デジタル一眼とスマホカメラの“現在地” いろいろなシチュエーションで比較してみた

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2025年01月31日 11:31  ITmedia NEWS

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デジタル一眼とスマホを同時にあれこれ使ってると見えてくるものがあるのだった

 デジカメレビューのページでこんなことをいきなり言うのもアレだけど、ここ1〜2年のスマホカメラ(フラッグシップクラスに限るけど)の画質には目を見張るものがありますな。


【その他の画像】


 デジカメレビューとスマホカメラレビュー(ITmedia Mobileで連載中)の両方を担当してる身としては、いろいろと感じることもあるので、デジタル一眼とスマホカメラのどっちが上なの? いや、どっちが上とか下とかあるの? という話をしてみたくなった。


●スマホの一番の特徴は連写+合成技


 デジタル一眼とスマホカメラ。レンズを通した光をイメージセンサーで受け取って、その信号をデジタル化して画像を生成するという流れは同じだけれども、それぞれが進化した結果、大きな違いを産むに至った。


 ちょっと大げさだけど、典型的なのはこれだ。


 同じ場所でスマホカメラ(iPhone 16 Pro)とフルサイズセンサーのミラーレス一眼(ソニーのα7C II)で撮った写真である。似た感じになるよう縦横比を合わせたりはしてる。


 上がiPhone 16 Pro。下がα7 CIIで撮ったもの。


 iPhoneの方が青空の色は濃く、日陰部分は明るく撮れている。α7C IIで撮った方は空は明るすぎて色が薄くなり、影部分は暗い。


 もうちょっと分かりやすいやつ。


 iPhoneは白熱灯の照明は白トビしておらず、背景の壁や天井も明るい。α7C IIは照明は白トビしているし、背景は暗い。


 センサー性能としてはフルサイズセンサーを搭載したデジタル一眼の方がずっと上だし、ダイナミックレンジも広いのだが、実際に撮ってみると、iPhoneの方が広い明暗差に対応している。


 iPhoneに限らず、今のスマホカメラはリアルタイムHDRに対応したセンサーを使っている上に常に複数枚の撮影をし、複雑なデジタル処理をかけることでダイナミックレンズの広い写真(HDR写真)を生成するのがデフォルトなのだ。昔に比べるとレベルも上がったものである。


 もちろんデジタル一眼でもHDR機能は持っているし、ノウハウを持っている人ならわざと白トビしないようアンダーで撮って現像時にシャドウ部を持ち上げて調整するが、スマホは良くも悪くも自動的に判断してそれをかけてくれるのが大きな違い。


 連写+合成の技はノイズを減らすのにも役立つ。


 数年前まではスマホカメラのようにセンサーサイズが小さなカメラは高感度時のノイズが大きく画質が劣化すると言われていたが(実際、劣化するのだけど)、連写+合成でノイズを軽減したり、高度なノイズ低減処理で、高感度時の画質はぐんと向上した。


 ディテールはいくらか失われるが、等倍でチェックしない限り分からないレベル。夜景モード(ナイトモード)が働かなくても十分なクオリティだ。


 デジタル処理は完璧ではないので、時には不自然な階調になっちゃうこともあるし、シャドウ部を無理に持ち上げることで色がおかしくなることはある。


 例えば、日陰は色温度が高いのだが、そこを持ち上げることで妙に青っぽくなるとか。肌色も端末によってクセがあっていい感じに出てくれるとは限らない。


 でも、スマホカメラのHDRに助けられることもある。


 私は東京の歴史散歩系の本を10冊ほど出しており、掲載する写真も自分で撮影・レタッチしているが、ここ2年ほど、しれっとiPhoneで撮った写真が紛れ込んでる。シチュエーションによってはiPhoneで撮ったHDRが効いた写真の方が良いからだ。屋外の写真って撮影した時刻、季節、天候によって大きく変わるわけで、それが面白さの一つなのだけど、そういう条件に左右されない写真が必要なことはあるのだ。


●ポートレートモードで比べてみると


 続いて比べてみたいのがボケ。iPhoneなど多くのスマホが「ポートレートモード」なんて持ってるので話がややこしいのだけど、要するに前後のボケのコントロールだ。人物を撮るときに中望遠で背景をぼかした写真にすることで一眼レフっぽい仕上がりを目指すというのは何年も前からスマホカメラが挑戦していたことで、年々レベルが上がってて面白い。


 でも、やはり被写体との距離を図ってボケをシミュレーションするスマホカメラとリアルに光学的なボケを実現するデジタル一眼ではナチュラルさに差が出る。


 こちらは上が「Xiaomi 14T Pro」、下がキヤノンの「EOS R1」(レンズは24-70mm F2.8)。たまたま同じ時にレビュー用作例を撮っていたので比較しやすい画があった。


 Xiaomi 14T Proの方はポートレート時に美肌がかかってたりするのでぱっと見は映えるけれども、髪の毛のディテールなんかはさすがに無理。昔に比べるとかなりレベルアップしてるけど、階調の滑らかさやボケのナチュラルさは違う。


 さらに圧倒的な光学パワー(135mm F1.8+フルサイズセンサー)にはかなわない。


 が、圧倒的な光学的な不利をデジタル技術でなんとか補おうというスマホ界の進化は素直にすごいと思う。まだときどき破綻することがあるから信用しきれないけど。


 相変わらず猫の髭は背景に溶けちゃうしね。


●異なったアプローチで異なった進化をしていくのだ


 スマホならではの連写+合成技術を駆使したHDRやノイズ低減処理と、デジタル一眼を追いかけたけど追いつけないポートレートモードの2つを典型的な両者の違いとして取り上げてみた。どっちが良い悪いじゃなくてアプローチの違いが面白いと思ったのだ。


 両者の違い……それこそメリットもデメリットも山ほどあるけど、いちいち言及してるとキリがないからそこはご容赦を。


 面白いのは、デジタル一眼はセンサーサイズと光学性能で圧倒的に優位に立っているのに対し、スマホカメラは同じ土俵で勝負せず、AIを駆使した高速なデジタル処理で優位に立とうとしていること。互いに得意ジャンルを生かしつつ進化してるのだなあとしみじみ思う。


 本職カメラは撮影者が自分でレンズや絞りやシャッタースピードやISO感度やホワイトバランスや画作りをコントロールしてイメージ通りに撮れるというのが圧倒的に優れている点で、それをサポートするために最新のデジタル技術を駆使するわけだが、それにはある程度の知識やノウハウが必要で、逆にスマホカメラはその辺のお膳立てを端末側が全部やる分、撮影者側が細かいコントロールをしづらい(できないことはないけど、しづらい)。


 この違いはずっと続くかと思う。


 なので、我々はスマホと本職カメラの両方を持ち歩いて、時には同じシーンで両方で撮ってみたりしつつ、使い分けていくのである。



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