デスクトップPC活況の要因は、ひとえに「Mac Mini M4」の好調に尽きる。機種別の販売台数シェアでは、発売月の11月、Mac Mini M4が36.0%。2位NEC「LAVIE A23」の10.7%に、トリプルスコアを超える圧倒的な差で1位。12月も30.0%で続き、この1月は16.9%とやや減速したもののトップを維持している。もちろんアップルのシェアも、11月時点で51.2%とぶっちぎりの1位を奪取。1月時点では25.5%とトーンダウンしてはいるものの、依然としてトップを走り続けている。
これまでのデスクトップPC市場は「モニター一体型」の製品が、販売台数の6割から7割を占めていた。一方、往年の主力だった「タワー型」は1割前後。その間を埋める製品がMac Miniのような「コンパクト」タイプだ。ほぼ3割前後の販売台数構成比で推移していた。しかし、Mac Miniの新製品が登場すると一気に構成比もジャンプアップ。Mac mini M4が登場した昨年11月には68.2%と7割に届く水準まで拡大し、モニター一体型の構成比を大きく逆転した。もちろん、モニタ―別売りのコンパクトは比較的安価。この1月現在で、モニタ―一体型の平均単価は18万7000円だったのに対し、コンパクトの平均単価は10万円。平均単価の急落と好調の一因はこの安さにあった。
しかし、そもそもMac Mini M4は、ARMアーキテクチャを採用するアップルMチップの最新版、M4チップを搭載するPCとして大いに注目を集めていた。上位のM4 Proを搭載するモデルもあわせ、高性能でありながら省電力性も備えるPCとしての評価が高い。小さな筐体でも重い作業に耐えるパワーを持ち、しかも低価格。発売を心待ちにしていたMacユーザーも多かったことだろう。そうした買い替え層が発売直後に集中した結果、デスクトップPC市場全体をも大きく押し上げるほどの現象を生んだわけだ。
前述したように、24年11月以前で、デスクトップPCの販売前年比が最後に前年を上回ったのは23年2月。実はこの月は、アップルが前モデル「Mac mini M2」を発売した月でもあった。つまり、デスクトップ市場は同社がMac miniを発売するかどうかにかかっている市場でもある。一方、モニター一体型でシェアを稼いでいる富士通やNECには、コンパクトタイプが全くといっていいほど存在しない。PCに占めるデスクトップの販売台数構成比は、1月現在でもわずか4.6%。主戦場はノートやタブレットだ。手薄になるのはある程度やむを得ないだろう。しかし、Mac Miniのような高性能でコンパクトなWindows PCを望む声も少なからずあるはず。デスクトップPCでシェア上位に肩を並べる富士通やNECは、Mac Miniの成功を前にすっかり牙を抜かれてしまったようにも見える。彼らの奮起も期待したい。(BCN・道越一郎)