岸田文雄前首相襲撃事件の現場を調べる捜査員=2023年4月、和歌山市 岸田文雄前首相襲撃事件の公判で、木村隆二被告(25)は、動機や自作した爆発物の実験の様子などについて淡々と説明し、「危険性はないと思った」「誰でも逃げられると思った」と一貫して殺意を否定した。
木村被告は2022年、年齢制限のため参院選に立候補できなかったのは違憲だなどとして、国を訴えたが請求は棄却された。公判では事件を起こした動機について「総理大臣のような有名人の近くで大きな音を出せば、世間の注目が集まり、裁判の内容についても報道される」と考えたと説明。「関心を集めるためには、こういうことをしないとどうしようもないと思った」とも語り、事件2日前にも爆発物2個を持って大阪市内まで行ったが、岸田氏を見つけられず、断念したと明かした。
検察側は公判で、爆発物の威力について「人に当たれば致命的だった」と指摘。事件当時、演説会場の聴衆エリアに158人と、岸田氏の周りにも秘書官ら15人がおり、爆発物を投げて岸田氏の足元約1メートルに落としたとし、殺意や加害目的があったと主張した。
一方、木村被告は事件前に自宅近くの山林で行った実験を振り返り「マンションの2階ぐらいの高さに飛んだが、危険性はないと思った」と説明。さらに爆発まで時間がかかるよう作ったとし「投げると煙がたくさん出るので、1分もあれば誰でも逃げられると思った」「けがをさせるつもりはなかった」と釈明した。
被告人質問で、今後について「政治に関わろうとは思っていない」と述べた木村被告。最終意見陳述では、真っすぐ前を見詰めながら「皆さんにご迷惑をおかけし、大変申し訳なく思っています」と謝罪した。