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和歌山市で2年前、選挙演説に訪れた岸田文雄前首相らにパイプ爆弾を投げつけたとして、殺人未遂など五つの罪に問われた木村隆二被告(25)の裁判員裁判が4日、和歌山地裁(福島恵子裁判長)で始まった。被告は「殺意はありません」と述べ、起訴内容の大半を否認した。弁護側は軽傷を負った聴衆と警察官の2人への傷害罪にとどまると主張した。
被告は捜査段階で一貫して黙秘していたが、弁護側が動機を説明。選挙制度に不満を持つ被告がSNS(ネット交流サービス)への投稿や民事裁判で注目を集められなかったとし、「有名政治家がいるところで爆発させて注目を浴び、自分の考えを世間に知らせようと思った」と述べた。
これに対し、検察側は岸田氏らが死んでも構わないと思って爆弾を投げつけたと主張。民主主義の根幹を揺るがす身勝手で計画的な事件だったとし、「現職首相を狙い、周囲を無差別に巻き込んだテロ行為だ」と強調した。
起訴状によると、被告は2023年4月15日午前11時25分ごろ、和歌山市の雑賀崎(さいかざき)漁港で、衆院和歌山1区補選の応援演説に訪れた岸田氏のそばに爆弾を投げ込んで爆発させ、演説会の実施を妨害したとされる。
被告は五つの罪に対する認否を明らかにした。火薬約560グラムを密造した火薬類取締法違反と、現場に包丁を持ち込んだ銃刀法違反は認めた。一方で殺人未遂のほか、演説会を中止させた公職選挙法違反に関しては「選挙をやっていると知らなかった」と否認した。
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そのうえで、人に危害を加える目的で爆弾を製造・使用したとする爆発物取締罰則違反については「人にけがをさせる目的ではありません」と述べ、罪が成立しないと反論した。弁護側は被告が事件前、兵庫県川西市の自宅近くの山林で爆弾を爆発させていたと説明。「煙は上がったが、被告は人を負傷させる威力を感じていなかった」と述べた。
被告は国政選挙の被選挙権に年齢制限があるのは憲法違反だとして国を相手に民事裁判を起こし、敗訴が確定している。検察側は1審判決があった22年11月ごろから火薬の材料を購入し、爆弾の作り方をインターネット上で調べたと指摘。事件約1カ月前から岸田氏の動向を探っていたことも明らかにした。
爆弾は被告が投げ込んだ約50秒後に爆発し、岸田氏は逃げて無事だった。破片は約60メートル先のコンテナに突き刺さっており、左腕にけがをした警察官が「背中全体に強い風を感じた」と述べた調書が法廷で朗読された。【藤木俊治、安西李姫、駒木智一】
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