久保建英は「いたずらを発明」と現地紙が称賛 レガネス戦スーパーゴールには伏線が

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2025年02月24日 18:30  webスポルティーバ

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 2月23日(現地時間)、ラ・リーガ第25節。レアル・ソシエダ(以下ラ・レアル)は本拠地にレガネスを迎え、3−0と完勝を収めている。これで8位にランクアップした。

 勝ち点3は厳命だった。なぜなら、1位から4位までがチャンピオンズリーグ(CL)、5位がヨーロッパリーグ(EL)、6位がカンファレンスリーグ出場権を獲得する。来季を考えれば、これ以上は順位を落とせない。今季はスペイン国王杯、ELでの戴冠が最大目標だが、それぞれ準決勝でレアル・マドリード、ラウンド16でマンチェスター・ユナイテッドを倒すことが条件になる。

 その勝利を託されたのが、久保建英だった。

 後半立ち上がり、久保は右サイドでボールを受けると、ファン・クルスとの1対1で、左足にボールをさらしながら、居合抜きのようなフェイントで軽々と置き去りにする。エリア内に入ると、アドリア・アルティミラに立ちふさがれるが、幻惑的なステップでシュートコースを作った。そしてGKからはほとんど見えないところからゴールの逆サイド上に蹴り込んだ。

 勝利を決定づける2点目は魔術的だった。

「久保はまたしても"いたずらを発明した"。エリア内で相手マークをはがし、どこかに身を隠して消えた(ところからシュートを決めた)」

 スペイン大手スポーツ紙『アス』は、記者の昂揚が伝わる表現だった。

「ラ・レアルはプランBで勝利」

 スペイン大手スポーツ紙『マルカ』は、ミケル・オヤルサバル、ブライス・メンデス、アンデル・バレネチェアなど久保以外の主力を休ませ、勝ち点3を得たことを評価した。

 久保は、かつて日本人が誰もできなかったことをやってのけている。毎試合、限界を突破。とんでもないレベルにある―――。

【レジェンドが語る久保の特長】

 昨シーズン、現地サン・セバスティアンで久保についてラ・レアルのレジェンドたちに話を聞いたことがあった。

「タケをひと言で称するなら、『Versatil(汎用性が高い、ポリバレント)』だろうね。とにかく、なんでもできる選手だ」

 ラ・レアルを代表するゴールゲッターであるイマノル・アギレチェは、そう語っていた。たび重なるケガで31歳での引退を余儀なくされたが、ラ・レアルをCLに導くゴールを決めるなど、「下部組織スビエタの傑作」と言われるストライカーだ。

「タケはテクニックのレベルが非常に高い。俊敏性もあって、稲妻を連想させる。ドリブルでのリズムチェンジが人並み外れているから、相手を置き去りにできるし、堅い守りも崩せるのさ。小柄だが、フィジカルの強さを90分間のなかでずっと出せる。相手ディフェンダーへのプレスを高い強度でリピートした後、攻撃の精度が落ちないのは、本当に驚きに値するよ」

 アギレチェはそう激賞していたが、ドリブラーにありがちな技への執着がない点を評価していた。

 レガネス戦も、久保は左サイドバックのアルティミラに死に物狂いのマークを受けたが、子ども扱いだった。とにかくボールを失わない。たとえ失っても即時奪回。そして何度もよろめかし、もてあそんでいる。過去や現在のJリーグにも「うまい」と言われる選手は大勢いるだろう。しかし、この強度でうまさを出せる選手はひとりもいない。比べるのもバカバカしいほどだ。

「自分はストライカーだったけど、『準備していれば、ラストパスやクロスが入ってくる』とタケを信じられるね。その信頼をチームメイトに与えられているのは大きい」

 アギレチェは言うが、その信頼関係があってこそ、ゴールにもつながるのだ。

 レガネス戦後も、久保はスーパーゴールが大きくメディアで取り上げられるだろう。しかし、そこに至るまでも、周囲とのコンビネーションを使い、インサイドに何度も切り込んでいる。その繰り返しによって、敵は警戒して動きが鈍り、味方は信じてポジションを取れていた。そのゴールは、たったひとりで一瞬にして生まれたように映るが、実際は伏線があったのだ。

 久保は、そんな物語を作れる選手と言える。

「タケは同じ左利きアタッカーでも、(アントワーヌ・)グリーズマン(2009年から14年までラ・レアルでプレーしたフランス代表。現在はアトレティコ・マドリード所属)とはあまり似ていない。グリーズマンは強度が高い選手で、アップダウンをしながらハードなプレーでゴールに向かうアタッカーだった。一方、タケは『chispa(火花、ひらめき)』の選手。一瞬が勝負、アクセルとブレーキのところで上回り、相手を翻弄できる。ドリブルに入ると手がつけられない」

 久保のドリブルは、火花が散るような錯覚を受ける。電光石火、一瞬で相手を斬り捨てる。剣豪のような太刀筋だ。

「その点、(あえて比較するなら)タケは(カルロス・)ベラ(2011年から17年までラ・レアルに在籍したメキシコ代表のFW)と少し似ている。ベラは左利きで、とにかくドリブルが好きだった。相手のファウルを誘ってイエローを出させたりしたし、FKを蹴ることもできた。閃光を放つというか、クイックネスも共通しているかな」

 もっとも、もはや久保はスケール感でベラをしのぐだろう。

 中2日の後、彼はスペイン国王杯準決勝でレアル・マドリードと決戦に挑む。レガネス戦は相手選手とのやりとりで激高し、イエローカードを食らったことで、ラ・リーガの次節バルセロナ戦は出場停止になった。しかし、これで照準がはっきりした。レアル・マドリード戦のあとはELのマンチェスター・ユナイテッド戦だ。この2試合で勝負を決めるゴールを決められたら、物語は歴史になる。

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