埼玉県狭山市など4市で民間従業員がエコアクションチャレンジ! アプリで脱炭素行動を促進

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2025年01月31日 10:10  マイナビニュース

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画像提供:マイナビニュース
埼玉県所沢市、飯能市、狭山市、日高市とNTTコミュニケーションズおよびNTT東日本 埼玉西支店は、同行政区域内民間事業者43社47事業所が連携して実践した「従業員のエコアクションチャレンジ」の実証報告会を狭山市産業労働センターで行った。



従業員のエコアクションチャレンジとは、民間事業者とその従業員が環境意識向上・行動変容を促進するアプリ「Green Program for Employee」の使用を通じ、脱炭素行動を促進することを目的とした取り組み。10月1日から21日にかけて実施され、今回その間に集計されたデータの発表に加え、見えてきた課題などが発表された。


○杉の木668本分のCO2削減に成功



NTTコミュニケーションズ ビジネスソリューション本部 ソリューションサービス部 デジタルイノベーション部門の村木奏介氏によると、今回のチャレンジには計395人が参加し、21日間で約2万回のエコアクションを記録したという。杉の木668本分の年間吸収量に相当する5,876.3kg-CO2eqのCO2削減に成功した。


参加者の具体的なエコアクションとしては、「1日食べ残しによる廃棄物を出さなかった」「エレベーターの代わりに階段を利用した」が多かった。


年齢に偏りはなく幅広い年齢の人が参加している。また、本取り組みにて環境意識が高まった(56%)、環境行動につながった(57%)と6割が回答しており、「知識だけではなく、行動に移す機会を与えられたのかなと思っています」と村木氏。


その一方で見えてきた課題として、1日しか利用していない参加者が25%もおり、加えてアプリの登録につまづいた参加者も少なくなかったことを挙げ、「改善が必要と感じました」とのこと。


継続的なエコアクションに必要なことを聞いたアンケートで、企業担当者では「数値の推移で成長や貢献を実感できる」「会社で一丸となって目標に取り組む一体感」、参加者では前述の2つに加えて、「報酬」「身近で取り組みやすいエコアクションが充実している」といった回答が上位を占めた。


○関心の低い人にも参加してもらえる



参加者の半分以上の環境意識や環境行動を向上させるなど、一定の成果を見せた今回のチャレンジ。狭山市役所環境経済部 産業振興課 兼 企業立地推進室 狭山サステナビリティ・トランスフォーメーション推進チーム主査の岸学氏が本当に有効なアプローチを行えたのかを解説した。


本チャレンジは、行政から住民に直接エコアクションを呼びかける従来型の取り組みとは異なり、企業を介して従業員にエコアクションを促すものだったため、"企業×従業員参加アプローチ"と名付けられた。

「企業の参加インセンティブ」「従業員の参加インセンティブ」「事業効果」の3点のポイントから有効性を検証。企業の参加インセンティブについては、地域の多業種の企業が本事業へ参加したことに加え、企業担当者向けアンケートでは、参加目的の上位に「従業員への環境教育・啓発」(85%)、「地域への環境面での貢献」(67%)が挙げられており、本アプローチの狙いと企業の参加インセンティブは一定の合致が確認されたという。節電の啓発が浸透しないことを嘆く企業担当者から「社内の啓発活動への後押しにつながる」という声も挙がったそうだ。


従業員の参加インセンティブとしては、年齢層のバランスの良さがあった。また、継続的に取り組むために必要なものは「報酬」と回答した参加者が多かったものの、「身近で取り組みやすいエコアクションが充実している」「会社で一丸となって目標に取り組む一体感」などの回答も多く寄せられ、"報酬ではない何か"にインセンティブを見い出している人が少なくないことがわかったという。


一方で事業効果においては「物を捨てる時」や「買い物をする時」といったCO2削減の影響が少ないエコアクションが目立った。


岸氏は「回数を重ねてやっていくことも重要です。もともと本取り組みの狙いは行動変容です。環境意識は56%、環境行動は57%向上しました。エコアクションの回数や削減効果だけではなく行動変容にも注目する必要があります」と説明。これまでにない効果が期待できることを強調した。



最後に「不参加だった企業にどのように参加を促すのか」「従業員のプライベートにどこまで踏み込んで良いのか」など、今後の課題点をまとめたうえで「企業を通して従業員に働きかけるやり方であれば、環境改善に対する関心の低い人にも参加してもらえる可能性があります。従来のアプローチと組み合わせながら展開できればと思います」と意気込みを語った。


報告会後、岸氏に実施の背景を聞くと「狭山市ではCO2排出量の約半分が製造業によるものです。とはいえ、CO2削減に向けて頑張ってはいるものの、現場のエコアクションにはあまりつなげられていない、という話を製造業の人達から聞き、何とかしてあげたいと思ったことからです」とのこと。



「住民向けのアプローチではそもそも環境意識が高い人にしか届かない。ただ、企業×従業員参加アプローチでは企業を介すため、一種の強制力が生まれました。その結果として、これまで関心の無かった人の行動変容に影響を与えることができて、とても意義のある取り組みだったと実感しています。もっと広域でやっていきたい。市単位ではなく埼玉県全体で取り組んでいければと思っているので、そういった働きかけも進めていきたいです」(岸氏)。



今回使用されたアプリ「Green Program for Employee」について村木氏は「日常生活から排出されるCO2量を可視化できるという部分は重視しています。機能自体はシンプルにして使いやすさにはこだわりました」と語ってくれた。「一定の成果を得られた一方で課題も見えてきました。多くの企業にどのように参加してもらうのかというところは特に改善していきたいです」(村木氏)。


NTT東日本 埼玉西支店 ビジネスイノベーション部 地域基盤ビジネスグループ 地域基盤ビジネス担当の佐藤壮志課長と村上美季氏にも話を聞いた。同社は本アクションにおいて、4市とNTTコミュニケーションズの調整役となった。



「4市が抱える課題解決として『NTTComのアプリが有効なのでは?』と提案して、泥臭く橋渡し役として動き回りました」(村上氏)。



「NTT東日本は地域密着型の営業を展開しており、自治体や企業が抱える課題を把握した後、最適なソリューションを提案しています。今後も地元の自治体や企業の心に火をつけられるような提案をして地域貢献をできるように取り組んでいきたいです」(佐藤課長)。



望月悠木 フリーライター。主に政治経済、社会問題に関する記事の執筆を手がける。今、知るべき情報を多くの人に届けるため、日々活動を続けている。Twitter:@mochizukiyuuki この著者の記事一覧はこちら(望月悠木)

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