していた早川さんたちでしたが、結果がかなりオーライだったので、忘れることができない素晴らしいクリスマスイブを過ごせたそうです。
<TEXT/八木正規>
【八木正規】
愛犬と暮らすアラサー派遣社員兼業ライターです。趣味は絵を描くことと、愛犬と行く温泉旅行。将来の夢はペットホテル経営