
「学会で出した小腸ペンです。」
「X」に投稿された、驚くべき「ペン」の動画が大きく注目を集めました。そこにはすべるように動くペン先からみるみるうちに描かれていく人間の「小腸」のデジタルアートが映っています。
動画の表示数は記事執筆時点で1302.4万回を超え、「いいね」は8.5万件つき、「素晴らしい!シンプルに美しいです!やり方知りたい!」「発想がエグいですね!最高です!!」「小腸を超伸ばし放題じゃないですか!」などと、絶賛の声が相次ぎました。
投稿者の「だーいし」(@daaishi_obk)さんは30代の外科医師でiPadにてデジタルアート手術記録を作成し、自身のInstagramに投稿しています。
|
|
だーいしさんに詳しい話を伺いました。
腸や血管を「一筆描き」
「外科医はカルテに手術記録を書くとき、何枚かスケッチを描くのが一般的なんですが、最近はデジタルイラストで作成する外科医が増えてきています」というだーいしさん。
その理由について「デジタルのメリットは効率よくクオリティの高いイラストを作成できるところです」と説明し、「私はさらに効率良くスケッチを作成する方法を模索している中で、デジタルイラストアプリのブラシ設定ができるところに着目しました。『これをうまく設定したら腸や血管を「一筆描き」できるかも。。。』と思いつき、まずは小腸ペンを作ってみました」と制作の経緯を教えてくれました。
小腸の”うにょうにょ感”を再現
ちなみに、このようなペンブラシはほとんどのお絵描きアプリでブラシ設定できるのだという、だーいしさん。制作について聞いてみました。
「作るのはアプリの設定をいじるだけなので非常に簡単で、そんなに時間もかかりませんでした」
|
|
「実際に作ってみると、想像以上に小腸の”うにょうにょ感”が再現でき、非常にクセになるペンになりました。こだわった点は3D風の小腸にしたことと、表面を滑らかにしすぎず少しザラついた感じに仕上げてるのでよりリアルにしている点です」
学会での反応は
ポストには「ペンの機能がすごくて話が入ってこないかもしれない」といった内容のリプライもありましたが実際の学会での反応はどのようなものだったのでしょうか。
「学会ではまずくすくす笑いが起きました(笑)。一応学会では手術記録を効率良く描くツールとして、昨今の働き方改革にも貢献できる点を強調しましたが、効率性とかより面白さのインパクトが勝ってしまったようでした(笑)。発表後に『それどうやって作るの?』と多くの方に興味を持ってもらえました」
医療関係者以外からも反響
学会にて医療関係者たちの心をがっちりつかんだ「小腸ペン」が「X」ユーザーをも多数魅了したことを喜ぶだーいしさん。
「医療関係者以外からも多くのポジティブな反響をいただいたので驚きました。『おもしろい』『欲しい!』『天才!』など多くの方に言われて嬉しかったです。『実用性ピンポイントやろ!』『ニッチなペンだなぁ』『コレは!使えそう…いつ?』などといったコメントも多くて全くその通りだなと思いました(笑)。僕は日常業務で使ってるんですけどね」
|
|
確かに一般人にとっては今すぐ使う機会はないかもしれませんが、医師であるだーいしさんを始め医療関係者には役立つであろうことが容易に想像できるペンブラシの発明でした。しかし、その動きの面白さ、普段見ることのできない内臓の形状をクリアに可視化できることを考えると、この先たとえば教育の場などでの活用もあり得るかもしれませんね。
「血管ペン」も!
現在、「小腸ペン」以外にも「血管ペン」も制作、学会で実演しているだーいしさんは、これらのペンを今後どんなふうに活用していきたいかについて「血管ペンもそうですが、他の『臓器一筆描きペン』もどんどん作っていきたいと思います。今はアプリを工夫して使用している段階ですが、将来的には手術記録や解剖イラストに特化したアプリとかが出てきたらいいなと思っております」と話しています。
(まいどなニュース特約・山本 明)