物価高などシビアな景気の話題が目立つ昨今、ポイ活をはじめとする節約術に世間のニーズは高まるばかりだ。しかし、巷には“ウサン臭い儲け話”も転がっており、安易に手を出せばプチ詐欺のカモになるのがオチ。下手をすれば犯罪に加担してしまう危険すらある。
現在発売中の『怪しい金儲けに手を出し本当に儲かった話』(鉄人社)では、そんな怪しい金儲けの中から、本当に儲かる手法やスグ得する裏技のタネが明かされている(もちろんすべて合法)。
著者は、月刊誌『裏モノJAPAN』で企業キャンペーンなどの儲けのみで1週間の食事を賄う「1週間食費0円生活」を3年にわたり連載し、現在は「山野祐介のそこまでやるか!」を連載中の経済ライター・山野祐介氏。
世の中に溢れる商品サービスの各種施策に乗っかり、ときにはその裏をかくような儲けの手口を実践してきた同氏。“働かずに食う”ために大切な考え方を聞いた。
◆原点は時給700円バイトへの疑問
――山野さんはいつから働かずにお金を稼ぐ方法を考えるように?
山野祐介(以下、山野):高校生のころ、ヤマダ電機のポイントキャンペーンでボロ儲けしたのが最初でした。金額に関係なく、商品を買うと100ポイントが付くというもの。ヤマダ電機の店舗に併設されたホームセンターで、一枚8円の紙やすりを一日に何十回も買って、そのポイントで入手したPSPを換金したんです。
――迷惑な話ですね(笑)。
山野:よく出禁にならなかったなと思います。キャンペーン後半は店頭から紙やすりが消えて、12円の結束バンドを買っていました。
――当時、高校生ですよね? バイトは?
山野:ケーキ屋で、ケーキの周りにフィルムを貼り続ける時給700円のバイトをしたんですが、それが超しんどくて。時給700円くらいなら絶対ほかの方法で稼げるだろうと。
――その結果が紙やすりですか。
山野:紙やすりを7回買うほうがラクだし、時給2500円ぐらい紙やすりで儲けられましたからね。『裏モノJAPAN』の連載はエンタメとして「一日かけずり回って2000円にしかならなかった」的なオチで笑ってほしいという気持ちも個人的にはありますが。
◆パチプロに憧れており、今でもなりたい
――本書は「山野祐介のそこまでやるか!」の書籍化とのことですが、ギャンブルネタも多く扱われていましたね。
山野:昔からパチプロに憧れていて、実際にフリーの編集・ライターになって2年ぐらいはパチプロをやっていました。何なら今もパチプロになりたいですね。ギャンブルが好きというよりは、ゲームとして攻略法を考えるのが好きなんです。
◆金儲けの極意は“防御”にある
山野:本のタイトルには“怪しい金儲け”とありますが、どちらかというと“自衛”に役立ててもらえるような内容も多いのかなと。個人的にも防衛的な考え方がより本質で、その延長にビッグボーナスにつながることもあるという感覚です。
――放送大学に入学して学割を活用する話は、防御策として一番想像しやすかったです。
山野:いま4年生なんですが、ゼロ単位で留年が確定しています。休学を挟めば14年生までいられるので、おすすめです。
――14年生で退学・除籍になる頃にはアラフォーですか……。
山野:翌年度に再入学すれば死ぬまで学生でいることも可能です。最近はラーメン屋でしか使っていないですけどね。以前、中古PC屋の学割で20万円ぐらいのMacを3割引で買っていたら、あからさまにお店の人にイヤな顔をされてしまい……。ある日から「高校生以下の学生のみ」としっかり対策されていました。
――ゼロ単の社会人がリアル店舗で学割を使うのは、やはりちょっと面の皮が厚くないと……。
山野:なんか申し訳ないことしましたね。放送大学って、その世界の権威の先生の講座を1万円くらいで受けられるので。来年は1コマぐらいちゃんと授業を受けようと思っています。
――本書の内容で言うと、携帯の料金プランとポイント還元施策の解説も生活防衛的な意味合いが強いのかなと。
山野:ソフトバンクはアコギなイメージがあったんですが、今は逆に一番クリーンな料金プランを打ち出している印象を受けました。実際にソフトバンクは電気通信事業法が改正されるまで、行政指導を受けるようなことを繰り返していたんですけど。
◆騙しのような手口には「水を掛けたい」
――世の中の裏を読むことで、逆説的に庶民の金や時間を巻き上げる「プチ詐欺」のカラクリが理解できる面はありそうです。
山野:先日、連載で終身保険の解説をしたんですが、これも携帯の料金プランと本質的には同じですね。パンフの1面だけ読むと損しないように見えますが、終身保険って15年以内に解約すると1/3ぐらいの額が絶対に持っていかれる仕組みなんですよね。死亡以外では助けてくれないから、仮にがんで余命宣告を受けてたとしても解約すれば、1/3を持っていかれちゃう。その会社や商品サービスがどこで儲けているかを知るのは、やはり大切だと思います。
――携帯の料金プランなどを読み込むほどのリテラシーは、大半の人が持っていないと思いますが、人為的に操作されたトレンドやブームに敏感な人は最近多いような気がします。
山野:操作されたランキングや、見せかけの数字は、僕もあまり好きじゃなくて。本書で取り上げたLINE MUSICの再生キャンペーンの話は、そういうものに対して「水を掛けたい」というモチベーションが強く表れた回でした。
――アイドルのサイン入りCDをゲットするために指定された曲をLINE MUSICで7千回再生するという話ですね。
山野:1カウントの再生時間を調べて、自動クリッカーでひたすら再生作業をさせたんですが、金銭的な損得に関係なく水を掛けるのは大好きです。生き甲斐みたいなものですね。
――そこまでですか(笑)。
山野:「損したくない」と「騙されたくない」は「≒」の関係ですし、PRとかって都合の良いことしか言わないので。商品やサービスの裏側を自分で見極められるようになると、けっこうおもしろいと思います。
――“怪しい金儲け”をしていて、事業者とトラブルに発展したようなことはないですか?
山野:意外と僕自身は訴訟のような経験はないですし、自分がこっそり得するだけなら基本心配ないかなと。僕の場合、単に企業の用意したスキームに乗っかるよりも、“組み合わせ”を見つけることが好きなので、結果的に手法が他人とバッティングしないこともあると思います。
◆自分一人でこっそり得するコツは…
――今はお得なキャンペーン情報がネットですぐ拡散される時代ですよね。
山野:なので “焼き畑”的なところはあります。また引き合いに出して申し訳ないんですが、ヤマダ電機の「ヤマダ積立預金 満期特典」が、中止になったじゃないですか?
――積立預金サービスのリリース記念で、積立満期時に積立金総額に対して10%のポイントを還元するという内容でした。
山野: 最終的に3000ポイント/1口座が付与されることになりましたが、あれは多額の金を引っ張れば勝つだけの話で工夫の余地もないし、そういう意味では想定外の事態ではないと思うんです。ヤマダ側の見積もりが甘かったというのはあるかもですが。
――結局、企業が撒いてもいい以上の金額はしゃぶれないという。
山野:パチンコ雑誌に攻略法が載ったら、対策されてその攻略法が使えなくなるのと同じで、お得情報もインフルエンサーが張ったらそこで終了なんです。まあ、今回のヤマダの「満期特典」はSNSで拡散されなくても、おそらく中止になっていたと思いますが。
――山野さんは誰にもバラしていないネタも多いんでしょうね。
山野:最後まで一人でしゃぶり続けられたやつもけっこうあります。本当はみんなで儲けられるなら一番いいですけど。この本のいろんなノウハウの組み合わせの事例を参考にしてもらえたら嬉しいです。
<取材・文/伊藤綾>
【伊藤綾】
1988年生まれ道東出身、大学でミニコミ誌や商業誌のライターに。SPA! やサイゾー、キャリコネニュース、マイナビニュース、東洋経済オンラインなどでも執筆中。いろんな識者のお話をうかがったり、イベントにお邪魔したりするのが好き。毎月1日どこかで誰かと何かしら映画を観て飲む集会を開催。X(旧Twitter):@tsuitachiii