▲合田直弘が海外競馬の「今」を詳しく解説!(c)netkeiba【合田直弘(海外競馬評論家)=コラム『世界の競馬』】
◆3レースの注目馬を紹介
先週に引き続き、22日(土曜日)にリヤドのキングアブドゥルアジーズ競馬場で行われるサウジCナイトの展望を行いたい。
まずは、北半球産4歳以上、南半球産3歳以上による、芝2100mのG2ネオムターフC。ここは、日本から単騎参戦するシンエンペラー(牡4、父シユーニ)中心は揺るがぬところだ。
G1凱旋門賞(芝2400m)こそ12着と大きく崩れてしまったが、G1愛チャンピオンS(芝10F)が勝ち馬エコノミクスから1馬身差の3着、GIジャパンC(芝2400m)が勝ち馬ドウデュースからクビ差の2着というのは、今回の顔ぶれの中では明らかに格上だ。
キングアブドゥルアジーズの馬場は平坦で、雨で路盤が緩む可能性がほとんどないという条件ならば、本来の力を出せるはず、というか、先を見据えてここは8分の出来であったとしても、勝ちを譲ることはないとみたい。
相手は、英国調教馬のスピリットダンサー(セン8、父フランケル)になろうか。昨年のこのレースの勝ち馬で、そのほかG2バーレーンインターナショナルトロフィー(芝2000m)を2023年・2024年と連覇と、中東では馬が変わったように走る馬だ。
実績から言えば、アイルランド調教馬のアルリファー(牡5、父ウートンバセット)もノーマークにはできない。この馬も凱旋門賞は11着と大きく崩れたが、一走前のG1ベルリン大賞(芝2400m)は強い競馬だったし、G1エクリプスS(芝9F209y)でシティオブトロイの1馬身差2着という実績も残している。
規格外の馬場だった凱旋門賞を別物とすれば、本質は渋った馬場の方がよい馬で、キングアブドゥルアジーズの馬場が合うかどうかには、いささか疑問が残る。
続いて、北半球産4歳以上、南半球産3歳以上による、芝3000mのG2レッドシーターフH。
ハンデ戦で難解な一戦。ブックメーカーの前売りでも、オッズ5〜7倍の間に4〜5頭がひしめく大混戦となっている。
3歳6月にロイヤルアスコット開催のG2クイーンズヴァーズ(芝14F34y)を制した際には、その後のこの路線を背負って立つ馬になることが期待されたのがグレゴリー(セン5、父ゴールデンホーン)だ。
4歳時の同馬は、G1グッドウッドC(芝16F)でキプリオスの3着となった競馬はあったが、5戦して未勝利に終わり、消化不良のままシーズンを終えている。昨年のシーズン終了後に去勢されており、これで馬が変われば、大駆けの可能性を秘めた馬だろう。
昨年のこのレースの4着馬で、秋にニューマーケット競馬場のLRローズボウルS(芝16F)を8馬身差で快勝しているアルナイール(セン6)、G1英ダービー(芝12F6y)4着馬で、秋のG1英セントレジャーが3着入線後に4着降着となったデイラマイル(牡4、父キャメロット)らも、本来の力を出せば争覇圏に入る馬たちだろう。
ここに日本から挑むビザンチンドリーム(牡4、父エピファネイア)。GI菊花賞(芝3000m)が、勝ったアーバンシックから約3馬身差の5着で、ダービー馬ダノンデサイルには先着した。
ここで勝ち負けするには、さらに上質のパフォーマンスを見せる必要があるが、60キロを背負ってそれが出来れば、今後の展望が大きくひらけることになろう。
最後に、北半球産4歳以上、南半球産3歳以上による、ダート1800mのG1サウジC。
1月末の段階では、2025年が始まって2カ月足らずで、ダートの頂上決戦が見られる可能性が高かったのだが、2月に入ってから大物の回避が続出。
チャレンジャーの立場で「ここを獲りに行く」はずだったフォーエバーヤング(牡4、父リアルスティール)にとって、「負けられない一戦」に様相が変貌した。
2024年ベストレースホースランキング・ダート部門で、世界4位タイの評価を受けた同馬。昨年のこの開催ではG3サウジダービー(d1600m)を制しており、馬場適性も実証済みだ。
さらなる強敵との対戦が待ち受ける今後へ、期待が膨らむような、強い勝ち方を見せてくれることを願っている。
不気味なのは、2023年10月以降、7つのG1を含む重賞8連勝中と、破竹の快進撃を続けている香港調教馬ロマンチックウォリアー(セン7、父アクラメーション)だ。
暮れのG1香港カップ(芝2000m)を快勝すると、その9日後には香港を飛び立ちドバイに到着。1月24日にメイダン競馬場で行われたG1ジェベルハッタ(芝1800m)をトラックレコードで快勝し、通算10度目のG1制覇を果たした。
そこをステップにサウジCというのは既定の路線。ダートは初めてになるが、母の父に持つストリートクライは、2002年のG1ドバイワールドC(d2000m)を4.1/4馬身差で、続くG1スティーブンフォスターS(d9F)を6.1/2馬身差で制した馬だ。
ダートでも芝同様の強さを見せる可能性があり、そうなると、フォーエバーヤングを手こずらせてもおかしくはない。
ダートの本家・米国の重賞6勝馬で、早めに現地入りし、地元の前哨戦G3カストディアンオヴトゥーホーリーモスクスC(d1800m)を4.3/4馬身差で快勝した、ラットルンロール(牡6、父コネクト)も、力のある馬である。
フォーエバーヤング以外の日本調教馬3頭も、それぞれ本来の競馬が出来れば、いずれも馬券圏内だろう。中では、まだ伸びしろのありそうなラムジェット(牡4、父マジェスティックウォリアー)に期待したい。
(文=合田直弘)