懐かしの駄菓子袋が、トヨタ86“北米モデル”のボンネットに! まさかの製法&「100万円でも売れない」職人のこだわりとは

0

2025年02月22日 17:40  まいどなニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

まいどなニュース

遠くから見てもインパクト大のカスタマイズ

車のカスタムの一つにエアロパーツがあります。FRP(繊維強化プラスチック)でできたエアロパーツを装着したり、純正品と交換したりすることで、見た目のドレスアップだけでなく、機能性の向上も期待できるのです。特に重いボンネットをFRPにするのは軽量化やエンジンルームの熱を逃す効果もあるため、メーカーは独自のデザインで製作したボンネットを販売しています。

【写真】隙間なく貼られた“懐かしの駄菓子袋”の衝撃…ボンネットをアップで見る

ところが、昭和世代には懐かしい駄菓子である、『ベビースターラーメン』『どんどん焼き』『キャベツ太郎』『うまい棒』などの袋が貼られた謎のボンネットを「TOKYO AUTO SALON2025」の会場で発見しました。同イベントは毎年1月に開催される、カスタムカーやチューニングカーの国内最大規模の自動車イベントであり、今年は昨年を上回る25万8,406人もの来場者数があり、海外の参加者、出展者も目立ちました。

このユニークな駄菓子袋ボンネットを製作したのは、エアロパーツメーカーである株式会社エースで、ブース担当者に話を伺いました。

――そもそもなぜ、ボンネットに駄菓子袋を貼ったのでしょうか?

「当社はD1グランプリ(ドリフト競技)でも使用される、サーキット走行にも耐えうるエアロパーツを製作しています。年に一度の祭典であるTOKYO AUTO SALONで、ご年配(クルマ世代)の方が懐かしく思ってくれるように、駄菓子袋を使ったボンネット製作を社内会議で決定しました。どういう駄菓子を選ぶのか、配色も考えて貼りました」

駄菓子袋に無数の穴が開いている理由

――駄菓子袋は重なっていますがボンネットの表面は凹凸がありませんね。

実際の駄菓子袋を何枚も貼り合わせて製作しているのですが、凹凸がない理由は、すでにあるボンネットの上に貼っているのではなく、ボンネットそのものをFRPで最初っから作っているからです。

通常、FRPでエアロを作る場合は、最初にボンネットの型を作ります。ボンネットの型ができたら、型から樹脂を外しやすくするために離形剤を塗布して、そこに樹脂コーティングのゲルコートを塗ってから強化材であるガラス繊維を貼って、さらに樹脂で固めていき、樹脂が硬化したら型から取り外すのです。そのため型に面している部分がボンネットの表面になり、ボンネットの表面から作るため凹凸はないのです。

この駄菓子袋が敷き詰められたボンネットでは、ゲルコートを塗布したあとに駄菓子袋を裏側にして貼り付けています。

――よくみると駄菓子袋に穴が空いていますが?

駄菓子袋をそのまま貼ると樹脂が駄菓子袋の表面にまで行き渡らないため、複数の穴を空けています。一度に複数の穴を均等に空けることが大事ですので、道具もこの駄菓子ボンネットのために自作しました。

また、そのあとにガラス繊維を貼り付けていくため、駄菓子袋がめくれていたり、シワがよっていたりするのを目視できません。そのため慎重にローラーやハケで伸ばして気泡が入らないようにしていく必要があるのです。駄菓子袋が紫外線でどう劣化するのかも予想できないため、UVカット効果があるゲルコートを使って、最後には真空処理を施しています。

――製作するにあたってなにが一番大変でしたか?

「構想から1カ月で作ったのですが、実は思った以上に駄菓子を食べるほうが大変でした。それに、スナック菓子が多いため内側は油がベッタリとついているから慎重に脱脂しました。また、やっかいだったのが、駄菓子袋によって素材や厚み、サイズが違うため、樹脂を塗ったときに角が丸まってしまい、そのめくりあがりにも差があったことです。そのため当社で製造しているボンネットに比べて数倍の時間がかかるため量産化は無理ですし、これを作るメーカーも少ないでしょう。

駄菓子袋ボンネットを装着していたのはトヨタ86の北米モデル

この駄菓子ボンネットが装着された車のベースは、トヨタの北米ブランドである、かつて存在した「サイオン」から販売されていた「FR-S」。FR-Sはトヨタ86やスバルBRZの兄弟車ですが、左ハンドル車です。それに同社のエアロブランドである「ORIGIN Labo.」の「ORIGIN Labo.StreamLine」のエアロキットをまとい、駄菓子袋をあしらった「復刻PRINT MAGGIC BONNET」を装着。エンジンはターボ化されてロールバーが組んであるドリフト仕様になっています。

駄菓子袋ボンネットは4〜5人がかりで製作されていて、「100万円でも売りたくない」ほどの思い入れの詰まった逸品だそうです。同社では綿生地を表面に貼ったボンネットも製造しており、今後も新たな素材や技術を用いた独創的な作品がTOKYO AUTO SALONに登場することでしょう。

(まいどなニュース特約・鈴木 博之)

動画・画像が表示されない場合はこちら

    ニュース設定