リモコンカメラでイベント撮影──大活躍する「PTZカメラ」とは【道越一郎のカットエッジ】

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2025年02月02日 18:30  BCN+R

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リモコンやPC、専用コントローラーで操作できるPTZカメラ
 「PTZカメラ」という動画撮影用のカメラがある。パン(Pan=水平回転)、チルト(Tilt=垂直回転)、ズーム(Zoom=拡大・縮小)が遠隔で操作できるカメラの事だ。イベントの撮影・配信などで大活躍するということで、にわかに注目を集めている。

その他の画像はこちら 例えば2台のカメラを使う、通称「2カメ」体制の場合。普通なら、映像系のスタッフはカメラマン2名と、映像を切り替えるスイッチャー1名の計3名は必要だ。しかし、PTZカメラを使えば、スイッチャーの手もとにカメラのコントローラーを置くことで、3人分の仕事を1人でこなすこともできる。カメラをどこに向け、どの程度のズーム倍率で撮影するかを、離れたところから自由自在にコントロールできるからだ。かなり忙しくはなるが、3カメぐらいまでなら何とか1人で対応できるだろう。

PTZカメラのFoMaKo「FMK20SDI」。付属リモコンで遠隔操作できる。

LAN接続すればPCや専用コントローラーでも操作可能

 PTZカメラをコントロールする方法は大まかに2通り。1つは付属リモコンの使用。単純な操作ならこれが一番手軽だ。もう1つはLAN接続によるコントロール。カメラをLANに接続することで、同じLAN環境につながっているPCや専用のコントローラーで制御できるようになる。特に専用コントローラーなら、複数のカメラでの運用が楽だ。カメラを切り替えつつ、ジョイスティックを使って直感的に方向を変えたり、ズーム操作を行ったりできる。もちろんピントはオートフォーカス。手動で微調整もできる。機種によっては、コントローラーに付属するディスプレイで映像を確認できるものもある。PTZカメラは「プリセット」ができるのも大きな特徴。カメラの方向やズーム倍率などをあらかじめ記憶させておく機能だ。撮影する場所がほぼ決まっている時は、カメラを向けるポジションをあらかじめ記憶させておく。あとはボタンを押せば、その方向に自動的にカメラが向く。その後にジョイスティックで位置を微調整すればOKだ。

PTZカメラの接続部。LANケーブルと映像用ケーブルを接続する。

PoE対応のスイッチングハブにLAN接続すれば、電源ケーブルは不要だ

 制御のためにLANケーブルを接続するわけだが、もちろん映像信号を送るケーブルも必要だ。つまり、PTZカメラからは、2本のケーブルが出ることになる。本来は、さらにもう一本、電源ケーブルも必要。幸い、電源についてはLANケーブル経由で給電可能なものが多い。PoE(Power over Ethernet)と呼ばれる規格だ。スイッチングハブと機器がPoEに対応していれば、カテゴリー5e以上のLANケーブルで接続することで、LAN接続しつつ電源も供給できる。ただでさえケーブルだらけになる動画の撮影・配信のセッティング。別途電源調達が不要になるばかりでなく、カメラから伸びるケーブルが1本減るので、設営や撤去がだいぶ楽になる。最近では、このPoEとNDI(=Network Device Interface)などを組み合わせ、LANケーブル1本で通信、映像、電源を賄う技術もある。しかし、対応するビデオスイッチャーがわずかで高価。まだ一般用途には向かないだろう。

手前にあるのがPTZカメラの専用コントローラー。

ジョイスティックでカメラの方向転換やZoom操作などができる。

奥にあるのがPoE対応のスイッチングハブ

 遠くに設置したカメラから映像を送る場合、HDMIケーブルでは不安定になりがち。2mを超えると信号の劣化が始まるといわれている。最長でも10m程度が限度だ。5m程のHDMIケーブルでも、場合によっては信号が途絶える事もあり危険。カメラとの距離が5mを超えるような場合はSDIケーブルを使って接続したほうが無難だろう。ケーブルと信号の規格にもよるが最長で、おおむね100m程度であれば伝送できる。PTZカメラの場合、HDMI出力の他に、SDI出力にも対応しているものが多いので、これを利用すればいい。使用するビデオスイッチャーがHDMIにしか対応していない場合は、SDIからHDMIに変換するコンバーターを使う。もしカメラにHDMI出力しかない場合は、コンバーターで一旦HDMIからSDIに変換しSDIケーブルを接続する。受け側では再度SDIからHDMIに変換するコンバーターを使えばいい。

映像ケーブルが長くなる場合はSDIケーブルで接続し、

スイッチャーの手前でSDIからHDMIに変換するコンバーターを使う

 どうしてもHDMIだけで長距離接続したいのであれば、光HDMIケーブルを使う、という選択肢もある。100m程度の長距離でも接続可能だ。HDMIコネクタ内の回路で電気信号を光信号に変換するしくみ。ケーブル本体は光ケーブルなので、とても軽く運搬も容易。しかし、かなり高価な上「曲げ」に弱く、少し折れ曲がったりするだけで信号が途絶えることもある。また重い荷物を載せた台車で踏まれたりすると、簡単にケーブルが切れるおそれもある。なお、光HDMIケーブルには「方向」がある。カメラには送り側用のコネクター、スイッチャーには受け側用のコネクターと接続先が決まっている。扱いにはいろいろと注意が必要だ。

光HDMIケーブル。入力側と出力側が決まっているので、

指定通りに接続しなければならない。

手前のコネクタがカメラ側、奥がスイッチャー側だ

 先日とあるイベントで、実際にPTZカメラを使って撮影と配信を行った。機器は中国・FoMaKoの製品。カメラは、FMK20SDI(PoE対応・光学20倍ズーム・フルHD)で、1台あたり税込み7万6000円程度で調達した。コントローラーは、KC608 Pro(PoE対応)で、6万円程度だった。2台のカメラを、それぞれ少し期間を置いて調達したため、同じ型番の製品ながら異なる製造ロットのカメラが届いた。その結果、2台で色調が大きく異なることに。サポートによると、撮像センサーが変わったためだという。結局、2台の色味を全く同じに揃えることはできなかった。なんとか色味を近付ける調整を行ったが、かなりの時間を必要とした。フルHDの画質はまずまずだが、色味の設定がすぐ反映されないこともあり、実際に使用する場合には十分な下準備とテストが不可欠だ。

PTZカメラを2台使ったセッティング例。

ワンオペで2カメ体制の撮影と配信ができる

 これまでPTZカメラは、1台数十万円もする高価なものだったが、かなり安価に揃えられるようになってきた。最近ではAIを活用して被写体を自動追尾する機能を搭載した製品や、超小型の製品なども登場し始めている。従来は、防犯カメラなどとして使われることが多かったPTZカメラだが、高画質化と低価格化の進展で、これからイベントなどでもさらに活躍することになりそうだ。(BCN・道越一郎)

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