2025年1月29日=2,124
*がんの転移を知った2019年4月8日から起算
2024年11月に発症した腰骨・第1腰椎の圧迫骨折。痛みの程度はだいぶ軽減し少しずつ動けるようになった。ただし痛みゼロとはならず、「よろい」なしでは生活できない。たとえ分速1メートルでも、だんだんと歩けるようになったことは、至上の喜びである。すみません、大げさで。
▽恩返し
てな訳で、先日お出かけした。行先は三重の隣県の県庁所在地、名古屋市。専属秘書(編注:妻のあかねさん)とともに、人口5000人台の町から200万人住む都会へと、県をまたいで車を走らせた。片道30キロ弱の旅だったが、大いに満喫できた。
自家用車で、運転手はオレ。目的は専属秘書が行きたがっていた駅近くの地下街にある店舗での「やぼ用」である。日頃は私のパート仕事や受診などで病院への送迎を彼女に頼っているだけに、たまには恩返し。というのは表向きの理由だ。本音はただただ車を運転したかっただけだ。運転。これはもう好きをはるかに通り越して、「特技」と言える。制限速度以内で、ということだが高速道路だって何キロでも運転できる。
▽運転好き
その日は一般道だと渋滞に巻き込まれる恐れがあり、行きは高速道路を選んだ。快調に名古屋駅周辺までやって来たところ問題発生、駐車場が見つからない。
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カーナビなし携帯なしの中、紙の地図を片手に、目的の地下街入り口に出来る限り近くの駐車場を求めたことも災いした。一方通行の標識も多い。この辺やと勘を働かせて、とある駐車場のゲートをくぐった。と同時に料金看板を見て後悔した。
な、何と、10分で400円とある。1時間で2400円か・・・ところが次の文言に救われた。「最大3300円」。ということは、90分すなわち1時間半で元が取れる。ヨメさんの用事にはおおよそ2時間はかかりそうなので、これはお得だ。さらにこの後の散策調査では、同駐車場最寄りの地下街入り口からは、100メートル程で店舗に着けると判明した。この新しい発見に専属秘書も大満足。
▽至福の時間
彼女を送り出した後、私には2時間あまりの自由時間が到来した。ひとりで時間を過ごすのも至福のひとつである。駐車場近くにある自販機で缶コーヒーを購入し、持参したチーズハンバーガーをほお張り始めた。がん発病前ならば食べるのに1分もかからないところだが、今は完全なる胃がない。ただし時間はたっぷり120分はある。周囲を見れば、車もそれほど密に止まってない。混雑は嫌いや。
そうか、この駐車場は短時間では使い勝手の悪い料金だ。それでも名古屋駅にも近い(一般的な歩行速度ならば3分ほどじゃないか)などの好立地から利用客がひっきりなしに訪れる。そこで、そのあたりを観察することにした。ウオッチングも好きなことのひとつである。対象は人間、建物、風景など何でもありだ。
▽「楽しい日本」
工事用車両から数名の作業員らしきひとが現れる、お仕事お疲れさま。20代に見える男女のカップル、さらには大人ふたりと子供ふたり、親子連れかな。買い物あるいは食事に向かうところか、顔も体もウキウキしてる。まさに首相の訴える「楽しい日本」、ここにあり。そうこうする間に生理現象を催してきた、「小」の方だ。その場所を見つけるべく車外に出た。トイレは地下街にもあろう。でも階段の降り登りが腰椎骨折の身にはきつい。という訳から平地で探すことにした。
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するとここでも新発見、いや再発見。見覚えあるビルに出くわした。以前とある研修で参加した建物だ。すぐに1階で広めの個室スペースを見つけられた。この建物近くにコインパーキングがあったんやと気付かされた。ゆっくりと車に戻ると、間もなくして秘書も戻ってきた。3300円で充足できた3時間ほどの余韻に浸りながら、一般道路を悠々と帰ったことは言うまでもない。しぶとく生きるって最高、足し算命2120の出来事だった。
わがユーチューブらいぶ配信、こちらもしぶとく続けてます。チャンネル名「足し算命・大橋洋平の間」。配信日時が不定期なためご視聴しづらいとは察しますが、どこかでお気づきの際にはお付き合いくださいな。ご登録も大歓迎。応援してもらえると生きる力になります。引き続きごひいきのほど何とぞよろしくお願い申し上げまぁす。
(発信中、フェイスブックおよびYouTubeチャンネル「足し算命・大橋洋平の間」)
おおはし・ようへい 1963年、三重県生まれ。三重大学医学部卒。JA愛知厚生連 海南病院(愛知県弥富市)緩和ケア病棟の非常勤医師。稀少がん・ジストとの闘病を語る投稿が、2018年12月に朝日新聞の読者「声」欄に掲載され、全てのがん患者に「しぶとく生きて!」とエールを送った。これをきっかけに2019年8月『緩和ケア医が、がんになって』(双葉社)、2020年9月「がんを生きる緩和ケア医が答える 命の質問58」(双葉社)、2021年10月「緩和ケア医 がんと生きる40の言葉」(双葉社)、2022年11月「緩和ケア医 がんを生きる31の奇跡」(双葉社)を出版。その率直な語り口が共感を呼んでいる。
このコーナーではがん闘病中の大橋先生が、日々の生活の中で思ったことを、気ままにつづっていきます。随時更新。
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