
近年の情報漏洩やサイバー攻撃の増加を受けて、M社では社内監視を強化することになりました。情報システム部員のAさんは、上司から監視ソフトを選定し、従業員が使用しているパソコンに導入するよう指示されます。
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無事にソフトの選定が終わり運用が開始され、Aさんは監視ソフトが収集した情報を見てみると、「えっ、これって...」と驚きの声をあげます。複数の社員が業務とは無関係のソフトウェアをインストールしていたのです。
M社ではパソコンにソフトウェアをインストールする際には、既定のものを除いて書類を提出し許可が必要です。にも関わらず、複数の社員が無許可でソフトウェアをインストールしている事実が判明してしまったのです。
慌てて上司に報告すると「該当の社員たちには、しかるべき処分が下されるだろう」という返事でした。ルール違反を犯していたとはいえ、まるで密告したかのような気分になりAさんは釈然としません。
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Aさんの会社で発覚したように、業務に関係のないソフトをインストールしていることが発覚すれば、罰せられることになるのでしょうか。社会保険労務士法人こころ社労士事務所の香川昌彦さんに聞いてみました。
ー業務と関係のないソフトをインストールした場合、罰せられるのでしょうか
パソコンに限らず会社の支給品を勝手に改造したり、手を加えたりできません。社用車を無断で好きなようにカスタマイズできないのと同じです。またパソコンを貸与する時点で、社内の規定があるはずです。その規定に業務と関係のないソフトをインストールしてはいけないと書かれていた場合、当該社員は懲戒処分の対象となります。
仮に社内規定がなかった場合でも、社内の情報を外部に漏らしてはいけないという規定はあるはずです。その場合は、無断インストールにより情報漏洩のリスクがあがったとして、懲戒まではいかなくても注意はされるでしょう。
また社内PCの利用は就業時間内に限られています。休憩時間なのだからソフトを使ってもいいだろうと考えは通用しません。「職務専念義務」違反とみなされ懲戒処分となるでしょう。
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ー社用PCの監視やモニタリングは問題のない行為でしょうか
従業員に周知せずに監視やモニタリングをおこなうと、プライバシーの侵害にあたるおそれはあります。ただし、就業規則や社内規定などで就業規則などで社用パソコンの監視やモニタリングに関する記述があれば問題ありません。
むしろ、情報漏洩やウイルス感染のリスクが高くなっている中、未だにパソコンの規定が作成されていない企業もあります。かつての日本企業は終身雇用が約束され、社員はファミリーだという思いもあり「うちの社員に限って情報漏洩しないだろう」という性善説的な考え方が多かったように思います。
しかし誰かひとりが何かをしでかすと、会社や従業員に大きな被害が生まれかねません。会社や従業員を守るために、時勢に沿った就業規則や社内規定の見直しが求められます。
◆香川昌彦(かがわ・まさひこ)社会保険労務士 大阪府茨木市を拠点に「良い職場環境作りの専門家」として活動。ラーメン愛好家としても知られ、「#ラーメン社労士」での投稿が人気。
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(まいどなニュース特約・長澤 芳子)