JR東日本は、慢性的な赤字が続いているローカル線・久留里線の一部を廃線にする方針を発表した。久留里線は千葉県の房総半島の中央部、木更津駅から上総亀山駅までを結ぶ鉄道路線。そのうち、利用者が少ない久留里駅〜上総亀山駅間を廃線にし、バス転換するという。具体的な配線の日時は未定であるが、今後自治体などの協議の上、決定するものと思われる。
久留里線といえば鉄道漫画ブームの先駆けとなった『鉄子の旅』(横見浩彦・菊池直恵/著、小学館/刊)にたびたび取り上げられている路線としてもおなじみだ。というより、この漫画のなかでは最重要な路線と言ってもいい。というのも、記念すべき第1話で登場した路線が何を隠そう久留里線だからだ。
『鉄子の旅』は、鉄道にまったく興味がない漫画家の菊池直恵が、トラベルライターの横見浩彦に日本中連れ回される…というエッセイ漫画であり、ギャグ漫画でもある。漫画のなかで案内人役を務める横見は、国内にある鉄道のすべての駅で乗下車をした筋金入りの“鉄ヲタ”として有名だ。
そんな横見が全駅乗下車の楽しみを手軽に味わえる路線として選んだのが、久留里線なのである。都心から近く、駅数も全14駅と多過ぎず少なすぎないのがちょうどいい。そのため、初心者でも久留里線の全駅で乗下車は十分に可能なのだ。何より、横見の久留里線への愛情は特別なもののようである。
というのも、『鉄子の旅』の連載終了後、漫画家が菊池からほあしかのこに交替して『新・鉄子の旅』が連載され、その後も漫画家が霧丘晶に交替して『鉄子の旅3代目』が始まったが、いずれの作品でも第1話に登場するのが久留里線なのである。やはり、全駅で乗下車し、担当する漫画家が横見から鉄ヲタ道の洗礼を受けるのが鉄板になっている。
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今回、久留里線が部分的に廃線になれば、『鉄子の旅』と同じルートで旅をすることが難しくなってしまう。もっとも、時代の流れは早いもので、『鉄子の旅』に登場する路線や列車で既に廃線になってしまったものは多い。特に、『鉄子の旅』にたびたび登場している寝台特急や夜行快速列車などはほぼ消滅してしまっているのが残念だ。
今後、鉄道会社は不採算廃線の廃線に向けた協議を加速させるという予測もある。実際、少子化や過疎化などの影響で、ローカル線は維持が困難になるケースが増えてくるはずだ。10年後、日本の鉄道はどうなっているのだろう。このままでは、『鉄子の旅』は鉄道がまだまだ元気だった時代を記録した漫画として、資料的価値の面でも貴重な作品になってしまいそうである。
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浴槽を「着脱」新発想の浴室(写真:ITmedia ビジネスオンライン)175
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