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正月や祭りの縁起物として知られる「獅子舞」。インドや中国から日本に伝わったとされるが、現在も日本各地のさまざまな地域で受け継がれている。ただ、人口減少や後継者不足などで存続の危機になっている地方も多いとみられている。
高知県安芸市赤野地区に伝わる「赤野(あかの)獅子舞」は600年以上の歴史があるといわれるが、存続危機から復活した獅子舞として注目されている。現地を訪ねたところ、その理由は「情熱と地域コミュニティー」だった。
▽「やめよう」との声も
赤野獅子舞は、高知県東部の海沿いにある安芸市赤野にある大元神社の氏子が代々受け継いできた獅子舞で、毎年夏祭りと秋祭りの際に奉納している。「どじょうすくい」「金太郎」「酔っぱらい」といったユニークな演目があり、村人(テガイ子)が獅子をからかうなどして怒らせ、格闘が始まるという物語性が特徴だ。1969年に高知県の無形民俗文化財に指定された。
「赤野獅子舞保存会」会長を務める有光新五さん(45)によると、赤野獅子舞は地区の六つの集落が毎年持ち回りで演じてきたというが、後継者不足から集落全体で継続するしかなくなり、2015年に保存会を立ち上げた。ところがコロナ禍で4年間の活動休止となり、稽古もできないことから、再び存続の危機に直面した。
「獅子舞をやめよう」という声も出たというが、有光さんら赤野地区の30〜40代の住民が発起し、小中学生など若い世代を誘うことで「何とか2023年に獅子舞が奉納できた」と話す。
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▽地区外からも
「赤野獅子舞保存会」の特徴は子どもたちが多く参加していることだ。有光さんは「2023年の獅子舞を見て、感動した小学生ら10人以上が新たに獅子舞の練習に参加するようになった」と話す。赤野地区だけでなく、安芸市内や高知市からも加入し、女の子も参加。現在約30人がメンバーとなり、週1回の獅子舞練習を継続しているという。
女子メンバーの吉田音葉さん(赤野小3年)は、「獅子とけんかするところが面白い。自分からやりたいと思った」と保存会に加わった理由を話した。吉田奏斗君(赤野小6年)は「楽しそうだなと思い、5年生の時から参加している。続けていきたい」と意欲的だ。保護者から「子どもらは、習い事は休んでも獅子舞だけは休みたくないと話している」との声を聞くという。
▽子どもが担い手
赤野獅子舞は太鼓の音とともに始まる。顔におしろいを塗った獅子を「てがう(土佐弁で、からかう)」役の「テガイ子」が獅子を怒らせ格闘となり、最後は獅子に食べられてしまう。「テガイ子」は子どもたちが演じることもあり、伝統を引き継ぎながら新たなスタイルを生み出している。
演舞で重要な役割を果たすのが「太鼓」だ。格闘シーンになると緊迫感を演出するため、たたき方の強弱で表現する。最近は有光さんの長男・有光健君(赤野小6年)が太鼓をたたいている。「太鼓は難しいけど、覚えたら楽しくなる」と話し、有力な後継者に育っている。
▽SNSも活用
保存会を立ち上げた当時のメンバーは、会長の有光さんの熱意を強調した。ただ、有光さんは「地域のコミュニティーがないと継承は難しい」と話す。安芸市でも赤野獅子舞を知らない人が多いといい「獅子舞を通じて地域のつながりをつくり、そこから発信していくことが大事だ」。
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赤野から全国へ、ゆくゆくは世界に日本文化として赤野獅子舞を発信するのが夢だ。そのためにSNSを活用。YouTubeだけでなく、Facebook、Instagramを通じても紹介している。赤野獅子舞を見るには、毎年7月22、23日の夏祭りか10月第2日曜に開催する秋祭りに現地を訪ねることが一番いいが、保存会では写真展を開催したり、赤野地区以外でのイベントに参加したりする活動を通じて触れる機会を増やしている。
伝統文化を継承していくのは簡単ではない。地域のつながりと次の世代が参加することで赤野獅子舞は安芸市赤野から日本、世界へ広がっていくのではないだろうか。
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