「もしも母親適性検査があったら私は不合格だ」悩んだ結果、母はやめず“妻をやめた”女性の胸中とは?

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2025年02月01日 09:00  女子SPA!

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結婚そして出産。いやおうにも妻と母親を掛け持ちしなくてはならない女性。でもはたして、夫が父親を掛け持ちしてくれるのでしょうか。

◆不器用な生き方しかできない、妻をやめた女性の物語

『母ですが妻やめました』(KADOKAWA)は、悩み抜いた結果、妻をやめた女性の物語。

主人公の木下理恵は32歳、結婚して7年になる理恵には5歳の娘、ナナがいます。夫の亮は39歳、育児には無関心で趣味や友達付き合いを優先する始末。

とはいえ、こういった家庭は特にめずらしくはありません。ただ、主人公の理恵の性格は、かなり真面目で繊細。子育てや人間関係が苦手で、ひんぱんに自己嫌悪に陥ってしまうのです。

◆自分だけが不幸に思えてしまう

「もしも母親適性検査なんてものがあったら、私はきっと不合格だ。」こんな風に思い詰めてしまう理恵に、妻や母でなくても、女性として共感してしまいます。

保育園のママ友以前の存在、理恵にとっては遠巻きに見ているだけのママ達の会話を盗み聞きしては、過剰に反応して落ち込む日々。充実度MAXのポストをしたママ達のSNSを横目に、自分の生活を卑下してため息。罪のないナナに八つ当たりすることも。

真面目で繊細で、がんばりやだからこそ、人との距離感がうまくつかめず、対応もぎこちなくなってしまいます。理恵自身も自覚しているからこそ、つらくて、どうしようもないのです。

もう少し肩の力を抜いたら? もっと気楽に生きていいんだよ? と、声をかけたくなるほど、前半部分の理恵はかたくなで、読者として切なくなってしまいます。だからこそ、同じ女性として、あるいは人として、リアルに胸に迫ってくるのです。

◆勇気を出して、心をひらいてみたら

ママ友なんかいらない、と突っぱねる反面、ひとりは嫌だという気持ちが頭をもたげる理恵。視野を広げてみれば、保育園の保護者の中に仲良くなれそうなママやパパがいました。不器用ながらも会話を交わし、距離を縮めていきます。

大人になって、年齢や立場に変化がおとずれるほど、友達はつくりにくくなるもの。とはいえ、夫婦関係や親子関係、プライベートだからこそ相談相手がほしいのも切実な思いですよね。特に理恵の場合、夫がまったく頼りにならず、3人家族なのに常に2対1の関係性。加えて子育ては、何かあると母親の全責任になってしまいがち。

理恵みたいになりたくない。そう感じて、苦しくなる女性は多いでしょう。でも、苦しくなってしまうのは、理恵のように一人になる可能性が潜んでいる証かもしれません。そして理恵自身も、なりたくてそうなったのではないのです。

◆妻という人生から抜け出すために

やがて理恵は、妻という人生に疑問を持ちはじめます。子供がいるかぎり、母はやめられない、でも、妻は継続しなくてもいいのではないか。結婚し、妻になり、母となる。一気に役割が増えてしまう女性は、固定観念の呪縛も、のしかかります。

妻だから、こうしなくてはならない。母だから、こうしなくてはならない。多様化が叫ばれる令和の時代になっても、根底はさほど変わっていないのかもしれません。しかし、保育園やパート先で培った人間関係のスキルや、鍛えられた心で、理恵は一大決心をするのです。

フラストレーションに苛まれながらも夫に従順だった理恵が、自分本位の人生を生きなおすまで。清々しいほどの感動を、ぜひ、あなたも味わってみてください。

<文/森美樹>

【森美樹】
小説家、タロット占い師。第12回「R-18文学賞」読者賞受賞。同作を含む『主婦病』(新潮社)、『私の裸』、『母親病』(新潮社)、『神様たち』(光文社)、『わたしのいけない世界』(祥伝社)を上梓。東京タワーにてタロット占い鑑定を行っている。X:@morimikixxx

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