NECが自治体向けに提供する、災害時に住民の安否確認を支援するアプリのイメージ画面=1月21日、東京都多摩市 高齢者や障害を持つ人など災害時に支援が必要な人たちの逃げ遅れをなくそうと、IT技術を活用する取り組みが広がり始めている。紙の書類が中心だった安否確認や避難状況の管理をデジタル化。「1人暮らし」といった生活環境を把握しているケアマネジャーなどの支援者と自治体が連携しやすくし、早期避難を後押しする。
NECや防災・減災関連の助言業務を手掛ける東京海上レジリエンス(東京)などは1月下旬、東京都多摩市と、災害時の要支援者の安否確認に関する実証実験を行った。自治体による避難情報が発令されると、支援者のスマートフォンに安否確認依頼の通知が届く。支援者は専用アプリを通じて要支援者に安否確認の電話をしたり、被災状況や避難場所を登録・管理できたりする。
多摩市によると現在、要支援者個々の情報管理は、市町村が努力義務として作成している「個別避難計画」を含めて紙が中心。このため避難情報の伝達や情報集約に時間がかかっていたが、「データ化で大幅に効率化できる」(防災安全課)と期待を寄せる。実証に参加したケアマネ・介護福祉士の沼田真也さんは「紙の資料を持ち歩かなくてもよくなり手間が減る」と話した。
災害時のデジタル活用は徐々に広がる。NTTアドバンステクノロジ(東京)は4月から、災害時に避難するタイミングを住民一人ひとりに通知するサービスを、防災情報配信サービスの機能として提供。デジタル身分証アプリを手掛けるポケットサイン(東京)は、宮城県と連携し避難指示などの情報通知や避難所の受け付けが簡単にできるスマホ向けアプリを昨年11月から住民向けに配信している。NECの避難支援サービスは大阪府和泉市などが今春導入予定だ。
ただ、こうした民間が提供するサービスには自治体の予算が付きにくいのが現状という。あるIT業者は「国が補助金を出すなど思い切った施策が必要かもしれない」と訴えている。