写真―[FIRE投資家が教える「お金・投資」の本質]―
東京23区の中古ワンルームマンション中心に不動産投資を展開。現在、38戸の物件を所有し、資産額10億円、年間家賃収入4000万円の個人投資家・村野博基氏。村野氏が実践する「無敵」の負けない投資では「ブラックリスト」と「ホワイトリスト」という考え方が重要と言います。「ブラックリスト」とはリストに載っているものは除外。「ホワイトリスト」とはリストに載っているものだけを採用という考え方です。「ホワイトリスト」ではなく「ブラックリスト」の考え方で投資を進めるとより負けない投資に繋がります。村野氏が重視する「ブラックリスト」「ホワイトリスト」について解き明かしていきます。
◆投資で“条件”を作ることの是非とは
投資をする際には「何か条件」を作って縛り、そのルールに則って運用していくと再現性が高く効率的な投資ができます。投資家はそれぞれに投資「条件」を作って、それに応じて投資行動を変えていることでしょう。
株式投資の場合には、「PERが10倍以下ならば割安」「PBRが1倍以下ならば割安」といった指標があったり、1株当たり利益のEPSで「収益性」や「成長力」を見ていたりします。不動産投資の場合にも年間収益÷物件価格で「表面利回り」を計算してみたり、「駅徒歩5分以内」「築10年以内」「広さ20平米以上」といった条件を付けている方も多いことでしょう。
株式投資で銘柄を探したり、不動産投資で物件を探すときに色々と条件を付けて、情報を吟味することは大切だと思います。しかし、このとき「条件」や「ルール」を運用する際のパターンが大事です。「PERがもう上がっているから駄目」「配当利回りが4.9%と低いから自分の条件には合わない……」というように、「満たしていないからNG」と弾く考え方を、私は「ホワイトリスト的な考え方」と呼んでいます。この条件付けは周囲との優位性を見つけて「勝ちに行く」考え方です。
◆ホワイトリストは100点を目指す考え方
この「ホワイトリスト」のみで投資を考えるのはスジが悪いと私は考えます。投資で「勝つこと」に囚われて、条件をいくつも重ねていくと、条件に合致する状態でなければ投資ができなくなってしまいます。縛れば縛るほど勝てる可能性も高まるかもしれませんが、それを突き詰めた「必ず勝てる条件」は本当に存在するのでしょうか……。その分、競争率も上がってあなたが必ず投資できるとは限らなくなったりもします。「負けない無敵の投資」にはそぐわないのです。
そこで、取り入れるべきなのはどうしても譲れない部分のみ選択して「この条件さえ満たしていればOK」とする「ブラックリスト」の考え方です。「ブラックリスト的投資」とは条件や基準はあるのですが、「この条件や基準のものは投資しない、それ以外はOK」と考える投資方法です。
例えば、私の不動産投資の場合、絶対に譲れない条件に挙げているのは「築50年以上」「駅徒歩20分以上」「広さ15平米以内の狭小住宅」「エレベーターなしの5Fより上の階」などは投資の対象にしないということです。自分で住んでみたときに「毎日歩いて駅に行くの距離があるな……。家具も増やせないし。重い荷物があるのにエレベーターがないのは嫌だな。何よりオンボロでいつ壊れるか分からないし」と感じる物件はやっぱり入居率も悪く、空室リスクが高いでしょう。反対に「駅徒歩5分以内」「築10年以内」「広さ20平米以上」といった条件は、満たしていればラッキーくらいにしか考えません。
このブラックリストの考え方は「100点を取る」方法ではありません。あくまで、間口を広くして合格点である60〜70点でOKにするという考え方です。ブラックリストを活用して物件を選んでいくと、実は利回りが高いのに見過ごされていた美味しい物件などが浮かび上がってきたりするのです。
◆凡人ならば仕事でも「ブラックリスト」で
この「ブラックリスト」の考え方は、サラリーマンの仕事の仕方にも応用ができます。仕事を一生懸命に頑張り、売上を立て、プレゼン能力を身に付け、MBAを取り、プロジェクトを成功させて、出世を目指すというのは「ホワイトリスト」の考え方です。エリート揃いで減点主義の会社において、この考え方で40年間サラリーマンとして勤め上げるのは相当しんどいのではないでしょうか。全ての項目で100点を目指すとミスが起きる可能性も高くなり、そのミスが発端で「×」が付くと「あいつはココで失敗したダメなヤツ」という烙印を押されてしまいます。
ブラックリストで考えれば「無難にそつ無くこなす」でいいわけです。どの項目においても「✖」が付かないを目指す。「◎」はないけれど代わりに「×」もない。どの領域でも平均以下にならないように気をつけるのです。無理に「◎」になる専門性を身に着けようしなくてもいい。それは「負けない」を目指す考え方になります。専門的な部分は自分ができるようになるよりも、既に詳しい人に依頼すればいいわけです。
ブラックリストの考え方でサラリーマン人生を送ると実は意外と出世できたりもします。管理職の皆さんは仕事を任せる際、「一芸に秀でていても、危なっかしい『×』があるヤツにちょっと任せるのは不安……」と考えて、無難にそつ無くこなしてくれる部下を引き上げたりするものではないでしょうか。
自分自身の判断基準が「ブラックリスト」と「ホワイトリスト」のどちらの割合が多いか。今一度見直して見ると意外な一面が見えるかもしれません。<構成/上野 智(まてい社)>
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【村野博基】
1976年生まれ。慶應義塾大学経済学部を卒業後、大手通信会社に勤務。社会人になると同時期に投資に目覚め、外国債・新規上場株式など金融投資を始める。その投資の担保として不動産に着目し、やがて不動産が投資商品として有効であることに気づき、以後、積極的に不動産投資を始める。東京23区のワンルーム中古市場で不動産投資を展開し、2019年に20年間勤めた会社をアーリーリタイア。現在、自身の所有する会社を経営しつつ、東京23区のうち16区に計38戸の物件を所有。さらにマンション管理組合事業など不動産投資に関連して多方面で活躍する。著書に『43歳で「FIRE」を実現したボクの“無敵"不動産投資法』(アーク出版)