いまだ救出作業が続く、埼玉県・八潮市の道路陥没事故。
実は近年、こうした陥没事故が、日本各地で相次いでいます。背景に、何があるのでしょうか。
【写真を見る】“老いるインフラ”陥没事故は埼玉・八潮市以外でも 社会インフラの老朽化、取るべき対策は【サンデーモーニング】
発生から5日…陥没事故の影響は近隣住民に拡大埼玉県・八潮市。上空からは、道路の真ん中にあいた巨大な空洞をみることができます。トラックがこの中に転落する事故発生から、すでに5日(2月2日時点)。影響は近隣住民に拡大しています。
自宅が事故現場から10メートルほどしか離れていないという住民は…
近所に住む女性
「信じられないという思いで、普通の日常生活を送っていたことがありがたいことだったんだなと…」
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事故発生当時の映像。トラックの下に下水道管が通っているとみられます。
陥没の原因として指摘されているのが、使用開始から40年以上経過したという、下水道管の損傷です。
汚水に含まれる有機物により硫化水素が発生。
それが硫酸に変化し、下水道管が腐食した可能性が原因として指摘されています。
実は、こうした道路の陥没は近年各地で相次いでいます。
相次ぐ道路の陥没…原因は社会インフラの“老朽化”2019年、千葉市で起きた陥没事故では、道路の下を通る下水道管が破損していました。
また2022年4月には、川崎市の向ヶ丘遊園駅近くの道路が、縦横約4メートルほど陥没。道路下の水道管が老朽化により破裂したことが原因としてみられています。
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記者
「こちら町田駅前の路上ですが、大きな穴が空いています」
さらに2か月後の2022年6月には、東京・町田市でも、下水道管の破損による水漏れなどが原因とみられる穴が道路にあいたのです。
2024年9月にも、千葉県・市原市の国道16号線で、道路が陥没する事故が発生。
前日の豪雨の影響に加え、地中の雨水管が劣化していた可能性があるとしています。
全国各地で頻発する道路の陥没。下水道管の標準耐用年数は50年。2040年には34%が、建設後50年を超えるという試算があります。
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陥没事故を未然に防ごうとする技術の導入も行われています。
地質調査を専門とする「応用地質株式会社」では、「空洞探査車」という車で、陥没の原因となる空洞の位置などを、地中レーダーを使って探知。データを収集し、AIで解析します。
「応用地質」防災・インフラ事業部 松山明男 部長代理
「(波形の情報を)よく見ると、エッジがついている。くさび形と呼んでいるが、垂れ下がりがそれぞれあると思う。くさびが出るところが空洞の可能性が高いと考えて、読み取りを行っている」
そして、道路に空洞がある可能性が高い場所などの情報を、国や地方自治体に提供しているといいますが、全国での道路陥没事故は、未だあとを断ちません。
いまや大きな社会問題と化した水道などの社会インフラの老朽化。その影響はここにも…
老朽化する社会インフラ…私たちが備えられることは?2024年1月、能登半島を襲った大地震。その際にも、断水が長期化した理由の一つに、水道管の老朽化が挙げられています。ところが上下水道施設の更新には、莫大な費用がかかり、30年ほどで90兆円以上が必要との試算が出されています。
毎年、数兆円もの費用がのしかかることについて、専門家は…
東洋大学 根本祐二 教授(公共政策)
「本来は修繕して更新する予算も、料金収入の中で徴収して基金のように積み立てておくということができれば何の問題もないんですけれど、公共料金だから低く抑えられていたとすると、料金を値上げすることが必要。それを国民全体でコンセンサスを得ていく必要があります」
では、こうした状況に、どう対応すればいいのでしょうか。
東洋大学 根本祐二 教授
「“省インフラ”という言葉があります。従来型の巨大インフラを作って、というのではなくて、立派な箱がある、立派な道路があるのが偉いのではなくて、そういうものを使わなくても豊かな活動ができるように、公共事業・インフラ事業の中でやりくりをしていくしかない」
根本教授は、箱物などの巨大公共事業に頼らず、生活インフラを重視すべきと提案します。
私たちの日々の暮らしを支えるインフラ。その老朽化に備えた取り組みが求められています。