画像はイメージですご存じのように新幹線や特急列車のイスには、リクライニング機能がついている。深く倒せばより快適に過ごすことができるが、“声がけ問題”が議論になる通り、後方座席に配慮しなければトラブルに直結してしまうケースも多々ある。松田勇さん(仮名・30代)も無作法な人物ともめた経験をもつひとり。
◆新幹線でリクライニングを全開に倒す男女2人組
松田さんは出張で広島に向かうため、新横浜駅から東海道新幹線「のぞみ」に乗車した。自分の席に向かうと、目を疑いたくなるような光景が飛び込んできたという。
「50代後半と思われる金髪の男女2人が、リクライニングシートを目一杯倒していたんです。内心、『こいつらの後ろは絶対に嫌だな』と思ったのですが、祈りもむなしく、私がその2人の後ろに座るハメに……本当に嫌でしたね」
着席した松田さんは、「直してほしい」という思いを胸に秘めつつ、ある行動に出る。
「新横浜を出発して、熱海を通過したあたりで、2人は真っ昼間にもかかわらず、酒盛りを始めました。しかも大声で喋っていて、みんな迷惑していたと思います。直接リクライニングを直すよう言うことも考えたのですが……まずは露骨な咳払いをしてみました。当然、気がつくことはありません。次にイスについたテーブルを上げ下げして、大げさなため息をつきましたが、おしゃべりに夢中で、まったくの無駄骨でした」
◆車掌に注意してもらうも…
やむをえず、車掌に相談をすることを思い立ったという。
「我慢するという選択肢もありましたが、乗った新幹線は博多行で、最悪あと4時間は不快感を抱くと思うと、やっぱりなんとかしないといけないだろうと。また、『なぜ私が無法者のせいで嫌な思いをしなければいけないのか』と思い、車掌に相談することにしました。その数分後、車掌が『ご遠慮ください』と夫婦に声をかけて、初期の位置に戻したんです。一件落着かと思いきや、浜松を超えたあたりで、またリクライニングを最大限倒してきたんです。腹が立つことに私の顔を見て、ニヤッと笑いやがって……」
意を決して、直接苦言を呈したのだが……。
「小馬鹿にされたような対応が許せず、『リクライニング、全開に倒すのやめてもらえますか』と注意しました。すると男は『うるせえ、なにが悪いんじゃ、なんの権利があって』と大声で怒鳴ってきました」
◆「マナー違反はそっちだろ」と言い返したら…
逆上した男と一触即発の展開に。
「こちらも後に引くつもりはないので、『私も快適に過ごす権利がある。車掌に注意されて戻したのはどういうわけなのか。マナー違反はそっちだろ』と面と向かって言い返しました。すると男はよくわからない言葉を発しながら、掴みかかってきました。私も引くつもりは毛頭なく、手を振り払って臨戦態勢に。ここで私の後ろに座っていたダブルのスーツを着た男性が、『やめろ』と一喝。『全開にするのはマナー違反だろ。少しぐらい前に戻せないのか』と味方についてくれて、男は渋々引き下がり、座席を戻しました」
男は結局どうなったのか。
「降りるときにでも、もう一度文句を言わなければ気がすまないと私は思っていましたが、名古屋に到着すると、私の顔を見ずに降りていきました。最後っペのつもりか、リクライニングはそのままでした。ああいうマナーのないやつに当たってしまったのは、本当に不運でした。それにしてもリクライニングシートって、あそこまで深く倒れる必要があるのでしょうかね……」
今回の件に限らず、日々の生活では明確なルールが存在せず、各々の良心に基づく場面も少なくない。どんなシチュエーションでもスムーズに“大人な対応”ができる人間になりたいものだ。
<TEXT/佐藤俊治>
【佐藤俊治】
複数媒体で執筆中のサラリーマンライター。ファミレスでも美味しい鰻を出すライターを目指している。得意分野は社会、スポーツ、将棋など