
歴史や地理、建築などさまざまなジャンルに精通したガイドが案内するまち歩きツアー「まいまい京都」。観光地ではない京都の魅力を発掘しようと2011年に発足し、現在は年間1200コース以上が開催されるほどの人気ぶりです。面白さの秘密は、700人を超えるガイドの、対象への“偏愛”ともいえる愛。一度参加すれば、あなたも深みにハマってしまうかも―。
「ここは繁華街にありながら、素通りされてしまう“見えない悲劇の寺”です」。2024年11月下旬、京都市中京区の木屋町通三条下ルの瑞泉寺。三条河原で処刑された豊臣秀次の妻や子どもら39人がまつられた碑の前で、怪談史研究家の井上真史さん(38)=同区=が約20人を案内していた。
ツアー名は「京都一の繁華街に潜むウラの顔!怪談史研究家とたどる民間信仰」。木屋町通や新京極通にある小さな寺を巡り、知られざる歴史の舞台のほか迷子探しやタヌキの伝承などを解説する内容で、初参加の会社員(55)=大阪府茨木市=は「京都が好きでよく来るけど、こんなまちの巡り方をしたことがなかった」と満足そうだった。
「まいまい京都」は、代表の以倉敬之さん(38)が10年に京都に引っ越してきた際、「まちを楽しんでいる人に案内してほしい」と思ったのがきっかけで誕生した。一般的な観光ツアーとは違い、「コースではなく人ありき」が一番の特徴。仕事や趣味、暮らしの中で“何か”に熱中している多彩な顔ぶれが、独自の目線でまちを案内する。
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ガイドは、スタッフや知人のつてなど「他薦」が基本で、「面白い人がいるという口コミのアンテナを常に張っている」。
「三度の飯より怪談が好き」という井上さんも、スカウトされて昨年12月、ガイドになった。15年ほど前から江戸時代の文献などを読み込み、妖怪や伝承にまつわる京都のいたる所を歩いてきた。趣味が高じて書いた怪談に関する論文が、同志社大の入試問題になったというつわものだ。
「死者の都市」「冥界の入り口」などと銘打ったツアーはいつも満席で、「私ならではのまちの面白がり方を伝えるようにしている」とほほ笑む。
そんなまいまいのツアーの主力客は50〜70代。人気ぶりを端的に表しているのがリピーター率の高さだ。7割近くが2回以上参加したことがあり、うち4分の1の人が10回を超えているという。
会社員の男性(62)=伏見区=は、なんと参加回数212回。もともと京都の歴史や建築が好きだったが、仕事と子育てが一段落した5年前に初めて申し込むと「ここでしか学べない知識が多く、すっかりハマってしまった」と明かす。
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同好の士に会えるのも魅力で、30人近くの友人ができた。津田さんは「お財布の都合で月2回ほどに抑えたいが、面白そうとついオーバーしてしまう」と明かす。
ツアーを支えるスタッフも京都愛にあふれている。約40人のうち、8割以上が他府県から移住してきた人たち。昨年3月に東京から引っ越してきた事務局の関根理沙さん(32)は「仕事というよりライフワークとしてツアー作りのお手伝いをしている。まちへの愛と知識が身に付けば、日常はもっと楽しくなると、多くの人に体感してほしい」と笑顔で呼びかけた。
(まいどなニュース/京都新聞)
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