【フィギュア四大陸・男子】壷井達也、ほろ苦い世界デビュー 代表の重圧を「乗り越えないといけない」

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2025年02月23日 10:30  webスポルティーバ

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 ミラノ・コルティナダンペッツォ五輪のプレシーズンとなる今季、22歳の壷井達也は、遅咲きの花を開かせ、世界デビューへの道を切り開いた。

 昨年11月、グランプリ(GP)シリーズで唯一出場したNHK杯で3位と躍進して初表彰台に上ると、12月の全日本選手権でも初表彰台となる3位となり、来月、アメリカ・ボストンで開催される世界選手権の代表の座をつかんだ。今季、さまざまな"初体験"を経験してきた壷井にとって、世界選手権の前哨戦となる初出場の四大陸選手権は、自分の力がどこまで通用するかを見極める大事な一戦だったに違いない。しかし、世界に通じる道には大きな壁が立ちはだかっていたようだ。

 20日に行なわれた男子ショートプログラム(SP)は、及第点の演技でまとめたが、大きな武器となる冒頭の4回転サルコウで転倒して得点が伸びず、78.07点の6位と出遅れた。

「世界選手権前の大事な試合なので、ノーミスの演技をしたかったし、4回転サルコウを跳んでおきたかったなという気持ちはあります。ただ、今日(20日)の朝の公式練習から、なかなかはまらないジャンプが増えていて、6分間練習で修正しきれたかなと思ったんですけど、ちょっと崩れていた部分が本番に出てしまっていたかなと思います。

 冒頭の4回転サルコウを転んでちょっと焦りはしましたが、それ以外のエレメンツでは練習から不安要素とかはまったくないので、いつもどおりやることを心がけました。NHK杯、全日本からジャンプ以外の部分をしっかり練習してきたので、ジャンプを1本ミスったとしても、それをカバーできるようなほかの質の高いスピンやステップができたんじゃないかなと思います。4回転サルコウをミスしたなかではいい点数をもらえたのかなと思います」

 試合で跳んだ4回転ジャンプはサルコウの1種類だけで、この大技ジャンプもまだ完成形には至っていない。試合や時期によって安定感が左右されている状態だという。それだけまだ伸びしろはあるのだが、試合本番で得点源となる4回転ジャンプを跳びきらなければ勝負にならないことは言うまでもない。

【「緊張で足に力が入らなかった」】

 本人もそれを痛感したようで、「4回転サルコウを、いつ何時でも跳ばないといけないということを思い知らされました。世界選手権に向けてSPをしっかりまとめる力をつけていきたい」と振り返った。

 SPで見えた課題と反省を踏まえた臨んだ22日のフリー。転倒こそなかったものの、冒頭の4回転サルコウの連続ジャンプで、ふたつの3回転トーループの前にオーバーターンが入ってしまう。さらに2本目の4回転サルコウの着氷が乱れ、トリプルアクセル(3回転半ジャンプ)も着氷が詰まって前のめりになるなど、GOE(出来栄え点)で大きな減点となった。プログラム後半のジャンプはしっかりと跳んでGOE加点もされたが、上位争いには一歩及ばない156.86点にとどまった。合計でも234.93点と自己ベスト(昨年のNHK杯での251.52点)にも遠く及ばず、総合5位に終わった。

 結果を出すことができなかった世界デビュー戦を、壷井はこう振り返った。

「SP、フリーとも今まで以上に緊張して、特にフリーは緊張して足に力が入らなくて、いつも以上に体力を奪われる試合でした。NHK杯や全日本は挑戦者という立場で、言い方は悪いんですけど、『勝てたらいいな』という気持ちで臨んでいたんですけど、やっぱりこの試合は、これまでの自分の注目度としては全然違いますし、結果を求めて臨む試合だったので、やっぱり緊張をすごく感じました。

 もっといい演技ができていれば表彰台も狙えたなと、結果を見て思うので、やっぱり悔しいです。大会前の練習ではSP、フリーともに追い込んではきましたが、100%の自信があったかというと、そうではなかったので、やっぱりもっとちゃんと仕上げて臨みたかったなと思います。NHK杯のときは本当に絶対できる自信があったので、そういった状態にもっていかなかったなと思いました」

 世界デビューの切符を手に入れた昨年末の全日本選手権までの自分と、世界選手権代表となったいまの自分は「気持ちの面では本当に全然違うと感じています」と言う。肩書を得たことによって自負心も芽生え、責任感とそれに伴うプレッシャーは、想像をはるかに超えるものだったのかもしれない。

「選んでいただいたからには、絶対にこのプレッシャーだったり、オリンピックの枠取りがかかる重圧だったりを乗り越えていかないといけないと思っています。自分自身、まだ世界選手権自体を経験したことがなく、枠取りも初めてなので、いままでに感じたこともない緊張感や重圧を感じるのではないかと予想できます。

 今回の四大陸選手権に向けて、ここまで追い込んできてもダメだったので、(世界選手権までの)この1カ月間でどんな状態、どんな重圧がかかっても、最高のパフォーマンスが本番で披露できる練習と準備をしていくことに尽きると思います。世界選手権では絶対プレッシャーがかかるので、それは『そういうもんだ』と思って受け入れて、プレッシャーがかかった状態でもやりきる力をつけたいなと思っています」

 年齢的にも背水の陣を敷く覚悟があるからこそ、追い込まれたなかで結果を残してきたと話す壷井は、さらに重圧がのしかかってくる初めての世界選手権に向けて、目標と意気込みを語ってくれた。

「オリンピックの3人枠をしっかり獲得したいのがひとつと、自分自身のスコアをもっと上げることによって、来シーズンに(選考が)あるオリンピック代表に近づけるように演技したいと思います。世界選手権ではしっかりと自分の力を発揮したいなと思います」

 優しい笑顔ながらも引き締まった表情を見せる挑戦者が、そこにいた。

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