農林中金、「再起」強調も課題山積=管理体制強化や運用多様化

0

2025年02月21日 09:02  時事通信社

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

時事通信社

記者会見に臨む農林中央金庫の奥和登理事長(左)と北林太郎次期理事長=20日午後、東京都中央区
 巨額の運用損失を出した農林中央金庫の奥和登理事長が辞任する。来年度の黒字化にめどをつけたとして、奥氏は「再起の準備が整った」と強調する。ただ、リスク管理体制強化や運用先の多様化など、赤字を招いた課題の解消はこれから。新体制の前途は多難だ。

 農中の理事長の引責辞任は、リーマン・ショック後の2009年に辞めた上野博史氏以来。当時は市場混乱による経営悪化で09年3月期の純損益が5000億円超の赤字に陥ったが、25年3月期は、これをはるかに上回る1兆9000億円の赤字を見込む。

 この事態を招いた主因は外債運用への過度な依存だ。農中はこれまで、90兆円超の総資産のうち過半を有価証券で運用。その5割超は債券で、多くを米国債など外債が占めてきた。だが、海外金利の急上昇に機動的に対応できず、含み損が拡大。収益が圧迫され、損失確定に追い込まれた。

 農中はリーマン時に証券化商品などの減損処理を迫られた反省から、安全資産とされる米国債などへの依存を深めてきた。今回はその硬直的な運用が裏目に出た格好だ。

 農林水産省の有識者会議は先月まとめた報告書で、農中の運用やリスク管理体制に関し、権限や責任が不明確で「十分に機能しなかった」と指摘。資産の分散投資も提言した。

 これを踏まえ農中は、組織体制の見直しに加え、運用先を国内外の債券や株式のほか、よりリスクが高い証券化商品などに分散させる方針を表明。次期理事長の北林太郎常務執行役員は「教訓を生かし、(証券化商品投資などに)もう一度チャレンジしてみたい」と語る。しかし、再び市場が混乱した場合、損失を回避できるかは不透明だ。

 一方、報告書は、現状は規模が小さい農業や食品産業への融資、出資の拡大も促した。農中は「これまで以上に積極的に取り組む」と説明したが、実が伴わなければ「農林水産業発展への寄与」を設立目的とする農中の存在意義そのものが問われそうだ。 

記者会見する農林中央金庫の北林太郎次期理事長=20日午後、東京都中央区
記者会見する農林中央金庫の北林太郎次期理事長=20日午後、東京都中央区
    ニュース設定