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セルジオ越後の「新・サッカー一蹴両断」(4)
「世界で最も順位予想が困難」とも言われるJリーグ。開幕節を終えた今季も、やはり大混戦のシーズンとなりそうな気配を漂わせているが、ご意見番のセルジオ越後氏はどう見ているのか? 昨季上位3チーム(ヴィッセル神戸、サンフレッチェ広島、FC町田ゼルビア)の評価を聞いた前回に続き、今回はその他の注目5チームをピックアップ。
【鬼木監督を迎えた鹿島はどこまで我慢できるか】
ちょっと時間がかかりそうだな。昨季5位、鹿島アントラーズの開幕節(vs湘南ベルマーレ)の戦いぶりを見ての率直な感想だ。
久しぶりのタイトル獲得に向け、オフに大きな動きを見せた鹿島。新監督には、川崎フロンターレで黄金時代を築いたクラブOBの鬼木達監督を招聘。さらに、FW鈴木優磨の負担が大きすぎる攻撃陣には、昨季得点ランキング2位のFWレオ・セアラ(セレッソ大阪→)、パリ五輪代表のMF荒木遼太郎(FC東京→)らが加わった。
特に、実績のあるレオ・セアラの加入は大きく、鈴木とのツートップには僕も期待感しかなかったんだけど、開幕節ではいい形でレオ・セアラにボールが渡らず、ほとんどの時間帯で消えていた。どうしちゃったんだ? という感じ。また、チームとして見ても、攻撃の形をつくれずに苦労していた。
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鬼木監督は川崎時代同様にポゼッション率の高いサッカーを目指しているのだろう。この試合の選手たちのプレーにもそういう姿勢が見えたけど、パス回しはぎこちなかった。ただ、監督も選手も変わったわけで、最初に言ったように、ある程度の時間がかかるのは仕方がないと思う。
それを理解したうえで、どこまで我慢できるか。ここ数年の鹿島は毎年のようにコロコロと監督を変えている。また、鹿島のサポーターは、川崎のサポーターみたいに「負けてもドンマイ」という感じではないからね。
【東京Vは今季もそこそこやる】
一方、補強効果が早速見えたのが浦和レッズだ。例年同様、オフに多くの選手を獲得したけど、そのなかでもMFマテウス・サヴィオ(柏レイソル→)は別格。新加入なのに、すでに攻撃を完全に仕切っている。チームに及ぼす影響力という点では、(2005年から2011年まで在籍したMFロブソン・)ポンテ級のインパクトがある。
となると、あとは彼がお膳立てしたチャンスをチームメイトがどれだけ決められるか。開幕節の神戸戦では決めきれなかったよね。その意味で、シーズンのカギを握るのは、ワントップを務めるFWチアゴ・サンタナだ。昨季は二ケタの12得点を挙げたけど、勝利を決めるようなゴールは少なく、絶対的なエースとは言えなかった。実際、ベンチスタートの試合も多かった。でも、同じブラジル人のサヴィオとは意思疎通がしやすい。少なくとも今季は昨季以上のゴールを求めたいね。
浦和が優勝を狙えるかというと、ポジションごとの選手の人数バランスが悪いのが気がかり。特に両サイドバックが手薄。ただ、少なくとも昨季(13位)のようなひどいことにはならないよ。リーグの盛り上がりを考えても、頑張ってもらわないと困るチームだ。
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個人的に昨季の一番のサプライズだった東京ヴェルディ(6位)は、開幕節(vs清水エスパルス)に負けたものの、今季もそこそこやってくれるはず。
予算規模の小さいチームだけに、オフに主力選手をごっそり引き抜かれてしまうのかと思っていたけど、主将のMF森田晃樹をはじめ、そのほとんどが残留した。城福浩監督のもとでやるサッカーに、選手たちがそれだけ魅力を感じているということだろう。攻撃のアクセントとして、今後、外国籍選手をひとりかふたり加えられれば、昨季以上の驚きを見せられるかもしれない。
ただし、残念ながら、今の東京Vのフロントにそこまでの野心はなさそう。お客さんも着実に増えていて、「ヴェルディ」ブランドの根強さを感じるし、チャンスだと思うんだけどね。
その他のチームでは、毎年のように主力を引き抜かれながらも、見ていて面白いサッカーをして、J1残留を続けているアルビレックス新潟には、樹森大介新監督を迎えた今季もなんとか頑張ってほしい。
また、昨季19得点を挙げたFW山田新や、日本代表デビューを果たしたDF高井幸大といった下部組織出身の若手が台頭してきた川崎も、長谷部茂利新監督のもとで勝ちグセがついてきたら面白い。もっとも、そのふたりが活躍しすぎると、夏にも海外移籍してしまうかもしれないから、サポーターとしてはジレンマだね。
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