トランプ米大統領=22日、メリーランド州(EPA時事) 【ワシントン時事】トランプ米大統領が、巨大IT企業を対象にしたデジタル課税への対抗措置を検討すると表明したことで、こうした税制を採用する欧州各国やカナダとの関係がさらに悪化する恐れがある。違法コンテンツ対策などを求める欧州連合(EU)の巨大IT規制も問題視。制裁関税発動も辞さない構えを示しており、米欧対立の火種となりそうだ。
デジタル課税への対応は、今週予定されている米仏首脳会談や、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議でも議題になるとみられる。
トランプ氏は、EUによる自動車や農産物への関税や高い付加価値税について批判を繰り返し、圧力を強めている。欧州側は「不公正なことは何もない」(EUのシェフチョビッチ欧州委員)と主張しつつも、米国との対話を重ね、貿易摩擦を回避したい考えだ。
米国が問題視するのは、デジタルサービス税(DST)と呼ばれ、多国籍の巨大IT企業がオンライン広告などを通じて自国内で得た売り上げに課税する仕組み。利益ではなく、売り上げに税を課すため、負担が大きい。対象はグーグルの親会社アルファベットやメタ、アマゾン・ドット・コムなど米企業がほとんどだ。
米業界団体によると、2019年ごろから導入が増え、フランス、イタリア、英国など約30カ国が採用または検討している。カナダでは昨年発効した。米IT業界では「各国政府が増税の政治的負担なしに歳入を得られるため、都合の良い標的になっている」(同団体)と不満が大きい。
トランプ氏は、第1次政権でもDSTに対する制裁関税に向けた調査を指示。バイデン前政権も引き継いだが、経済協力開発機構(OECD)が進める国際的なデジタル課税ルール整備の動きを受け、制裁関税の発動を見送っていた。
ただ、米国では国際課税ルールへの反対が根強い。トランプ氏は1月の就任日に、OECDの国際課税ルールは米国に適用しないとする大統領令に署名した。国際協調の動きは瓦解(がかい)した格好で、先行きは見通せない状況だ。