東京2025世界陸上へ17歳の誓い 大注目の女子高校生・久保凛に芽生えた自覚「憧れてもらっているからこそ、もっと頑張らなきゃ」

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2025年02月01日 12:05  TBS NEWS DIG

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1月20日に17歳の誕生日を迎えた陸上・女子800mの日本記録保持者、久保凛(17、東大阪大学敬愛高)。学校の友人からは誕生日に「筆箱とか定期入れとか食べ物とかたくさんもらいました。地元の友達もメッセージをたくさんくれて、家でもたくさん祝ってもらいました」と笑顔を見せる。

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飛躍のシーズンだった2024年は衝撃の走りを連発した。4月にシニアデビュー戦となった金栗記念では、憧れと語る田中希実に競り勝ち優勝。6月の日本選手権で日本一となると、7月には日本人女子が達成する事が出来なかった領域にさらりと足を踏み入れた。自己ベストを約3秒更新し1分59秒93をマーク。16歳にして日本記録保持者になると、去年12月に行われた全国高校駅伝では800mが専門ながら4.0975km(2区)を走り、16人抜きで区間賞を獲得。見ている人の度肝を抜いた。

SNSやネット記事では驚きや称賛のコメントが多くある中「長い距離を走らせたらケガをする」などのコメントも散見された。久保は「去年の冬は駅伝で長い距離もしっかり踏んで。ジョグは6 キロぐらいなんですけど、春に走り始めたときは、スピードと持久力も上がっている感覚がありました。その上でたくさん試合を経験できたり、怪我なく練習出来ていることが良かったと思います」と話した。

練習では長くても1日6kmまで。それは、指導する野口雅嗣監督との今でも変わらない決め事だ。さらに、高校入学後から継続してきた体幹トレーニングが、久保のブレないフォーム、故障をせず練習を積める体を作ってきた。

野口監督は「線が細かったところを鍛えて、足りないところはたくさんあると思うんですけど、そこは体の成長に合わせて少しずつ。記録への貪欲さも出して、次のステージを練習しようと日々続けてくれています。他の子にも言うんですど、久保が元々持っている力だからできるとか、そんなことではなくて、日本一練習を我慢している選手だから、日本一なんだ。苦しいと思うようなことを普通にやってしまうことができるから強いんだよって」。

これまで久保は高校に入学してから、800mの自己ベストを10秒以上も伸ばしてきた。順風満帆に見えるが、日本記録を出して以降、それを超えないといけないというプレッシャーとの戦いが始まり、大会で優勝しても涙を流す姿が見られた。

「記録を出さないとっていう気持ちがすごく出ちゃっていた部分があって、優勝は出来ても、悔しさの方が大きかったり、記録が出せないと思い通りにいかないっていう。その中で、初心に戻って陸上を楽しむっていう部分が大切かなっていうふうに野口監督と話した時に、改めて気付いた部分があって、陸上を楽しんで取り組めるっていう部分が、自分のいいところかなと思う」

今年&17歳初レースは1500m

1月24日に東大阪市で行われた記録会。12時過ぎから行われる1500mに出場するため、久保は朝4時半には起きて、集合時間の7時には会場に到着していた。チーム全体のストレッチやジョグ、動き作りを30分間行うと、東大阪大学敬愛高校オリジナルのメニューを始めた。

50m走2本のタイムを計測。野口監督は、このメニューで選手たちのその日の調子の良さが分かるという。アップ用のシューズでの計測にも関わらず6秒9台で駆け抜けた久保は、「めっちゃいい」と笑顔。野口監督も「今日はアスファルトなので、6秒9とか7秒ぐらい。冬にしたらものすごく調子は良いと思います」と話した。ちなみに50mの日本記録は1985年に小西恵美子さんがマークした6秒47だ。

軽食や休憩を挟み10時30分からレースに向けて、再びアップを開始。ストレッチの際、開脚が180度開く柔軟性は、父から教えてもらい、お風呂上りに毎日続けてきた努力の賜物だ。そして、いよいよ12時から1500mのレースが開始。気温11度、標高642mの生駒山から「生駒おろし」と言われる風が3m近く吹く中、久保は4分19秒51のタイムでフィニッシュ。自己ベストの4分13秒75には及ばなかったが、このタイムに野口監督は「この風の中、この時期で4分20秒を切ったのは、ナイスランで今日の合格点だと思います」。久保本人も「初めてのトラックレースになって、まずは1500mをしっかり走れるようにしたいという気持ちで臨んで、前半から自分のリズムを作って走ることができた。去年の3月は4分30秒かかっていたので、それに比べてまだ1月ってなった時に、このタイムはいい方かなと思います」と1年の成長を感じている様子だった」

レース後には小学生から高校生まで様々な世代からサイン攻めに。数えただけでも60人を超えたが、嫌な顔ひとつせず、丁寧に笑顔でサインを書いたり、記念撮影に応じた。今や誰かの憧れの存在にまで成長した久保だが、決して驕ることはない。

「こうやって自分が日本記録を出したり、勝つことが出来たり、結果を残した時に憧れてもらえるっていう事は嬉しいことですし、憧れてもらっているからこそ、もっと頑張らなきゃと思う事ができるので、そう感じてもらっている部分はとても嬉しいです」

高校新記録どころか日本新記録、日本選手権優勝と大会で優勝する度に、レース後に語る目標が右肩上がりにどんどん高く設定されていった2024年。その中で果たせなかったのがパリオリンピック™出場だった。だからこそ、今年行われる東京世界陸上への思いは何よりも強い。参加標準記録は1分59秒00。久保は突破まであと0秒93に迫っている。

「自国開催ということで、東京でたくさんの方に見ていただける事はすごく嬉しいし、高い目標ではあるんですけど、必ず出場してメダルを獲るということを意識して取り組みたいなと思います」

2月下旬には海外でのレースにも出場し、世界と戦う経験を積んでいく予定だ。800mの日本人メダリストは1928年のアムステルダム五輪で銀メダルを獲得した人見絹江が最後だ。

「愚かなりとも、努力を続ける者が最後の勝利者になる」

人見は生前、この言葉を遺した。去年以上の成績を残し、さらに歴史に残るシーズンへ。右肩上がりなのは記録だけでは無かった。

「身長伸びていますよ。168.1cmになったので、170cmまでいきたいなって。朝が測り時ですね(笑)」

■久保凛(17)
2008年1月20日生まれ、和歌山・串本町出身。潮岬中〜東大阪大学敬愛高。身長168.1cm。小学6年生までは、サッカークラブに所属し、中学から本格的に陸上競技を開始。3年時に全日本中学陸上女子800mで優勝。24年日本選手権女子800m決勝でも2分3秒13で初優勝。7月15日の関西学連・長距離記録会(奈良・橿原公苑陸上競技場)で1分59秒93の日本新記録をマーク。05年に杉森美保が記録した2分00秒45を上回り、19年ぶりの記録更新。日本女子初の2分切りを果たす。
 

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