和歌山市の漁港で2年前、岸田文雄前首相らにパイプ爆弾を投げつけたとして、殺人未遂など五つの罪に問われた木村隆二被告(25)の裁判員裁判が4日、和歌山地裁で始まる。殺意の有無が争いになる見通しで、黙秘を続けてきた被告の動機が明らかになるかも焦点となる。
衆院和歌山1区補選の選挙期間中だった2023年4月15日、演説会場となった和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港には約200人が集まっていた。
演説会の直前となる午前11時25分ごろ、会場前方にいた岸田氏のそばに筒状の爆弾が投げ込まれ、約50秒後に白煙を上げて爆発。現場は騒然とし、警察官と聴衆の2人が軽傷を負った。
被告は聴衆の地元漁師らに取り押さえられた。後に殺人未遂のほか、爆弾を自作・使用した爆発物取締罰則違反、演説会を妨害した公職選挙法違反などの罪で起訴された。
被告は黒色火薬を密造して鋼管に詰め、爆弾を自作したとされる。現場に持ち込んだ2本のうち1本を使用。破裂後の筒は約40メートル先のいけすの網の上、破片はさらに20メートル先のコンテナに突き刺さっているのが分かっている。
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これらの状況と爆発の再現実験の結果から、捜査当局は爆弾に殺傷能力があったとしている。公判で検察側は、爆弾を鑑定した専門家ら3人の証人尋問を実施する予定。威力や周囲への影響を明らかにし、被告には爆弾で人を殺害する意図があったとの立証を進めるとみられる。
被告は事件前、国政選挙の被選挙権を年齢で制限するのは憲法違反だと訴える裁判を起こしていた。本人のものとみられるSNS(ネット交流サービス)では岸田氏を批判するなどしており、事件との関連や国のトップを狙った動機が明らかにされる可能性がある。
弁護側が否認する方針の殺意について、甲南大の園田寿名誉教授(刑事法)は「爆弾の威力や危険性を被告がどう認識していたかが鍵になる。どんな情報を見て爆弾を作っていたかなど準備段階の行動も注目される」と指摘する。
公判は4回の審理があり、6日には被告人質問が実施される。10日に結審し、19日に判決が言い渡される予定。【藤木俊治】
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