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和歌山市で2年前、選挙演説に訪れた岸田文雄前首相らにパイプ爆弾を投げつけたとして、殺人未遂などの罪に問われている木村隆二被告(25)の第2回公判が5日、和歌山地裁であった。再現実験を通じて爆弾を鑑定した警察庁科学警察研究所の研究員が証人出廷し、「爆弾に殺傷能力があった」と証言した。
被告が自作した爆弾は鋼管に密造した黒色火薬を詰め込み、両端をふたで閉じた構造だった。被告が投げ込んだ約50秒後に爆発し、鋼管は約40メートル先で見つかり、さらに約20メートル先でふたの破片がコンテナに突き刺さったのが分かっている。
この日は検察側が爆弾の威力について立証した。研究員は4ミリのベニヤ板を2枚重ねたものが人の皮膚の強度に近いとし、これを貫通する力があれば殺傷能力があると説明。被告の関係先から押収された火薬を使い、未使用のまま現場に残された爆弾1本を参考にした再現実験の内容を明らかにした。
実験の結果、爆発で吹き飛んだふたの一部や鋼管本体が厚さ9ミリの板を貫いたという。本体が飛散するスピードは秒速77〜85メートル程度と測定。ふたの一部を計測すると、秒速250メートル前後とされる拳銃の銃弾を上回るケースもあった。
研究員は被告の爆弾が銃弾の威力を超えていると述べ、「殺傷能力を保ちながら相当な距離を飛ぶと考えられる」と説明した。
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これに対し、弁護側は事件現場と実験方法の違いを挙げた。4日の初公判では被告が爆発の予行演習をしていたとし、「煙は上がったが、人を負傷させる威力を感じていなかった」と説明していた。
法医学者も証人尋問に応じ、被告の爆弾による人体への影響を説明した。実験による飛散スピードを踏まえると、鋼管やふたの一部が体に直接ぶつかった場合、「生命に重大な危険がある」とした。
一方、事件後に現場で捜査した警察官は、爆発地点のすぐそばにある建物の土台部分に傷が二つあったと証言。コンクリートに鋼管がぶつかったとの見方を示し、「かなりの衝突がないと傷はつかない」と述べた。
この事件で岸田氏は逃げて無事だったが、聴衆と警察官の2人が軽傷を負った。初公判で検察側は「テロ行為だ」と強調。弁護側は被告が選挙制度に不満を持っており、「注目を集めるため、自分の考えを世間に知らせようと思った」と動機を述べた。【藤木俊治、安西李姫】
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