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『ハイキュー‼』×SVリーグ コラボ連載(31)
KUROBEアクアフェアリーズ 山口真季
(連載30:大阪ブルテオン中村駿介が烏野と重ね合わせる春高バレーでの負け その後、大学でのセッター転向で開花した>>)
飄々(ひょうひょう)とした様子は、どこか周囲を煙に巻くようで貫禄すら漂う。本人にそんなつもりは毛頭ない。しかし、周りにはそう思われるという。
「ずっとミドル(ブロッカー)をやっていたら、"私のミドルはこう"っていう哲学もあったはず。でも、私は中、高、大、社会人と毎年のように変わる感じだったので」
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KUROBEアクアフェアリーズの山口真季(25歳)は、ミドルブロッカーの矜持のようなものを語らない。一方で、長い髪を揺らしながら、こうも続けた。
「ブロックで得点した時は楽しいですね。特に、身長190cmくらいの外国人選手のスパイクを止めるとうれしいです。身長が高い選手と渡り合って勝つ。ミドルとしてはその姿を見せたいですね」
彼女の本性はどこにあるのか。
山口がバレーボールを始めたのは、小学3年の時。母親のママさんバレーについていった帰り道、仲のいい友達が「新しいチームに入団するから一緒にやらない?」と誘ってきたという。
「やってみようかな」
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バレーをやりたい、と思っていたわけではなく、軽い気持ちだった。
「バレーの楽しさ? うーん......あんまり覚えていないです(笑)。親がやっていたし、ずっとボールに触っていたので怖さはなかったです。痛さはあったかもしれませんが......チームはそんなに強くなかったし、ほぼ遊びで楽しくやっていました」
ひとつ上の姉と同じチームだったが、中学に進んだ姉がバレー部に入ったことで、それに続く道筋はできていた。
「そこでも『やりたい』って感じではなかったですけど、ほかに入りたい部活もなかったので」
山口は淡々と言う。そのキャラクターは、バレー漫画『ハイキュー‼』では同じミドルブロッカーの月島蛍に近いだろうか。
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「姉はセッター、私はアタッカーでポジションは違いました。部活内での競争はなかったし、『トス、低い』ということくらいしか話さなかったですね(笑)。姉はうまかったので、要求することもなかったというのもありますが。先輩のひとり、という感じでした」
高校ではバレーをしないつもりだったが、中学3年でJOC神奈川代表チームに選ばれ、親や監督に勧められて続けることになった。"暗黙のルール"のような形で、神奈川県内の強豪校・大和南高校に進学。そこでも活躍し、大学からも誘いがきた。本人は舞台裏の設営や監督の仕事に興味があり、今度こそバレーをやめる気だったが......。
「周りには『誘ってもらえるのは特別』と言われましたが、それでもやめる気でした。でも、お父さんに『真季には続けてほしい。ずっと(試合を)観てきたし、そういう機会があるなら』と言われたのは大きかったです。ほかにも、いろいろと理由はあるんですけどね」
彼女は舞台裏ではなく、舞台に立ち続けることを選んだ。進学した国士館大学でも活躍。数人の先輩がVリーグのルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズ(現・信州ブリリアントアリーズ)でプレーすることになり、誘いもあったことから「それもいいかな」と思ったという。
そう決断できるほど、すでにバレーは人生の中心にあった。母、友人、姉、父、指導者、先輩といった近しい人たちと関わりで、その道が作られていたのだ。2022年にアクアフェアリーズに移籍し、雄姿を見せ続けている。
「これから何を見せたいか......両親が高校、大学、そして今も、毎試合のように応援に来てくれるんですよ。そうやって応援してくれるふたりや、ファンの方たちにプレーする姿を見せ続けたい。そう思っています」
山口は柔らかい声で言った。コートに立ち続ける動機のひとつだ。
【山口が語る「ハイキュー‼」の魅力】
――作品の魅力とは?
「バレーをしていない人も楽しめる漫画ですね。バレーをしている人からすると『そうだよね』ってなる。異次元なプレーもありますけど(笑)、技術とか考え方とか、読んでいて楽しいです」
――共感、学んだことは?
「合宿でのツッキー(月島蛍)のブロック練習が楽しそうで。そこを読んだあとの自分の練習で、クロ(黒尾鉄朗)が言っていたブロックをやっていました(笑)。それからブロックが楽しくなったかもしれないです!」
――印象に残った名言は?
「クロの『100点の1点』ですね。白鳥沢学園と烏野の決勝に向けたブロック練習で、クロが(灰羽)リエーフに『ウシワカ(牛島若利)を止められますか?』と聞かれて、『10本中1本は止められるんじゃない』って答えて。それが単なる1点の時もあるけど、『チームが盛り上がってる時、あるいは絶望的なピンチの時にチャンスを作り出し その1本を決められたんなら 十分100点の1点』と話したんです。
それで(白鳥沢戦で)ツッキーがウシワカを止めた時、日向(翔陽)が『100点の1点だな』と言うんですよ! 自分もミドルブロッカーだし、派手な1点を取ることは少ないですが、自分が止めた一本がチームの流れを変えるかもしれない。自分も100点の1点を取りたいですね」
――好きなキャラクター、ベスト3は?
「1位は白鳥沢学園のミドル、天童(覚)です。自分も相手がどっちに打つかを読んで飛ぶのが好きということもありますけど、それ以上にキャラクターというか、人間性が推せます(笑)。2位はツッキー。なんだかんだ負けず嫌いで、かわいいところがいっぱいあるので。3位は梟谷学園の赤葦京治。ビジュアルも好きですが、2年生だけど3年生のような貫禄もあって、同時にエースを一番に思いやる姿に『めっちゃいい奴やん』となりました(笑)」
――ベストゲームは?
「烏野vs白鳥沢学園です。アニメでも一番多く見ている試合ですね。ツッキーの覚醒が一番の魅力ですけど、先輩が後輩を支える感じも好き。バレーは6人でやる競技ですが、ベンチのメンバーも含めたやりとりがいいですね。日向、影山、月島という1年生たちは、3年生が土台になっているから存分にやれる。そして、ウシワカに全員で挑むのがいいです」
【プロフィール】
山口真季(やまぐち・まき)
所属:KUROBEアクアフェアリーズ
1999年3月13日生まれ、神奈川県出身。175cm・ミドルブロッカー。小学3年の時に友達に誘われてバレーを始める。中学時代にJOC神奈川代表チームに選ばれ、大和南高校、国士館大学でも活躍。2021年にルートインホテルズ信州ブリリアントアリーズ(現・信州ブリリアントアリーズ)に入団。翌年にKUROBEアクアフェアリーズに移籍した。