バイト中にグラスが刺さり、左目をほぼ失明 19歳で絶望…それでも海外での経験が「人の痛み」に気づく転機に “片目シンガー”が伝えたいエール

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2025年02月22日 18:50  まいどなニュース

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かたのめいさん

痛みを知ったからこそ、人の痛みに寄り添う歌を届けたい――。そんな思いを抱き、“片目シンガー”として活動する、かたのめいさん(@katamesong)。

【写真】青紫色になった左目…傷を負った見た目は元に戻りませんでした

めいさんは19歳の頃、左目の視力をほぼ失い、一時は生きる気力を失ったそう。だが、ひょんな気づきを得たことから海外ボランティアに参加し、心境が変化した。

バイト先でグラスが目に刺さって

片目を失ったのは、19歳の頃。働き始めて3日目だったアルバイト先の飲食店で掘りごたつがある個室のグラスを片付けようとした際、掘りごたつがあることを忘れ、バランスを崩し、グラスが左目に刺さった。

「グラスは、顔と壁の間に挟まれる形になりました。眉下あたりにグラスの破片が刺さり、流血。深夜に救急搬送となったんです」

病院では傷口を縫い、光を当てて目の検査を行った。すると、見えないことに気づく。

医師からは、大きな病院の受診を勧められた。すると、眼球破裂や網膜剥離が起きていることが判明。眼球を縫うなど2回の手術を行ったが、左目の視力や目の見た目は元に戻らなかった。

「当時は世の中的にルッキズムの風潮が強かったので、片目が見えなくなったことよりも見た目が変わったことが受け入れられませんでした」

突然、背負うことになった障害により、社会の見え方も変わる。当時、専門学校へ通っていためいさんは眼帯をしていると目立つことから、人前に出ることが怖くなり、学校を退学。友人から心配のメッセージが届いても、「心の中では不幸を笑っているのでは…」と疑心暗鬼になった。

片目での生活が始まった当初は電車に乗る際、体が不安定になったり、駅の階段で転んだりと日常生活も大変だったという。

「当時は心が辛かったので、誰も助けてくれないことが苦しくて、人は冷たいと思っていました」

他人の困りごとに無関心だった自分に気づき

片目の視力をほぼ失ったことで孤独感を知り、人生のどん底だっためいさん。しかし、周りを見渡した時、ふと思った。片目をなくしただけで、こんなにも生きるのが辛くなるのならば、世の中にはもっと辛い思いをしている人がいるのではないか。そして、自分もそうした人たちの痛みに無関心だったのではないか、と。

「いじめや差別、ニュースで見る戦争や難民問題、障害を持つ方が抱える問題などはどこか他人事でした。私だって人の痛みを見て見ぬフリしてきたし、他人に手を差し伸べてこなかったな、と」

その気づきを得ためいさんは自分にできることを考えるようになり、大胆な行動に出る。なんと、海外ボランティアとして2週間アイスランドへ行こうと決心。幼少期に歌手を夢見たことがあるほど歌うことが好きだったため、音楽で現地の人々を笑顔にしたいと思ったのだ。いつ死んでもいい。そう気持ちもあったからこその行動力だった。

ボランティアとしての活動内容は、異文化交流と募金活動。現地では、ボランティア仲間とシェアハウス。英語も話せず、コミュニケーションを取ることが怖く思えた。

だが、せっかく来たのだから…と自分を奮い立たせ、ジェスチャーや片言の英語でコミュニケーションを取ろうと奮闘。すると、ボランティア仲間はめいさんが片目になった理由を親身に聞いてくれ、「歌で人々をハッピーにしたい」という夢も好意的に受け止めてくれた。

「自分を受け入れてもらえたと感じました。人って冷たいと思っていたけれど、理解できれば、分かり合うことができると学びもしました」

海外ボランティアを通して障害の受け止め方が変化

その後も、めいさんはバイトを3つかけもちするなどしてお金を貯め、10カ国もの国へ。現地を訪れる中で知ったのは、自分には社会問題を根本的に解決することができないというもどかしい事実。

「そう実感したからこそ、それなら私は歌の力でみんなを笑顔にしたいと、より強く思うようになりました」

海外ボランティアをする中では、価値観も変わっていったそう。特に衝撃を受けたのは、ストリートチルドレンに音楽や日本語などを教えるため、インドネシアへ行った時のこと。自分の目で「貧困」を見て、幸せの意味を考えさせられた。

「それまで私は、お金がない=辛いだけと思っていました。でも、そうじゃなかった。当時は金銭的に苦しく、睡眠時間もあまりとれていない生活だったので余計に現地の人たちの暮らしが心に刺さり、まずは自分が幸せにならないと人にエールは届けられないと学びもしました」

現在、めいさんは事務職に従事。片目での事務作業で目が酷使されるため、仕事の合間には目のストレッチを行い、帰宅後にはアイマスクを使用するなどし、ケアをしている。

「左目はほぼ見えず、見える一部にはモヤがかかっている状態。左側から話しかけられると驚くので、右側から話しかけてもらえたらありがたいです」

事務仕事と並行して行っているのは、障がい者・難病者専門の総合芸能プロダクション「株式会社ココダイバーシティエンターテイメント」でのタレント活動。SNSでは自身の障がいや歌への想いなどを積極的に発信している。夢に向かって行動する中で少しずつ仲間が増えてきたことで活動により力が入り、夢の実現が見えてきた。

「障害者と聞くと、身構えてしまう人がまだまだ多い世の中なので自分の知名度をあげていき、障害を持つ人の暮らしを知るきっかけを作りたい。様々な障害を持つ方が活き活きと生きられる社会にしていきたいです」

片目に障害を持ったからこそ、“目立つ見た目”を活かして人前に立ち、歌や想いを届けたい。広い世界を見ためいさんは、障害をそう受け止められるようになった。

「片目になったことで得られた出会いが、たくさんありました。怪我に感謝だよ、と今なら19歳の自分に言える」

そう語るめいさんはかつての自分と同じく、中途障害者となり、先の生き方が見えないと絶望する人に温かいエールを送る。

「できていたことができなくなってしまったり、周りと比較して自分の価値がなくなってしまったんじゃないかと感じたりして、不幸ばかりを数えてしまうこともあると思う。でも、不幸の中でも得られたものは、たくさんあるはず。いつか死ぬ時に人生最低の出来事を人生最高の出来事だったといえる日が来るよう、一緒に頑張りましょう!」

新しい小さな幸せを数えながら小さな夢を見つけ、それらをひとつひとつ叶えていくことは、生きがいに繋がる。そう語るめいさんは今、デビュー曲となるオリジナルソングを制作中。

見えない痛みを抱える人や何かが欠けてしまった心を埋めたいという想いを込めたエールソングは、多くの人に響くはずだ。

(まいどなニュース特約・古川 諭香)

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  • 女さんがワイら弱者男性やチー牛の痛みを理解できるとwww そこまでして承認欲求が欲しいか!
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