厚生労働省などによりますと、去年1年間に自殺した人は、暫定値で前の年から1569人減って2万268人となり、統計を開始して以降2番目に少なくなりました。
一方、小中高生の自殺者数は527人で、統計のある1980年以降で最も多くなっています。男子は前の年に比べて20人減っているのに対し、女子は34人増加しています。
【写真を見る】「『体調どう?』から話きいてみて」 小中高生の自殺が過去最多527人 “人間関係の複雑化”も影響か 子どもの悩みどう気付く
精神保健福祉士で、悩み相談を受ける側のサポートなども含め「若者の自殺対策」に取り組むNPO法人「Light Ring.」の代表理事・石井綾華さんは、小中高生の自殺者数が増加傾向にある要因のひとつとして、子どもたちの「人間関係の複雑化」を指摘しています。
デジタル時代を生きる子どもたちの生きづらさーー小中高生の自殺者数が過去最多となりました。背景にはどのようなことがあると考えられますか?
「自分たちが活動する中で、成績や進路の悩みに加えて、人間関係で悩む人の数が増えたというふうに実感しています。
学校は子どもたちにとって非常に生活時間が長く、トラブルが起きやすい環境でもあります。学校といっても実際に対面で接する時間と、それ以外にオンラインでクラスメイトと繋がる時間など、様々な場面で人間関係のトラブルが起きやすい環境であるというところにも目を向ける必要があると思います。SNSによるトラブルは大人の目が届きづらいというところも問題の一つです」
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ーー今や自分のスマホを持っている子どもも少なくないですが、インターネットの利用による影響は他にもあるのでしょうか?
「SNSの発展に伴って、他人と自分を比較してしまう子も増えていると思います。他人と自分を比べて、体重や容姿などに劣等感を抱きやすくなったり、フォロワー数やいいねの数など、そういった面からも比較しやすくなっていて、『自分は必要とされていない』『自分は駄目な人間だ』ということを思いやすい傾向があるのではないかと思います」
まずは「体調どう?」から子どもの話を聞いてみてーーいち早く子どもが悩んでいることに気付くためにはどのようなことが重要ですか?
「何気ないコミュニケーションとか、短い時間でも定期的に話を聞く時間を持つことが非常に大切です。『体調どう?』とか、体の面から話を聞くということがおすすめです。『眠れない』とか『お腹が痛い』というところから、『どうしてそんな状況なの?』と聞いてあげることで、自分の気持ちとか本音を言えるようになっていく可能性があります」
ーー子どもが悩みを打ち明けてくれた時、どのように向き合えばよいでしょうか?
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「悩みや希死念慮(死にたい気持ち)を打ち明けてもらったときに一番大切にすることは、動揺しないこと、また否定的な気持ちにならず最後までゆっくり話を聞くことです。子どもの場合、自分の気持ちを言葉にするということはとても難しいんですね。その感情がどうして生まれたのか、気持ちを紐解く時間を持つということも大切です。言葉にすることで『自分は怒ってたのではなくて不安だったんだ』と本当の気持ちに気付くことができたり、楽になったりすることがあります」
また石井さんは、子どもや若者が友人などから悩みを相談され、一人で受け止めているケースもあるとして「相談に乗る側も一人で抱え込まないでほしい」と訴えます。
NPO法人「Light Ring.」の代表理事・石井綾華さん
「悩みを受けとめる側の子どもたちは、意図せず『あなたにしか話せない』と打ち明けられることも多いと思います。だからといって、自分だけで抱え込むということはしなくてよくて。
多くの大人たちと一緒に本人をサポートしていく、それによって本当に苦しむ子たちを早く手助けできるチャンスにも繋がっていきます。悩みを聞いてどう返していいかわからないとか、聞き続けて疲れてしまったという場合には、私達のような相談窓口にぜひ本音を伝えてほしいです」
執筆者:TBSテレビ社会部(厚労省担当)辻萌絵子
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いま、悩みを抱えているという方は厚生労働省のホームページを「まもろうよこころ」で検索すると、電話やSNSで相談することができる窓口が紹介されています。