画像は中町兄妹のYouTubeより◆「中町兄妹」道路陥没事故めぐる発言が大炎上
兄妹のぶっちゃけトークで人気のYouTuber『中町兄妹』が大炎上しています。埼玉県八潮市の道路陥没によるトラック事故をネタに、「(自分が)秒で死んだらおもろいよね」とか「(もしも妹が)あんなやってたのにめっちゃ穴落ちてる、めっちゃ穴落ちて死んだんだけど(となったらウケる)」と、爆笑しながらトークしていたのが理由です。
現在当該動画は削除され、その後兄妹揃って謝罪動画をアップしたものの、批判の声は高まる一方です。
ネット上では、“「秒で死んだらおもろいよね」のどこが面白いんだ?”、“トラック運転手のご家族のことを思えばこんな発言をするのはありえない”とか、“この人たちの親もこんな感じなんだろうか?”などのコメントが多数で、もはや怒りを通り越して呆れているといった様子です。
筆者も削除された動画、そして謝罪動画を見ましたが、怒りや呆れ以上に、中町兄妹のことがとても不憫だと感じました。なぜなら、これは家庭や社会からある意味ネグレクトされ続けた子供の成れの果てだと思ったからです。今日の今日まで、こういう不幸な事故を笑いものにしてはいけないと誰も教えてくれなかったのでしょうか? そんなことは教わらなくてもわかる程度の常識を身につける機会や環境はなかったのでしょうか?
中町純平は27歳、中町綾は24歳とのことですが、謝罪動画を見ても、正直、8歳程度の精神年齢しか感じられない言動と振る舞いなのですね。
◆他の動画も「ただただ空無」
動画やSNSでの身なりや私生活からは、比較的裕福な様子がうかがえます。おおむね順調に人生を歩んできたのでしょう。衣食住に困ることなく、交友関係も幅広く、人生の根底には常に楽しさがある。
しかしながら、その明るさや楽しさ、陽キャの皮を剥いてみると、完全なまでに中身が何も詰まっていない。ただただ、空無なのです。
彼らのチャンネルには、高級車を納入したり、高級ブランドを大人買いしたり、友人と飲み歩いたり、旅行したりする動画と並んで、妹の中町綾が兄の中町純平のデリケートゾーンのムダ毛を処理する動画などのお下劣なシリーズもアップされています。
しかし、いずれもトークのトーンや大ウケするポイントはいっしょ。いろいろなことをやっていても、同じ光景が繰り返されているだけに見えてしまう。
どのような行為も、同じテンションで処理されているのです。その都度違ったアイデアやアプローチを見出すところにまで考えが至らず、すべてが子供じみた快楽を満たすだけのオモチャになってしまう。
◆「ネタとして消費することに疑問を抱けない」幼稚さ
つまり、八潮市のトラック事故も彼らにとってはこの延長線上のことでしかないから、ネタとして消費することに疑問を抱かない。抱かない、というか、抱けないのです。なぜなら、それが軽率で不謹慎であるということすら想像できないほどに未成熟で幼稚だからです。
普通の24歳と27歳であれば、トラック事故を笑いのネタにしてはいけないことぐらい教わらなくてもわかるでしょう。けれども、中町兄妹は普通の24歳と27歳ではありません。ただ数字の都合で、便宜上24歳と27歳とされているだけであって、実態とはかけ離れている。
だから、逆に言えば、彼らを批判したり、その言動に憤ったりすることはお門違いなのですね。中町兄妹は、そのように批判される段階にまで至っていないのです。
肉体と、自由に使える財布、そしてあふれかえる承認欲求が肥大化した行動的な子供。それが中町兄妹なのです。
◆彼らのような人間を生み出したのは社会?
それを加速させた燃料こそが、きちんと叱ってこなかった社会の年長者たちによるネグレクトなのだと思います。
それゆえに、問題は中町兄妹のみにとどまりません。彼らのチャンネルの登録者数が172万人もいて、多くの企業とコラボし、行政のイベントにまで呼ばれるほどの存在である現実を、どのように捉えたらいいのでしょうか?
ここでも、社会というインフラの底が抜けているのです。
文/石黒隆之
【石黒隆之】
音楽批評の他、スポーツ、エンタメ、政治について執筆。『新潮』『ユリイカ』等に音楽評論を寄稿。『Number』等でスポーツ取材の経験もあり。Twitter: @TakayukiIshigu4