繁殖不要犬となり、行き場を失っていたメスのマルチーズ・バニラちゃん。過去の辛い経験を経ても、屈折のない素直な性格で人間大好きな保護犬でした。
「遊んでよ!」とデレデレに甘えるかわいさを前に、バニラちゃんを保護した静岡県の保護団体・スリールのメンバーは「救うことができて本当に良かったです」と言い、そして「このかわいさならそう遠くない時期に新しい家族が見つかりそうです」とも言いました。
動物病院で不穏な診断結果が…
保護後、バニラちゃんは預かりボランティアさんのもとでお世話を受けながら、譲渡会などにも参加。新しい家族との出会いを見つけるための一歩を踏み出しました。団体関係者はもちろん譲渡会来場者の間でも一躍人気者となったバニラちゃんでしたが、動物病院の検診で不穏な結果が出たのです。
バニラちゃんには心雑音が確認されたのでした。「こんなにかわいいバニラちゃんの身に、何か重篤な持病があったら」とすぐに動物病院に検査入院することに。2日間におよぶ検査入院で分かったのは「血液が正常に全身に送られていない」ということ。本来であれば、体全体へ血液を送るはずの大動脈がどういうわけか肺へと繋がる血管とつながっていたのです。
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預かりボランティアさんはもちろん多くのワンコを保護してきた団体関係者にとってワンコの心臓手術は初めて。体の小さいバニラちゃんに大手術を受けさせるべきか、悩みましたが、出した結論はゴー。くったくのないかわいい笑顔を前に「大丈夫。きっと手術を乗り越えられるよね!」と声をかけ、大手術を受けさせることにしました。
昼夜付き添った預かりボラさん
大手術を前にまずコンディションを整える必要がありました。入院前はいつも通り元気に過ごしていましたが、手術のために入院してからは、人間の様子を前に「私、何かされるのかしら」と察したのか、下痢や嘔吐を繰り返すようになりました。
そんなバニラちゃんをサポートしたのは預かりボランティアさん。点滴や投薬を実施するなど親身にお世話しました。できるだけ一緒に過ごし、昼夜を問わず看病を続けました。
「うちの家族になって欲しい」
預かりボランティアさんの献身的な看病を受け、バニラちゃんは次第に元気を取り戻し、手術に臨みました。さすがに術後は疲れた表情でしたが、無事に成功。動物病院のスタッフ、預かりボランティアさん、団体メンバーの誰もが「よくやったね!」とバニラちゃんをおおいに褒めてあげました。
大手術を乗り越えたバニラちゃんに吉報が舞い込みました。「バニラちゃんをうちの家族として迎え入れたい」という人が現れたのです。
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その人はずっとバニラちゃんのお世話を続けてきた預かりボランティアさんでした。預かりボランティアさんは本来「新しい家族が現れるまでお世話する」役割ですが、バニラちゃんと同じ時間を過ごし、深い絆が育まれた結果、「私が里親になります」と申し出てくれたのです。
一度は行き場を失い、小さな体を乗り越えたバニラちゃんでしたが、預かりボランティアさんあらため里親さんとの「ずっと一緒の犬生」は何よりも安心できるものでしょう。エサをもらう際には、里親さんの手からでないと食べないほどです。その幸せな犬生が1日でも長く続くと良いなと思いました。
(まいどなニュース特約・松田 義人)
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