写真 女子SPA!で大きな反響を呼んだ記事を、ジャンルごとに紹介します。こちらは、「びっくり体験」ジャンルの人気記事です。(初公開2018年4月5日 記事は取材時の状況)
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売り上げの落ち込みなどによる閉店リスクの高いアパレルや飲食店。いずれも女性が多い職場で、契約社員やパートなどの非正規雇用の従業員は閉店に伴い、職を失うケースも珍しくありません。
九州出身の内田汐里さん(32歳・仮名・福祉関連会社社員)は、3年前まで都内のアパレルショップで契約社員として勤務。同時に不定期ながらスタイリストのアシスタントとしても働いていました。
ところが、業績悪化によるショップの閉店が決まり、契約社員だった彼女の更新も見送られてしまったそうです。
◆30歳目前で失業と失恋のWパンチでどん底に……
「アパレルの仕事がしたくて東京に来たので、給料は安くてもそれなりに満足はしていました。けど、仕事をクビになってしまい、月2〜3回のスタイリストのアシスタントだけでは生活できません。ちょうどその少し前に4年付き合った彼氏と別れたこともあって、精神的にすごく落ちている状態でした」
実は、彼女はもともと地元の老人ホームに勤めていましたが、アパレル業界への憧れが捨てきれず、仕事を辞めてファッション系の専門学校に進学。卒業後、その夢を叶えることができましたが、ショップは正社員への登用制度がありながら叶わなかったこと、さらに30歳目前という年齢的な焦りもあって、地元に戻ることを決めたといいます。
「地元はおばちゃん相手の洋品店がある程度で、アパレル系の仕事に就くことは考えていませんでした。でも、地方なので求人の数も限られていたこともあり、再び老人ホームで働くことにしたんです」
かつての勤務先とは別のホームだそうですが、最初のうちは生活のためと割り切って働いていたとか。実際、当時は「毎日が退屈で仕方なかった」と振り返ります。でも、ここで再び転機が訪れます。
◆入居者に私服のコーディネートを頼まれて…
「ある日、入居者の70代のおばあちゃんから私服のコーディネートをお願いされたんです。その人とは仲が良く、私がアパレル店員やスタイリストのアシだったことを話していたのですが、どんな組み合わせがいいかを考えるのはやっぱりすごく楽しいんです。それで今の職場でこれをやればいいんじゃないかと思ったんです」
スタイリングしてあげたおばあちゃんからは、「30歳若返ったみたい!」と喜ばれ、ほかの入居者からも頼まれるようなったそうです。
「働いていたホームは特養ではなく、民間のケアマンションということもあって元気な方が多かったんです。
そこで入居者のみなさんと隣町にある大型ショッピングセンターやユニクロなどに出かけて一緒に買い物をしたり、私自身ネイリストの資格も持っているので仕事の合間に塗ってあげたりしていました。みなさんすごく生き生きとしていて、その手助けができるのがすごく嬉しかったです」
◆わずか3年で非正規雇用から本社の管理職に!給料が倍増
評判は母体である運営会社が知るところになり、「ほかのホームの入居者にもやってほしい」と言われ、ホームの契約スタッフから正社員に登用され本社勤務に栄転。今では管理職としては一番下ながら主任の肩書が与えられ、わずか3年で非正規雇用から管理職に出世した異例の人物として社内ではちょっとした有名人みたいです。
「少し照れ臭いですけど、一番ありがたかったのは、給料が14万円から27万円と3年間でほぼ倍増したこと。東京で働いていた時は、スタイリストのアシを合わせても月25万円に届かなかったので。おかげで貯金も少しずつできるようになりました」
失意の地元出戻りのはずだったのに、ここまで好転するとは彼女も想像がつかなかったといいます。
「こんなことならずっとホームで働いていればよかったと思うこともありましたが、東京での7年間はムダじゃなかった。クビになったのは残念ですけど、そこで過ごした日々はいい思い出として残っています」
一見、役にも立たなそうな前職の経験ですが、彼女のように異業種で生かしたのはまさに好例。キャリアを生かすも殺すも結局は自分次第なのかもしれません。
<TEXT/トシタカマサ ILLUSTRATION/ただりえこ>
【トシタカマサ】
ビジネスや旅行、サブカルなど幅広いジャンルを扱うフリーライター。リサーチャーとしても活動しており、大好物は一般男女のスカッと話やトンデモエピソード。4年前から東京と地方の二拠点生活を満喫中。