
自動車販売会社の営業課長であるAさんは、いつものように新入社員Bさんが始業時間ぎりぎりに滑り込んでくるのを見て、深いため息をついていました。Bさんの仕事ぶりは決して悪くないものの、Aさんの目には物足りなく映っていたのです。
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営業成績を上げるためには、時間外の顧客対応や自己啓発が欠かせません。しかし、Bさんは定時になると即座に退社の準備を始め、残業をすることはありませんでした。Aさんは自身の若かりし頃を思い出し、仕事に対する姿勢の違いに戸惑いを感じていました。
どうにかBさんを成長させたいAさんは、意を決してBさんとの面談の機会を設け、仕事ぶりについて話をします。しかしBさんの口から出てきた言葉は「現状に満足しています」という予想外のものでした。Aさんは困惑しながらも、Bさんのモチベーションを上げるためにさまざまな提案をしましたが、どれも響かない様子でした。
そんな中、会社の大型商談の話が持ち上がりました。Aさんはこの機会にBさんに奮起してもらおうと考え、彼にその商談を任せることにしました。しかしBさんは「そんな大きな責任は負えません」と断固として断ったのです。
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この出来事をきっかけに、Aさんは現代の若者の価値観について深く考えさせられました。Bさんのような若者を奮起させるにはどうしたらいいのか、キャリアカウンセラーの七野綾音さんに話を聞きました。
ーBさんのような若者を奮起させるにはどうしたらいいのでしょうか
就職活動中の学生と接していて感じるのは、仕事は生きていくためのお金が稼げれば十分という人が大半で、出世や役職を目指してバリバリ働きたいということを言う人は、1%もいないというのが印象です。
お金を稼ぐ手段も仕事だけでなく、投資や趣味をいかした副業でお金を増やすこともできます。また物価が上がっているとはいえ、必死で仕事をしなければ生きていけない状況は少ないため、仕事のウェイトを下げてプライベートを充実させたいという人も多いです。
そのような若者たちには、仕事もプライベートも両方充実させる「ワークライフインテグレーション」についてお話します。仕事は人生の一部なので、仕事も充実している状況を作ることが人生の豊かさに繋がるという考え方です。
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ーワークライフインテグレーションを伝えるにはどうしたらいいでしょうか
まずは経営者なり上司が、自分が取り組んでいる仕事の価値を伝える必要があると思います。どんな想いで目の前の仕事をしているか、自分のやっている仕事が社会にどのような価値を提供しているか、その仕事に取り組むことで実感できる「やりがい」を伝えてあげる必要があります。「お金を稼ぐ、家族を養う」などの働く目的だけではなく、その仕事に取り組んだ先に待っている「やりがい」が、人生そのものに彩りや充実感をもたらしてくれるということも伝えましょう。
若者たちは思っている以上に「やりがい」を通じた成長を求めているように思います。仮に希望の会社に就職できずに、ちょっと違うなと感じている社員であっても、先輩や上司がその仕事の先にある「やりがい」や、どんな思いで仕事に取り組んでいるかを伝え続ければ行動に変化が現れるはずです。
これまでの成功法則は通用しないと考え、若者たちの希望に耳を傾けることが重要です。
◆七野綾音(しちのあやね)キャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント やりがいを実感しながら自分らしく働く大人を増やして、「大人って楽しそう!働くのって面白そう!」と子ども達が思える社会を目指すキャリアカウンセラー/キャリアコンサルタント。
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(まいどなニュース特約・長澤 芳子)
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