
先日、「子犬を一目惚れ買いしたが、手に負えないと手放した人がいる。なぜ飼う前に調べないのか? 噛む、鳴く、暴れる、家がめちゃくちゃになる…子犬の世話が大変なのは当たり前」という投稿が、X(旧Twitter)で話題になった。
SNSには「可愛いわんちゃんたち」の写真や動画があふれている。
だが、実際の犬との暮らしは、日々の散歩や給餌、排便の始末やしつけ、飼い主としてのマナーの遵守、病気や予防接種・検診、家具などの損傷等、手間も時間もお金も予想以上にかかるのが現実だ。
そんななか、2年間同棲した婚約者と生きることよりも、「柴犬」との暮らしを選んだ20代女性、黒柴くぅ(@kuu_kuroshiba)さんの投稿に大きな注目が集まった。
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元婚約者の「犬に対する態度」に募った不信感
<以下、黒柴くぅさんのXの投稿より>
「私は婚約者と一緒に犬を飼いましたが、彼は犬が来てから思ったより世話が大変だったようで、『もう嫌』と私に世話を丸投げ。ケージから出したら元気過ぎて大変だからとケージに入れっぱなし。彼の犬への態度に不信感が募り別れました。1人でフルタイム勤務での世話は大変だけど良かったと思ってます」
「一方的に振った訳ではなく、彼とはちゃんとこの辺りを話し合った上で、価値観の違いで別れようってなりました。『君も犬が来てからすごく変わってしまった』と言われましたが、個人的には、犬が来たら犬ファーストになるのは当然だったので、やっぱり価値観の違いだなと」
「幸せにする」のが飼い主の責任では?
「元彼からは、『なんで犬にそこまでするの?』『犬だよ?』『自分の子じゃあるまいし』『飼ったのが間違いだった』『自分のことが何も出来ない』『犬に人生壊される』と散々言われました。犬はほぼ自分の子だし、大変でも全力で世話するのが当たり前では?幸せにするのが飼い主だろ。本当に酷いやつだな」
「人間って怖いもので、日常的にこういうことを言われてると、だんだん『あれ?そうなのかな?私が間違ってるのかな?犬にここまでするのはおかしいの…?』ってなってくるんですよ。危なかった。親や友だちが『犬は家族でしょ!』って支えてくれたおかげです。本当にあきらめなくてよかった」
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「最初はしつけも上手くいかず、本当にきつくてもう無理だと思ってどれだけ泣いたかわかりません。でも、徐々に犬との信頼関係も出来てきて、あきらめずに向き合ってきて本当に良かったなと思います。これからも犬を最後まで幸せにするため、がんばります」
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ネット上にあふれる「犬の里親募集」には、「飼い主の病気や死去」「生活の困窮」「家族のアレルギー」などと並び、「離婚」「同棲解消」「引越しや転職」「思ったのと違った」といった、人間の身勝手な理由による飼育放棄が非常に多く見受けられる。
いずれも、犬を迎える前に確認や検査をし、万が一の場合に備えて後見人を探しておくなど、事前に準備出来ることは多い。
「称賛に値する決断」「優しい人は必ずいる」
命を迎えた責任を省みず、「飼ったのが間違いだった」と主張する身勝手な「元婚約者」ではなく、生後9ヶ月になる黒柴犬の男の子「くぅ」くんと暮らすことを選んだ、黒柴くぅさん。
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その決断に、多くの励ましと称賛の声が寄せられた。
「いちばん気持ちが盛り上がる”婚約時”に冷静に判断されたこと、素晴らしいです。人は見たいものだけ見ようとしがちだから」
「称賛に値する決断だと思います。将来、赤ちゃんが産まれたら…赤ちゃんにも嫌悪感を抱き、子育てを丸投げしたと思う」
「ワンコさんの世話でさえ丸投げするような男が人間の子どもの世話なんて、出来るはずがない。赤ちゃんの世話がどれほど大変で、育てる過程でどれほど悩むことか!ワンコさんを一緒に可愛がってくれる優しい人を捕まえるんやで。必ずおるから」
「我が家にも犬がいますが、夫はただの一度も散歩に連れて行ったことないです。ただの一度も。子が赤ちゃんの頃、夫に任せて美容院に行ったら、出掛ける時に玄関で泣いたままでミルク無し、玄関の靴の上でオムツパンパンで寝ていて、夫はゲームしてました…」
「犬も私も幸せになってやります!」
多くの声に対して、「(犬を)飼うまではそんな人に見えなかったので、変わりようが衝撃的でした…。くぅちゃんが気付かせてくれたんだと思って、感謝してます。犬と向き合うなかで良い人が現れると信じてます」「今思うと、彼の本性を教えてくれるために来てくれたんだなと感じています。犬も私も幸せになってやります!」と返信していた、くぅくんの飼い主さん。
信じる道を選んだ彼女に、「命」を預かる覚悟について聞いた。
募っていった「不信感」
ーーくぅくんのお迎えは元婚約者の方も納得していたのですか?
「私は実家で9歳の時から、1歳で保護した豆柴と暮らしていました。ちょうど3年前になくなってしまったこともあり、ずっと犬を飼いたいと思っていて、その気持ちは彼と共有していました。
それで、実際に犬を飼う際に必要な費用や世話の方法などを、一度きちんと知ってから改めて迎える時期を考えようと思い、2人でペットショップに行きました。その際に抱っこさせてもらったのが今のくぅちゃんです。説明を聞くと、費用面も問題なく、世話も各自分担できそうだったため、2人でその場で飼うことを決めました」
ーーくぅくんは元婚約者の方に懐いていましたか?
「懐いている方だったと思います。ただ、柴犬特有かもしれませんが、5ヶ月頃になり自我が出始めた頃から、『私はできるけど、彼がしようとすると怒る』ということが少し増えたと思います」
犬は飼い主を選べない
ーー元婚約者の方のように、「思っていたのと違う」という理由で飼育放棄される犬が後を絶たない現状について、皆さんに伝えたいことはありますか?
「犬を飼いたいと思う時、大抵は大変な部分ではなく、良い部分だけを見がちだと思います。例えば、犬を連れての家族キャンプや、オシャレなバッグに入ったフリフリの服を着た可愛いわんちゃん……。でも実際は、室内でのマーキングがひどくて旅館やホテルに泊まれずキャンプをしているのかもしれません。バッグのなかにいるのは、人間の服やスリッパをボロボロにしたり、誤飲をするからかもしれません。
犬のためなら、旅館やホテルに泊まることや、ペット禁止のオシャレなお店に入ることを我慢できますか? 言葉が通じない犬が悪いことをした時、感情的にならずに、犬が理解してくれるまで根気よく向き合えますか? どうか犬を飼う前に、自分の日常が『犬中心』になっても問題がないかをしっかりと考えてみて欲しいです。犬は飼い主を選べません。その子を選び、命を預かった以上、その子の最後の時まで、幸せな一生を送れるように努めるのが飼い主の責任だと思っています」
可愛くて…幸せです
婚約破棄という大きな決断については、家族や友人も理解を示してくれたそうだ。
「もともと彼の言動に違和感を感じることが多く、日頃から家族や友人に相談をしていました。もしかすると私が気にし過ぎているかもしれず、客観的に見てほしかったからです。ですが、友人や家族も違和感を覚えていたようで、『別れる』という私の決断を後押ししてくれました。両親は引越しの手伝いをしてくれ、友人は『いつでも連れて泊まりに来ていいよ』と言ってくれました」(くぅくんの飼い主さん)
自身の決断を振り返り、「まさか本当に婚約破棄になるなんてね。私へ。大丈夫だよ!別れたら一気に肩の力が抜けて、犬とたくさん過ごせて、すごくすごく幸せになるよ!犬にはすごく優しくできてるよ。別れて良かったよ」と、Xに投稿していたくぅくんの飼い主さん。
「くぅは食いしん坊で元気な子です。パワフルだけど怖がり、寂しん坊なのに触られるのは好きじゃないという、柴犬らしい気難しさもあり、最初の頃は理由がわからず手を焼きました。でも、『これが苦手なんだな』と気付いてからはいっそう愛おしく感じるようになりました。
人間の手は怖くないよー、大丈夫だよーと根気強く寄り添った甲斐があったのか、今は私にくっついて寝てくれたりと、可愛くて可愛くて幸せです」(くぅくんの飼い主さん)
くぅくんは今、週に2回、他のわんちゃんたちと共に犬の社会化やルールを学ぶ「犬の幼稚園」に通っているそうだ。
「犬の幼稚園ではいろんな人に触ってもらう練習をしたり、手足を拭く練習をしています。おやつをあげながらだと全く問題なくできるので、やはり食いしん坊だもんなぁと感じています(笑)」(くぅくんの飼い主さん)
くぅくんとの未来を選んだことで、たくさんの犬好きさんたちとも出会えた飼い主さん。コメント欄には同じく「犬との未来」を選んだ方たちからの経験談も寄せられた。
◇「犬との未来」を選んだ方々の経験談◇
「子どもが出来なくて黒柴を飼いましたが、彼に”運命の人”が出来て離婚し、犬は私が引き取りました」
「私も前から飼っていた犬と、元旦那と結婚後に飼い出した犬の2匹を引き取りました。都合のいい時だけ可愛がって、鳴けば『手放すしかない』と簡単に言う人に任せられなかったからです…」
犬への接し方でわかる「人間性」
「私と全く同じ状況でびっくりしました。ケージに閉じ込め、おまけに去勢手術の日に友達と遊びに行き、『今日泊まってくるかも』と言い出した時には怒りよりもあきれが勝ってしまいました」
「私も似たような感じで、彼の愛犬を引き取りました。愛犬への接し方を見ていて、将来を考えられなくなりました。フルタイムでお留守番が増えてしまいましたが、少しでも一緒にいる時間を大切にしています」
(まいどなニュース/Lmaga.jpニュース特約・はやかわ リュウ)