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早くも3年が経とうとしている、ロシアによるウクライナ侵攻。アメリカとロシアが急接近する一方、トランプ氏はゼレンスキー大統領の批判を繰り返します。“停戦交渉”に進展はあるのか。専門家は、「戦争は決して終わるという風にはみえない」と指摘します。
トランプ氏のゼレンスキー氏批判 ヨーロッパ諸国からも警戒感2月19日、アメリカのトランプ大統領の言葉に、またも世界が驚かされました。
トランプ大統領(19日)
「そこそこ成功したコメディアンのゼレンスキーは、アメリカに3500億ドル(約53兆円)を費やすよう説得し、勝てない戦争、始める必要のなかった戦争に突入させた」
まるでウクライナが戦争を始めたかのような言い方をして、ゼレンスキー大統領を批判。その前日には…
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トランプ大統領(18日)
「ウクライナの指導者は、言いたくはないが支持率は4%にまで落ちている」
実際は2月の世論調査で、ゼレンスキー氏を「信頼する」と答えた人は57%に達しています。
18日にはサウジアラビアで、ウクライナでの戦闘終結に関する米露の高官協議も行われました。
ロシアのプーチン大統領はその協議を高く評価した上で「久しく会っていないし、喜んでドナルドに会うよ」と、トランプ大統領との会談を待ち望む発言をするなど、米露の接近ぶりがうかがえたのです。
かたやゼレンスキー氏は、米露主導で停戦の話が進む状況に…
ゼレンスキー大統領
「ウクライナ抜きのいかなる合意も認めない」
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同じく、ヨーロッパ諸国からも警戒感をあらわにする声が…
ドイツ ショルツ首相
「独裁的に決まった和平を、ウクライナが受け入れさせられるということがあってはいけない」
ウクライナやヨーロッパ各国が懸念を抱いているのは、領土割譲を認めるようなロシアに有利な停戦合意です。
トランプ政権からは、ウクライナの領土に関する見通しについて、厳しい発言が出ていました。
アメリカ ヘグセス国防長官
「ウクライナを2014年(クリミア併合)以前の国境に戻すことは、非現実的だと認識しなければならない」
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こうしたアメリカの姿勢に、ウクライナの市民からは失望の声が…
市民
「ウクライナは裏切られたように見える。トランプ氏の発言などからはウクライナにとっての利益が全く見えない」
「トランプ氏は代替案を持っていると言う人もいるが、それはウクライナのためにならない」
厳しい戦況に立たされるウクライナ。その現実を前に、徐々に市民の間にも変化が起きています。
世論調査によれば、「いかなる状況においても領土放棄は認められない」と答えた人が、侵攻3か月後には8割(82%)を超えたものが、最近では半数程度(51%)に下落しています。
そうした中、米露主導による停戦交渉は、ロシアの「力による現状変更」を容認する方向に進みつつあるようにみえます。
専門家「戦争が終わるようにみえない」 繰り返される“大国の侵略”大国の侵略に小国が辛酸をなめる事態は、これまでの歴史で幾たびも繰り返されてきました。
第二次大戦中だけでも、ナチスドイツとソ連によるポーランド分割。あるいはソ連によるフィンランド侵攻、いわゆる「冬戦争」でフィンランドは国土の10分の1を失っています。
大国の力を前に小国が屈し、国際社会もそれを容認する形で、この戦争は終わるのでしょうか。国際政治学者の藤原帰一氏は…
順天堂大学 藤原帰一 特任教授
「トランプ氏は政権発足した時から、ウクライナの防衛を続ける意思はなかった。しかしそれで戦争が終わるということには、必ずしもならない。
ヨーロッパ諸国からすれば、ウクライナを盾にして(ロシアから)自分を守っているわけで、ウクライナへの支援をやめるという選択自体がない」
藤原氏は、現在のヨーロッパの状況を考えれば、米露の停戦協議によって戦争が終わることはないといいます。
順天堂大学 藤原帰一 特任教授
「ウクライナの戦争は、今ヨーロッパの戦争になりつつある。ヨーロッパ諸国はウクライナへの武器の提供を続けるだろうし、それ以上に地上軍投入の可能性もあり、戦争は決して終わるという風にはみえない。
停戦交渉が始まったとして、今度は停戦が自分に有利になるように(双方が)戦争をむしろ拡大しようとする。停戦交渉が始まったけれども、戦争が続くという段階が次に来る」
2月24日、ロシアによるウクライナ侵攻から3年を迎えます。