Adobe Fireflyの「動画生成(β)」は何をもって“β”を脱するのか? キーパーソンに聞く

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2025年02月14日 18:21  ITmedia PC USER

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インタビューに応じたスノーデン氏

 既報の通り、アドビは2月13日に生成AIサービス「Adobe Firefly」のWeb版をアップデートした。今回のアップデートの“目玉”の1つが、プロンプトや静止画からフルHD(1080p/1920×1080ピクセル)の動画を最長5秒生成できる「動画生成(β)」機能だ。


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 ここで気になるのが“β”という扱いだ。β版というと、正式版の前に提供されるテスト版という位置付け……なのだが、同社のアプリやサービスのβ版を見ていると、何をもってβ版を卒業するのか分かりづらいという面がある。


 同日、Adobe(アドビの親会社)が東京ビッグサイト(東京都江東区)において「Adobe MAX Japan 2025」を開催した。それに合わせて同社のエリック・スノーデン氏(デザイン&エマージング担当シニアバイスプレジデント)が複数メディアとの合同インタビューに応じた。せっかくの機会なので、「動画生成(β)の“β”が外れるのはいつなのか?」という素朴な疑問をぶつけてみた。


●動画生成の「β」が外れるのはいつ?


―― Adobe Fireflyのアップデートでは、動画生成がパブリックβとして提供されました。答えづらい質問かもしれませんが、この「β」は、何を達成すれば脱する(正式版となる)のでしょうか。


スノーデン氏 (Adobeにおける)βというものは、納得のいくクオリティ(品質)で製品出せるようにするためのプロセスの1つだと考えています。私たちとしてはクオリティだけでなく、改善を加えたい要素はいろいろあります。ユーザーの皆さんからできるだけ多くのフィードバックを得て、より良いものを出せるようにしようと考えています。


―― (βが取れるだけのクオリティや機能を備える)時期のめどは立っているのでしょうか。


スノーデン氏 今のところ発表できることはありません。


 現時点において、動画生成機能には「生成できる解像度はフルHD(1920×1080ピクセル)のみ」「動く人間や動物がゆがむことがある」「生成動画に不要なオブジェクトが加わってしまうことがある」「補間された動きが意図しないものになることがある」といった制約もある。


 Adobeとしてはプレビューしやすくする目的で「より低い解像度で出力するモデル」、より高画質を目指した「4K(3840×2160ピクセル)出力に対応するモデル」の準備を進めているというが、ユーザーから実際に寄せられたフィードバックによっては、他にも複数の改良や機能実装が行われることも考えられる。


 生成AIが急速に発達していることを踏まえると、従来のアプリにおける「β版」と比べて「β」が取れるまでに長い時間が掛かるかもしれない……のだが、急速だということはいつの間にか「β」が取れている可能性も否定できない。


●Illustratorが日本語対応に注力する理由


 Fireflyと並んで、今回は「Adobe Creative Cloud」のアップデートも注目ポイントが多い。特にベクター描画ツール「Adobe Illustrator」では、日本語を含む東アジア言語における版組品質の改善に注力したという。


 スノーデン氏は長年Illustratorを担当していたということで、同アプリの東アジア言語に対する機能改善についても質問してみた。


―― 今回のIllustratorのアップデートでは、日本語を含む「東アジア言語における版組品質の改善」が主要なポイントとして盛り込まれています。版組の世界には疎いのですが、東アジア言語への対応は(欧米言語と比べて)難しいポイントがあるのでしょうか。


スノーデン氏 今回発表した内容は、今まで積み重ねてきたことの一部ではあります。版組に関する(改善の)取り組みは、合わせて200件近くやってきたのですが、その多くは日本語での版組にも反映されています。


 今回のリリースには非常に多くの内容(修正や改善)を盛り込んだのですが、「アプリを毎日使う程度」の人と、「1日50回くらい、何らかの形でインタラクションをする」という人とで、求めているものが違ってくるかもしれません。しかし、その場合もユーザーから“対面で”フィードバックを頂いて、どこにフォーカスを当てて開発すればいいのか考えてきました。


 その中で、1〜2点ほど優先度を特に高めて取り組むこともあります。今回であれば、日本語のバリアブルフォント(※1)を導入したということでしょうか。さまざまなユーザーの、さまざまなニーズに応えた結果が今回のアップデートということになります。


 アップデートは「マジックフィーチャー(目玉の新機能)を組み込む」ものもあれば、「機能や品質の改善に注力する」ものもあります。今回は両方をバランス良くできているという点において“特別”です。


(※1)1つのファイルで「通常」「太字」「細字」「斜体字」といった字体のバリエーション(フォントファミリー)をカバーしているフォント。今回の発表に合わせて、アドビは自社オリジナルの日本語バリアブルフォント「百千鳥(Momochidori)」をリリースした。百千鳥はAdobe Fontsを通してダウンロードできる(スタイル別に分割したフォントもある)。なお、アドビでは百千鳥の欧文版「千鳥(Chidori)」のリリースも予定している


 今回、Illustratorにおいて日本語への対応を強化したのは、グローバル本社としてのAdobeにとっても日本市場が非常に重要であることの表れだ。本アプリに限らず、動画編集アプリ「Adobe Premiere Pro」やレタッチアプリ「Adobe Photoshop」でも、日本のユーザーからリクエストが多かった新機能や機能改善を優先的に取り込んだ事例がある。


 Adobe MAXというイベントは、本社のある米国(基本的にロサンゼルス)の他、イギリスのロンドン、そして日本の東京でも行われている。Adobe MAX Japan 2025では、Adobeのシャンタヌ・ナラヤンCEOも初めて登壇したことも“目玉”だったりする。Adobe MAXを東京で開催すること、そして今回ナラヤンCEOが初登壇したことは、日本を重点市場だと考えていることの表れだ。


 今後も、Adobeとアドビは日本のユーザーに寄り添ってアプリやサービスの開発を進めていくという。



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