回転寿司で不動の人気を誇るサーモン。いま、その「産地」が変わりつつあります。海外から輸入するものの価格が高騰する中、陸上でも育つ国産のサーモンが脚光を浴びています。
輸入は約74% ノルウェー産サーモン 4年で価格が2倍に上村彩子キャスター:
魚の消費量が年々減少していると言われているなか、サーモンは人気が出ています。
マルハニチロ調べでは、回転寿司店でよく食べているネタの1位はサーモンで、13年連続1位となっています。2位はマグロ(赤身)で、3位はハマチ・ブリとなっています。
1位のサーモンですが、▼回転寿司店で最初に食べるネタでも1位、▼シメに食べることが多いネタでも1位、▼値上がりしても食べたいネタも1位、▼進化していると思うネタも1位となっています。
しかし、国内産は約26%、輸入は約74%と大きく差が開いている状況です。
※農水省「漁業養殖業生産統計」および「品目別輸入実績 2023」より
代表的な産地のノルウェー産のサーモンは、4年で価格が2倍に上昇しています。
※ノルウェー統計局より
井上貴博キャスター:
私が子どものときはこんなにサーモンが人気なイメージはありませんでした。
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ホラン千秋キャスター:
回転寿司の影響も大きいと思います。チリ産のサーモンはよく見かけますが、ノルウェー産のサーモンはあまり見なくなったように思います。
田中ウルヴェ京さん:
ここ20年くらいでしょうか。私の子どもが幼いときにサーモンの人気が高まったイメージです。
上村キャスター:
注目を浴びているのが、国産のサーモンです。全国各地で様々なサーモンが登場していて、「ご当地サーモン」とも呼ばれています。
栃木県の「うつのみやストロベリーサーモン」は、県内のいちご「スカイベリー」を液状にして餌に混ぜるそうです。淡泊で上品な味がして、白身魚らしい弾力があり、日本酒にとても合うといいます。
北海道の「薬膳サーモン」は、松の実やオリーブオイル、きくらげなどを餌にしているそうです。脂分が少なくヘルシーで、業界初の「機能性表示食品」にもなっています。
与える餌によって、味や香り、栄養に違いを出して、新たな名産として売り出そうとする地域が増えているそうです。
「ご当地サーモン」は広がっており、水産研究・教育機構の調べによると、2019年12月時点では90種でしたが、2024年7月には139種にまで増えているといいます。
全日本サーモン協会のサーモン中尾さんは「冷凍しないので鮮度が抜群で、脂が劣化せず、刺身にも最適」と話します。
そして、国内産は輸送費も抑えることができるので「魚耕 荻窪本店」では、ノルウェー産のサーモンが799円/100gに対し、ご当地サーモンは390円〜599円/100gと、3割から5割ほど価格を抑えることができるそうです。
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井上キャスター:
養殖なので漁業権の問題もなく、餌や水質の管理ができれば安心安全に供給できますね。アニサキスなども排除していけるようになりますよね。
田中ウルヴェ京さん:
“持続可能な養殖”を考えると、食べている餌や育てられた環境を知ることができる透明性が必要になってくると思います。その面では、“ご当地ならでは”の情報を出していくことは重要ですよね。
上村キャスター:
そんな「ご当地サーモン」が増加する背景には、海水を必要としない循環システムが確立したことがあるそうです。
水産庁の資料(1月1日時点)によると、サケやマス類のサーモンを、陸上で養殖している業者が82か所あるということです。
全日本サーモン協会のサーモン中尾さんによると、海での養殖では海水温が上がる前に水揚げをする必要がありますが、陸上養殖の場合は、▼通年での養殖が可能です。さらに▼生産量や在庫を把握しやすく、▼漁業権が必要ないので、参画しやすいということです。
異業種からも続々と参入しています。
水道局(宇都宮市・白沢浄水場)は、先ほどの「うつのみやストロベリーサーモン」を養殖しています。綺麗な水道水のPRのため、2024年1月から養殖を開始しました。
鉄道会社「JR四国」も、厳しい鉄道事業以外での収益拡大のために参入しています。
放送事業を行う「RKB毎日HD」(TBS系列)も、雇用の創出や地域経済の活性化のため参入しています。ゆくゆくは、ふるさと納税の返礼品などにすることで、地域の活性化につなげたいということです。
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上村キャスター:
美味しいサーモンの見分け方を、週に5回サーモンを食べているという全日本サーモン協会のサーモン中尾さんに聞きました。
刺身での見分け方では、線と線の間に細やかなサシが入っているほど脂が乗っているそうです。
切り身では、血合いが黒ずんだり、黄色く変色していると、鮮度が落ちているそうで、血合いの色が透明な方が鮮度が高いといいます。
井上キャスター:
サーモンの他にも、ブリも完全養殖されていたり、マグロやウナギに活路を見出すことができれば、資源が少ないと言われる日本でも、高い養殖技術によって大きく転換できる可能性があると思います。
田中ウルヴェ京さん:
国産であることは、日本人の消費者にとっては重要ですが、日本産の安全で美味しいサーモンとして発信できれば、国外への輸出も視野に入れられると思います。
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<プロフィール>
田中ウルヴェ 京さん
スポーツ心理学者(博士)
五輪メダリスト 慶應義塾大学特任准教授
こころの学びコミュニティ「iMiA(イミア)」主宰