14歳で飼い主から見放されたプードル 引き取った保護犬猫カフェ代表「あなたは要らない子なんかじゃない」 2カ月後眠るように虹の橋を渡った

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2025年02月16日 17:40  まいどなニュース

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14歳というハイシニアにして飼育放棄となったスタンダードプードルのぴあちゃん

九州エリアのとある民家で、複数のワンコが暮らしていました。ハイシニアの4匹と子犬1匹で、いずれもプードル系です。しかし、飼い主は「お金がないからもう飼えない」とこの5匹を飼育放棄。地元の保護団体に引き取りの相談をするも、あいにく団体ではキャパシティがいっぱいでした。

【写真】なんとかエサを口にしてくれました

「なんとかしてあげられないものか」とその団体が懇意の東京・足立の保護犬猫カフェPETSに相談。PETSの代表は迷うことなく九州へと渡り、飼い主と面会することに。「わかりました。うちで1匹を引き取り、東京でお世話をします」と申し出ると、ここで飼い主は意外な行動をとりました。

引き取り手が見つかったことで飼い主が取った行動は…

なんと飼い主はその場で小躍りどころか、飛び跳ねて大喜び。

その行動を前に代表は「私は粗大ゴミ回収業者なのか」と言葉を失ったと言いますが、飼い主はその温度差を感じてか、急に飼育放棄となった14歳のプードルを前に、「最後まで飼えなくてごめんね」と言いました。

代表は「『犬を引き取ってくれ』と仮に保健所に申し出たら、その後、犬がどんな結末を迎えるか知っているか」と、徹底的に教えたい気持ちもあったものの、「話をしても無駄だ」と、そのうちのハイシニアの1匹を東京へと連れ帰りました。

「要らない子なんかじゃないよ」

東京に連れ帰ったのは、ぴあちゃんというメスのスタンダードプードル。14歳というハイシニアで、そして耳はほとんど聞こえておらず、目もうっすら見える程度。ほとんど寝て過ごしていました。

聞けば、ぴあちゃんは先の元飼い主が赤ちゃんの頃にブリーダーから購入し、小さい頃はドッグランへ頻繁に連れて行ってもらっていたようです。元飼い主の娘がトリミングの練習をし、ショーに出場したりと相応の愛情を受けて育ったそうです。

しかし、ハイシニアとなり、治る見込みのない持病が発症したところで飼育放棄。そんな飼い主の元で、ぴあちゃんはどんな思いで過ごしていたのでしょうか。それを思うと、悲しさと怒りが込み上げてきます。代表はぴあちゃんにこう声をかけました。

「ぴあちゃん、ずっとここにいてね。それとぴあちゃんは『要らない子』なんかじゃないよ。1日も多く長生きしてね」

立ち上がり匂いを頼りに歩き始めた

その声が、耳も目も使えないぴあちゃんに届いたかどうかはわかりません。しかし、当初は全く食べなかったエサを保護後2日目の晩にわずかながらに口にしてくれました。

「良かったね。もっといっぱい食べて良いんだからね」と代表は声をかけましたが、しかし、その後ぴあちゃんに食欲が戻ることはありませんでした。「このままではまずい」と急いで動物病院へ。投薬、点滴、強制給餌をしてもらいましたが、当のぴあちゃんはそれでも寝てばかりでした。

しかし、それから一週間後、ほんの束の間の奇跡が起こります。寝てばかりで立ちあがろうとしなかったぴあちゃんが、突然自らヨタヨタと立ち上がったのです。そして代表のそば歩み寄ってクンクンと匂いを嗅ぎ始め、さらに二週間ほど経過すると、匂いだけを頼りに代表の後ろをついてくるほどまでになったのでした。

眠るように虹の橋を渡っていった

目が見えないため、人間の動きを見失うことはありながら、それでも必死に代表を探すぴあちゃんの姿はとても愛おしいものでした。

ただし、今になって思えば、それはぴあちゃんが限られた力を振り絞って人間に寄り添おうとした最後の行動でした。

保護されてから2カ月ほどが経過した日、ぴあちゃんは静かに虹の橋を渡って行きました。

代表は「わずか2カ月の家族だった」ことを振り返り、「何かしてあげられた気もするし、何もしてあげられなかった気もする」と思ったと言います。そして、元飼い主から引き取ったとき、もし断っていれば、ぴあちゃんが大好きだったであろう、元飼い主の家で旅立てたのかもしれないと思うと、複雑な思いも抱きました。

唯一良かったのはぴあちゃんが眠るように安らかに旅立っていったこと。代表はその寝顔を前に「短い間だったけど、うちに来てくれて本当にありがとうね。虹の橋の向こうでは、いっさいの不安を持たず明るく元気に過ごしてね」と声をかけてあげました。

(まいどなニュース特約・松田 義人)

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